ルルーシュは発作を起こすことが多くなった。
しかし今のところそれらの発作は比較的軽いことが多く、喀血もするが血の量はごく少量だ。
医者から薬を変えようと提案があったのはもう秋も終わり冬が始まった頃だ。
副作用は辛い。
熱が出るだとか、吐き気があるだとか、髪が抜けるだとか。
そういう副作用でないだけいいかもしれない。
ただ、ひたすらに眠くなるだけ。
発作が起きるとその薬を投薬されるのだが、投薬されたが最後眠くてまともな会話すらままならなくなる。
軽めの発作を二日に一度、酷い時では毎日起こすルルーシュはその都度発作を抑えるためにその薬を点滴で体内に流し込まれ、泥のような眠りに落ちる。
眠っている時の表情は安らかなことが多く、それがスザクを安心させた。
スザクはといえばルルーシュの命令で日中は真面目に大学に通い、陸上部の練習にも顔を出している。
季節柄、練習は主に室内での筋力トレーニングだが、それでも病院に顔を出すのは日も暮れた頃だ。
ルルーシュは眠っていることが多く、実質上『会えない』ことが多いため、ルルーシュはスザクに見舞いにきたら起こせと頼んだ。
しかし実際眠っているルルーシュを前にして、その眠りを妨げる行為をするのは憚られる。
結局遠慮してしまいスザクがそれを怠ると、今度はルルーシュは怒る。
それをスザクが宥めるという生活が続いた、ある日。
「あれ、珍しい。」
病室に顔を出したスザクは目を剥いて、ベッドに小走りで近寄った。
ルルーシュは起きていて、ベッドの上で身を起こしていた。
珍しい、という言葉にむっとしたルルーシュは顔を背けた。
「今日は調子がいいんだ。」
「それは何よりです。」
しかしルルーシュの表情は固い。
やっぱり具合が悪いのかと問うたがそれには首を横に振った。
それでも何か考え込んでいる。
重苦しく、彼が口を開いた。
「新薬が、認可されるらしい。」
「それって君の・・・」
「そうだ。」
ルルーシュの患う病気に効く新薬。
スザクの表情がみるみるうちに輝いた。
これでやっと、2人で大学に行ける。
2人の時間が増える。
何より、もう発作と死に脅えなくてすむのだ。
心が弾んだが、当の本人はやっぱり何かを考え込んでいる。
「ルルー・・・」
「でも、この国で認可されるのはまだ先だ。国外での臨床体に先生は俺を推してくれたらしい。」
「国・・・外・・・」
最近では発作の回数も増えていたから、実際のところいつも死と隣り合わせ。
体力的にも限界を迎えている。
早ければ早いに越したことはない。
しかし国内でその治療は受けられないのだ。
それならば道は一つ。
「わかった、僕も一緒に・・・」
「駄目だ。」
「ル・・・」
「俺、一人で行く。」
スザクが立ち上がって、一歩下がった。
ぶつかった椅子が鈍い音を立てて倒れる。
「治るまでにどれくらいかかるか分からないんだ。だから、お前は大学に通っていてくれ。」
「嫌だ・・・よ!」
「それと、俺が治ってこっちに帰ってくるまではお前とも会わない。」
「無理、だよ・・・そんなのっ・・・!」
「願掛け、とは違うが。これは俺の賭けだ。」
一緒にいるのは心が温かくなって、とても幸せだった。
それ故に、甘えが生じてしまったら。
努力を怠らないための自らへの戒め。
「スザク、お願いだ。」
結局スザクがそれに首を縦に振ることは無かった。
その前に、ルルーシュはスザクに知らせる事無く単身国外治療の為に姿を消した。
橙と、日
別れと願いと約束と
ルルさん、勝手にそんな事するとまた狂気くんが降臨してしまうかもしれませんよ。
いや、そんなことにはならないとは思いますが。