緑と、光
〜epilogue〜
「怒られる、かな。」
ははっと、口をついて出るのは乾いた笑いだ。
ルルーシュが勝手に国外に出てしまってから、半年。
その間に出した手紙は一通だけ。
年度が替わったことと、何とか進級したことと。
次会った時は先輩と呼んでくれ、なんて冗談まで。
しかしそれに返事が返ってくることは無かった。
治療が忙しいのだと、そう割り切ることにして。
ただひたすらに耐えた。
陸上の大会に出場してまた記録も残した。
彼が帰ってきたときに彼に怒られないように、ちゃんと誇れるだけの結果は残した。
そして丁度半年たったある日、スザクはついに業を煮やしてルルーシュの後を追って国外に出てしまった。
「愛想尽かされたらどうしよう。」
考えても仕方ないことだというのは分かっている。
そもそも勝手に国を出たのはルルーシュだ。
よくもまあ耐えたものだと褒められるならまだしも、大人しく怒られるつもりはないし、相手が愛想を尽かしても手放す気は無い。
病気が治れば一緒にいられる。
それだけが希望で、それだけの為に今まで耐えて、頑張ってきたのだから。
到着した病院はとても大きなもので、最新鋭という雰囲気がした。
病院の中はやはり馴染みのある消毒液の香りで、それは世界共通なのかなと苦笑した。
受付の女性に、病室の番号を聞く。
やっと彼に会えるのだと、胸を躍らせたのだが。
返ってきた返答に、思わず耳を疑った。
「へ・・・退院、した?」
もう一度聞きなおしても彼女はそうだと言って。
スザクは頭を抱えた。
行き違いなんて、間抜けすぎる。
退院したということは彼は病気を治したということだ。
それは喜ぶべきなのだが、なんというか。
まさかのとんぼ返りである。
連絡すらくれなかった彼を、本気で呪った。
とんぼ返りで帰ってきたはいいものの、彼と連絡は取れず。
途方にくれたスザクはとりあえず大学に通った。
むしろ本当に愛想を尽かされたのではないだろうか、と嫌な予感が脳裏を過ぎる。
返事が返ってこないからと、手紙を一通しか送らなかったことを怒っているのだろうか。
それとも先輩と呼べ、なんて冗談が彼には通じなかったのだろうか。
悶々と思考に明け暮れながら、十部咲きでもう散り始めている大学の敷地内の桜並木を歩く。
「あれ・・・」
見覚えのある人物が目に留まって。
信じられなくて、数回目をこすった。
そんな馬鹿な。
そう思いながら駆け出した。
「ルルーシュ!!」
彼は、ゆっくりと振り返る。
相変わらず身体の線は細かったけれど、血色は悪くなくて。
彼は本当に病気を克服したのだとわかると涙が出そうになった。
駆けていった勢いで彼に抱きつこうと両腕を広げる。
しかし彼は微笑んで、何か手に握ったものを突き出した。
それに阻まれたおかげで抱きつくことがかなわない。
「ルルー・・・」
「これを見ろ。」
「これ・・・学生証・・・はぁ!!?」
ルルーシュ・ランペルージ
Grade 4.
「まさか、これって・・・」
「先輩と、呼んでもらおうか。」
冴え渡る頭脳を誇る彼は、いつの間にか飛び級でスザクの『先輩』となっていた。
一緒に卒業できないじゃないか!と声を荒げれば彼はじゃあ俺は院生になるからといけしゃあしゃあと答えて、思わず脱力してしまったけれど。
それでも。
彼が手紙をちゃんと読んでくれていたことと、無事に帰ってきてくれたということだけで、今は十分幸せだった。
現代パロはこれで完結となりま〜す。
ルルーシュが死ぬんじゃないかと心配してくださった方が結構たくさんいらっしゃいまして。
私は元々死にネタを書くつもりは無かったんですが(ギアス本編がアレで、死にネタにナイーブになってる方もいらっしゃるかもしれませんし・・・)、皆さんが心配のコメントを下さるたびにちゃんと読んでもらえてるんだなーと嬉しくなりました。
キリリクなどで希望があればその内後日談も書ければと思います。
因みに一応世界観もあやふやで終わらせていますので、飛び級制度とかには目を瞑っていただけると・・・!
きっと入院中に物凄い論文でも書き上げたんだ!ってことでお願いします(笑)
今までタイトルに色と、何か一文字の漢字で片付けられるものをつけてきたんですが。
最終回の色はスザクの瞳の色である緑にしようって決めてたんです。
でも・・・その・・・右側の漢字をアレにしたらまるで・・・星刻の中の人に・・・orz
何はともあれ最後までお付き合いくださった皆様、本当にありがとうございました!