「うっわ、スザク!その唇どうしたんだ!?」
ぷっくりと腫れ上がる唇。
塞がりかけている傷らしいそこはまだ赤い血豆のような痕が残っている。
持ってきた弁当は今日も絶品だが、少ししょっぱいようなおかずは傷口にダメージを与えてから租借されていく。
「噛んだのか?それとも乾燥して切れ・・・てもそこまでにはなんないよな?」
「ちょっと、ね。『飼い猫』に・・・噛まれちゃって。」
動物に好かれないのは相変わらずだなと笑われて、それに苦笑することで返したスザクは、出汁のきいた玉子焼を一つ頬張った。
「ただいまー」
「おかえり。」
『飼い猫』ことルルーシュという男性は、ピンクのフリルがついたエプロンを纏い、おたまを持ってキッチンからひょっこり顔を出した。
キッチンからは芳しい香りがして、鼻をすんすんと言わせながら匂いを吸い込む。
今日はどうやらシチューらしい。
バッグをソファーの上に投げてからカウンター式になっているキッチンを覗き込む。
ルルーシュは鍋を拡販しながら目を半眼にしてスザクを見た。
「早く手を洗ってこい。」
「はーい、お母さん。」
「殴るぞ。」
ぐるっと回り込んでキッチンに入り手を洗った。
「明日買い物に行くが、何か食べたいものはあるか?」
「・・・レバー。」
「あんなもの、どこが美味しいんだか。」
「普通に美味しいよ。それにそうでもしないと僕の身体持たないんですけど。」
「お前なら大丈夫さ。」
「え、何その根拠。」
棚から皿を出し、引き出しからはスプーンを。
皿はルルーシュの近くのカウンターに置いて、スプーンはダイニングテーブルに並べた。
ルルーシュの作る料理はとにかく素晴らしいもので、気を抜けば身体が肥えてしまう程。
やがて完成したシチューはやはり絶品で、幸せそうに頬張るスザクをルルーシュは満足げに見つめていた。
「ごちそうさま。」
「おそまつさま。さて・・・。」
次は俺の食事だ、と。
席を立ったルルーシュの顔が、スザクの顔に迫った。