けだるい身体をもぞりと動かす。
汗で張り付いた寝巻きが煩わしくて、胸元のボタンをいくつか外して寛げた。
長い長い、夢を見た。
目が覚めて、その夢の内容は忘れてしまったけれど、それでも何かが心を揺さぶる。
ドクドクと脈打つ心臓。
苦しい。
「お兄様?」
暗い室内に光が射す。
目を細めてそちらを見れば、心配そうに眉を寄せているのは妹だった。
ぱたぱたと走り寄ってきた彼女は額を重ね合わせて、それから目元を緩めた。
「よかった。熱は下がったみたいです。」
「ナナ、リ・・・」
「あら・・・お兄様、泣いていらっしゃるの?」
そう言われて、しばし呆然としたルルーシュは自分の手を頬に這わせる。
水のような感触。
それは止まることを知らない風に溢れては頬を伝っていく。
「悲しい夢でも見たのですか?」
「ゆ、め・・・」
悲しい夢。
幸せで、それが壊れた夢。
内容は詳しく思い出せないけれど、とても怖くて、寂しくて。
でも何故か嬉しかった、そんな夢。
涙が止まらない。
ボロボロと零れる涙を手で拭ってもキリがない。
「ははッ・・・駄目だ・・・」
「お兄様・・・」
傍らにおいてあったらしいタオルを手に取ったナナリーはそれをルルーシュの頬に当てて。
そのタオルが涙を吸い取ってくれる。
「ナナリーは、ここにいます。お母様もお父様も。何も怖がることはないんですよ?」
白い手が、ルルーシュの黒い髪を撫でる。
まるで子供のようだと自分自身に飽きれながらもそれに身を委ねて、嗚咽の混じる深呼吸をした。
「言わなきゃ、いけないな・・・」
そんな衝動に駆られて呟けば、ナナリーは不思議そうに首を傾げる。
「誰に、何を?」
「いや・・・何でもない。」
涙はまだ、とまらない。
実はナナリーは前世の記憶持ちという裏設定があります(笑)