震える白い手が硬く握り締められて眼前に迫った時、避けてはいけないと意識して反射的に動いた身体を戻した。
それによってその白い手は見事に己の頬に。
痛くはなかった。
ただ、悲痛に歪んだ彼の表情を見て、心が酷く痛んだ。
「なんでッ・・・!!!!」
一発。
「なんでッ・・・お前が・・・」
また一発。
力無い拳が降ってくる。
彼は己の身体の上に馬乗りになって、感情に任せて拳を振るう。
それを甘んじて受け入れ、それでもここに居続けるのはそれが一番いいと思うからだ。
彼を一人にしてはいけない。
「なん、で・・・」
「それがナナリーの願いだったから」
そう告げれば、彼はまた感情的になった。
けれど今度は顔では無くて、胸を力なく叩いてくる。
「ななり、が、そんなこと・・・ブリタニアにもどる、なんて・・・そんなこと望むはずが・・・」
「望んだんだ。だからあの子を送り出した。」
「嘘をつくな!」
嘘つきは君じゃないか。
そう言ってやりたかった。
「ナナリーが決めた事だ。自分の足で立つんだって言ってたじゃないか。」
「だからって・・・!今あの子があの国に戻っても、利用されるか、弱者はいらないと捨て置かれるだけだ・・・あそこはそういう国なんだ!!!お前だって知らないわけじゃないだろう!」
「それでも彼女が望んだ事だ。」
「望めばなんでも聞くのか・・・!」
もういいと言わんばかりにルルーシュが立ちあがる。
駆け出そうとするのを、スザクは彼の手を掴むことで制した。
「放せスザク!僕が・・・!」
「それはできない。」
強く手を引けば、彼が倒れこんでくる。
すかさず首に手刀をいれれば、完全に力の抜けた彼の身体が腕の中に収まった。
温かい。
心臓は動いている。
その漏れる息ですら愛しくて、力任せに抱き込んだ。
「ごめん・・・ルルーシュ。やっぱりナナリーも大切だから、願いを叶えてあげたかった・・・。」
あの日、大切な君に願われて、それを叶える為に君を殺した時のように。