先生、ここに天才児がいまーす。







「だーかーらー、がっしゅうこくけつぎ○○ごうのごうはそのじじゃない!とらがしらのほうだといっているだろう!」


「・・・何で「とらがしら」なんて部首の名前知ってるのさ。」


「じょうしきだろう!」



謎の赤ん坊がゼロの元に現れてから既に2年あまり。


一般的な乳児よりも早いのではないかと思われるスピードで成長した『彼』は、ゼロ・・・スザクの膝の上で書類にダメ出しを加えていた。


ふくふくとしたそのマシュマロみたいな頬を不満そうにぷっくりと膨らませて、それは書類に次々と赤ペンで修正を加えていく。



「おまえ、よくこんなのでぜろなんかやってたな!」


「まぁ・・・シュナイゼルいたし。」


「あまえるな、ばかが!!」



謎の幼児は成長するに連れて言葉を発することができるようになったらしく。


スザクは勝手かつ適当に(ルルーシュに似ているというのを何とか気にしないようにして)「太郎」とでも名付けていたのだが、大方喋れるようになった瞬間「おれはるるーしゅだ!」と舌足らずながらも訴えてきたのだから、その際にはスザクは衝撃のあまり寝込んでしまった程だ。


どうやらゼロレクイエムで命を落としたルルーシュは即行で生まれ変わっていたらしい。



『産み落としてくれた両親からは生まれる筈のない黒髪と紫の目を持った自分は、かの悪逆皇帝と色合いが酷似していたこともあって呆気なく捨てられた。生まれたばかりで身体の自由は利かなくても生きるための知恵だけは持っていたから色々な方法を駆使してゼロの元に辿り着いた。』



ゆっくりと語る彼から告げられた事実を要約するとそんな感じだ。




「ねぇルルーシュ」


「なんだ?」


「君はこのまま僕と一緒に年を取っていくんだよね。」


「ふまんか、しんでもしにきれなかったようなこのじょうきょうが。」


「ち、違うよ!君が還ってきてくれたことは嬉しい!ただ・・・」


「ただ?」



気まずそうに、スザクは顔を顰めた。


ちらりとルルーシュを見る。



「その、さ・・・」


「ん?」


「君が、ある程度の年になった時・・・僕はその・・・まだ、バリバリかなって。」


「ばりばり?」


「ほら、精力が。」



バツが悪そうに笑ったスザクの顔・・・正しくはゼロの仮面を面喰った顔で見つめたルルーシュはそのまま一時停止。


そして数十秒後再起動して、顔を真っ赤に染め上げた。


丁度その時、ノックのあとゼロの私室に部下たちが数名やってくる。


しかしそれに気づかず、ルルーシュはスザクの膝から飛び降りてよたよたと走りながら、まるで捨てゼリフを吐いていくように叫んだ




「このまんねんはつじょうきが!!!!」




その様子を目撃してしまった部下たちは「えー・・・」とか言いながら。



「その・・・ゼロ、いくらあの子の成長が早いからといって、『万年発情期』なんて言葉を教えるのはちょっと早すぎなんじゃ・・・」


「誤解だ。」



心の中で何が誤解だ、と自嘲しながら、スザクは盛大な溜息を吐いた。