「申し訳ありません、扇首相。」
「いえ、何というか・・・はい。」
微笑む、神聖ブリタニア帝国皇帝補佐、ナナリー・ヴィ・ブリタニア。
苦笑いの合衆国日本首相、扇要。
数多のフラッシュのなか、2人はお互いに手を差し伸べる。
和平の始まり。
それを表す握手が多くの報道陣に見守られながら交わされた。
「本当はお兄様・・・いえ、ブリタニア皇帝が来なくてはいけない場なんですけれど。」
「いや・・・まぁ、仕方がないんじゃないでしょうか。」
「そうですね。拉致されたのであれば、お兄様に非は無いのですから。」
え、拉致?
報道陣が目を見張る。
拉致とは事件ではないか。
何故お兄様第一主義の彼女があんなにも落ち着いているのか。
報道陣が騒ぎ立て、ナナリーは微笑む。
「皆さん、ご心配には及びません。皇帝陛下を拉致なさったのは彼の騎士、枢木スザクですから。」
ナナリーの手に力が篭る。
ギリギリギリッ・・・
あれ、いたっ・・・いたたたたたたあ!!!!!
握手したままの手をギリギリと締め上げられ、扇は内心で悲鳴を上げた。
目の前の少女のどこにそんな握力があるのだろう。
暫く手は使い物にならなさそうだ。
「あの駄犬っ・・・私の許可もなくお兄様を連れまわして!」
地を這うようなナナリーの声に扇も報道陣もドン引きだ。
やがて我に返ったナナリーは『あらやだ、私ったら』と言ってぱっと扇の手を解放した。
扇の手には絞められた赤い痕がくっきりと残っている。
扇的には、今回のこの和平の席にルルーシュがいないことは幸運だった。
彼を一度裏切った立場故に、ナイトオブゼロの視線が痛く、何度か花畑で手を振っている親友、紅月直人に遭遇したこともある。
いくら平和の為とはいえ恐ろしいものは恐ろしい。
しかし恐ろしいものが一つ増えてしまった。
ブラコンは時に狂気となる。
世界の平和は訪れても、扇に平和が訪れることはないかもしれない。
「扇首相」
「はっ、はいいぃぃぃぃい!!!」
「今日は、2度目のハネムーンに旅立ったお兄様がハネムーン先でテレビ出演なさるそうですから。」
是非、見てくださいね?
そう微笑まれたからには、イエス・ユアハイネスと応えるしかない。
扇涙目。