関係における長文お題





スザ→←ルル♀。
大学生な22歳と、高校1年な15歳の年の差で現代パロ。
甘め。
どちらかといえばルルがスザクのことを好き過ぎる感じがします。
・・・というより、珍しくルルが鈍ではありません。
ルルは鈍感のほうがいい!積極的なルルなんて考えられない!って方は読まないほうがいいです。

上から下まで全部繋がっているような話ですので、最初から読むことをおススメします。








陽だまりの世界にさよなら、色めきたつ僕らの関係
つまり君は、見飽きたこの顔をこの先もずっと見てたいって?
おせっかいな神様に乾杯
偶然ひろった呪いは、一生ついてまわるらしい
晴れた日に君を強奪。咎を嘲え
こころが壊れる前に ぬるい闇から逃げ出さないか
審判の門、その鍵の在り処を知りながら
いつだって君の言動に一喜一憂
あなたがすべて(あなたのすべてじゃなくっていい)
そんなところからで、僕のことがちゃんと見えるのかい
どうやら運命のみが赦してくれるらしい
ほぼ出来上がったものをどう保つか、それが問題だ
友達とは違う、家族なんて冗談じゃない。ただ、とても大切で信頼できる……
仲介料の請求はどこにすればいいんだい?
僕と君の関係ほど曖昧なくせに確かなものなんてないさ

















































陽だまりの世界にさよなら、色めきたつ僕らの関係




好きだよ。

その言葉を紡いだ唇に、ルルーシュは魅せられた。

確かその言葉は他愛の無い会話の中で出たもの。

好みどうこうの話だったはずだ。

でもいつしかその言葉が自分に向けられたらいいのに、なんて、そんなことを考えるようになって初めて、自分が彼に恋をしているのだと気がついた。








・・・好き。

その言葉を紡いだ唇に、スザクは魅せられた。

知り合いに貰ったイチゴを彼女に見せて、聞いた。

そうしたら目を輝かせて、小さく好きと呟いた。

彼女に抱く感情が親愛や友愛の類ではないことは気付いていたけれど、想いを告げるに至らなかったのはその年の差ゆえだ。

だって彼女のオムツをかえたことだってあるんだから。








































つまり君は、見飽きたこの顔をこの先もずっと見てたいって?




「おかえり」

「た、ただいま」


呆然と背負ったリュックを下ろし、スザクはひくりと口の端を吊り上げた。

目の前にはピンクのエプロンをつけて、おたまを持っている彼女の姿。

エプロンの下には濃紺のセーラー服を着込んでいる。

何か言いたげなスザクの視線を感じ取ったのか、ルルーシュは何食わぬ顔で言った。


「ベランダのドア、開いていたぞ。」

「・・・そっか。はい、気をつけます。」


どこから入ったのか、なんて最早彼女には愚問らしい。


「今日はサバの味噌煮?」

「よくわかるな。」

「この匂い好きだからね。」


腕をまくって、キッチンで手を洗う。

皿は高い位置にある棚に収納されていてルルーシュは椅子を持ってこないと取ることができないから、スザクは悠々とそれを手に取ってルルーシュに渡した。


「マリアンヌさんにはちゃんと言ってきた?」


渡した皿は二枚。

鍋の中のサバのひらきが二枚だったから。

茶碗も二つ出して、箸も二膳だしてキッチンを出た。


「今日は皆で食事に行くと言っていたな。父親が久しぶりに帰ってきたから。」

「・・・え。じゃあ君も行かなきゃ駄目じゃないか!」

「別にいい。母さんも元々私を頭数に入れなかったようだし。」


スザクはダイニングテーブルに箸を並べながら苦笑した。

きっと彼女の父親には恨まれているに違いない、と。

実の父親よりも、恋人でもなんでもないただの幼馴染の男を優先したと知られれば誰だって怒るはずだ。

母親であるマリアンヌは認めているとはいえ、スザクはこの先身に降りかかるかもしれない災難を想像して乾いた笑いを漏らした。


「スザク、これ運んで。」

「ルルーシュ、いつもいつもこんなにしてくれなくていいんだよ?」

「迷惑か?」

「そんなんじゃないけど、君の負担が・・・」

「迷惑じゃないなら、いい。ずっとやる。」

「ずっと?」

「ずっと。」








































おせっかいな神様に乾杯




「あらスザク君。おはよう。」

「おはようございます、マリアンヌさん。」


隣の家に住む女性は、気品ある笑みを浮かべて手を振ってきた。

それに会釈しながらドアの鍵を閉める。

ルルーシュの母親である彼女はまるで何もかも見透かしたような瞳で。

思わずたじろいでしまったスザクにあらあらと微笑んだ。


「今日私はナナリーとお出かけするからルルーシュをお願いね。」

「・・・は?」

「今日はシチューにするって言っていたわよ。まったく・・・貴方たちもいい加減キスくらいしなさいな。」

「マリアンヌさん!」

「照れちゃって・・・若いっていいわねぇ。」


かくいうマリアンヌ自身もとても二人の娘がいるなど想像もできないような若さ・・・というか美貌を持っているのだが。

何を言っても無駄だと分かっているから、それ以上何も言わない。


「自分の気持ちに嘘をついちゃ駄目よ?」

「・・・肝に銘じさせていただきます。」


いってきます、と声をかけると、マリアンヌはその手に似つかわしくないような箒を掲げて手を振ってくれた。








































偶然ひろった呪いは、一生ついてまわるらしい




「なぁなぁスザク、今日もアノ人待ってるぜ?」

「あー・・・」


ふわふわとしたダークブラウンの髪。

彼女は結構前にスザクが『助けた』年上の女性だ。

助けた・・・といっても、彼女に付きまとっていたらしい男に少しだけ殺気を送っただけだが。

しかしその一件でどうやら気に入られたらしく、甲斐甲斐しく彼女は毎日大学まで押しかけてくる。


「困るんだよなぁ・・・弁当作ってこられても、僕には自分のがあるし。」

「えー?俺なら母親の弁当棄ててでも彼女の弁当選ぶけどな。」

「だって僕のは母さんの弁当じゃないし。」


毎日、いいって言っているのに。

毎朝彼女は律儀にスザクを追いかけ、弁当を押し付けるように手渡していく。


「そう、なのか?でもとりあえず年上っていいだろ?」

「そうかなぁ・・・」


ルルーシュは年下だしなぁ。


「髪の感じとか大人っぽくて・・・」

「うーん・・・」


僕は黒髪が好きかも。


「何より乳がでかい!」

「別に大きさは関係ないんだけど・・・」


ルルーシュの、可愛いと思うし。


「前から思ってたんだけどさ。」

「え、なに?」

「お前結構モテるくせにそういうの興味ないのって、既に相手がいるからか?」


どうだろうね。

スザクはそう曖昧な返事をしながら晴れ渡った空を見つめ、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる彼女にたまには何かしないとなぁと薄く笑った。








































晴れた日に君を強奪。咎を嘲え




本日も晴天なり。

気分も上々でシザーバッグに財布と携帯を詰め込み、それを腰のベルトに引っ掛けた。

玄関を出た後大きく伸びをする。

数歩歩いて隣の家へ。

インターフォンを押すと開いたドアの向こうから顔を覗かせたのはいつもの女性で、勝手に入ってきていいのに・・・という言葉に苦笑した。

『お目当て』の居場所を聞くと、まだ寝ているのだという。

起こしてきてという頼みを一度は断ったのだが、埒が明かないから結局自分で行くことにした。

低血圧の彼女は多少驚いたほうがすぐ起きてくれるかもしれない。

階段を上って、彼女の部屋のドアをノックする。

返事は無い。

要するに寝ているということだ。

これで着替え中に入ってしまう・・・なんて事故は防げる。

静かに部屋に入ると、ベッドの上で微かに上下している膨らみに近寄った。

そっと手を添える。


「ルルーシュ、起きて。」

「ん・・・ぅ?」


ルルーシュは一度目を開けて、少しぼんやりとした後もう一度目を閉じてしまった。

悪戯心と、冗談で。


「早く起きないと食べちゃうよ。」


起きている彼女には口が裂けても言えない。

しかしルルーシュは。

もう一度目を開けて、寝ぼけ眼のまま、ふわっと笑って。


「い、い・・・よ・・・」


なんて、言うものだから。


「ええええ!!?」

「ん・・・すざ、く・・・?何・・・してる、んだ?」


逆に驚かされてしまって、顔も赤くなってしまって。

冷静になれるまで時間がかかってしまった。








































こころが壊れる前に ぬるい闇から逃げ出さないか




きらきらと瞳が光る。

きっと本人に自覚は無い。


「どうぞ?」

「本当に・・・いいのか?」


戸惑いがちに伺ってくるルルーシュに微笑んでやると、彼女は脇に置いてあったスプーンを手に取った。

ゆっくり、というよりは恐る恐る。

黄色いそれに銀色のスプーンを突き刺す。

ぷるっと震えたそれにルルーシュの瞳が揺れた。


「ねぇ、何をそんなに躊躇してるの?」

「だって・・・ここのプリンずっと食べたくてっ・・・だから・・・!」

「そっか。じゃあさっさと口に入れちゃいなさい。」


あっ・・・とルルーシュが声を漏らした。

それもその筈。

僕の手にスプーンは奪われ、救い上げた黄色いプリンはふるふると揺れながらルルーシュの口に吸い込まれたんだから。

顔を赤らめて突っ込まれたプリンを租借して、その一口をゆっくり味わった後。


「スザク!」

「あーはいはい、ごめんね。あまりにもじれったくて。」


声を荒げるルルーシュだったが、それでも口の中に広がるプリンの甘みに気を取られて思わず顔が綻んでしまうようだ。

可愛いなぁ。

ルルーシュにスプーンを返すと、彼女はもう一度プリンにスプーンを刺した。

でも今度そのスプーンが向かった先は。


「え?」

「一口くらいいいだろう。」


面食らってしまった。

ルルーシュが使ったスプーンを僕も使う?

きっと変に意識してるのは僕だけなんだろうけど。

でもこういう時ルルーシュはとっても頑固だから、きっと食べないことには引き下がらない。

意を決して、口を近づけた。


「スザク君?」


嫌な声がした。

スプーンと距離を置く。

声がした方向には、最近付きまとってくる女。


「やっぱりスザク君だ。偶然ね・・・ねぇ、これから何処か行かない?」


腕を絡めてくる。

谷間を強調して、寄せている胸が腕に押し付けられる。

鬱陶しくて振り払おうとしたとき、視界に呆然としているルルーシュが映った。


「ルルーッ・・・」

「あら、この子どなた?彼女・・・ではないわよね。だとしたら妹さん?」

「離してください・・・今僕は・・・」

「スザク」


小さく、ルルーシュが名前を呼んだ。

声が震えている。

ああ、そんな顔させたいわけじゃないのに。


「先に・・・帰ってるから。ごちそうさま。」


走り去るルルーシュが見えなくなった後、僕はテーブルの上で食べきられるのを今か今かと待ちわびていたであろうプリンから目が離せなくなった。








































審判の門、その鍵の在り処を知りながら




「え?」

「ごめんなさい、ルルーシュったら体調を崩しちゃって。今薬でぐっすりと眠っているから、今度にしてもらえるかしら。」


マリアンヌに微笑まれ、スザクは息を呑んだ。

父親が不在のことが多いこの家において、マリアンヌの存在は絶対だ。

いくら普段『勝手に入ってきてもいい』と許可を得ていたとはいえ、その彼女に今日は駄目だといわれてしまえばスザクにはどうすることも出来ない。

とぼとぼと帰っていったスザクの背中を見て、マリアンヌはため息をついた。

家に入り、心配そうなナナリーとロロに大丈夫と手を振って、マリアンヌは階段を上る。

ノックをしても返事は無い。

ドアを開けると、ルルーシュはベッドの上で座っていた。


「帰ってもらったわよ?」


ルルーシュはマリアンヌに背を向けたまま、ピクリとも動かない。

ため息をついたマリアンヌはベッドに腰掛け、ルルーシュの頬に手を添えた。

伝っている涙を指の腹で拭いながら微笑む。


「辛いのね。」


嗚咽をするわけでもなく、ただルルーシュは静かに涙を流している。


「全てはあなた次第よ。扉を開けてしまうのも、鍵をかけてしまうのも。」








































いつだって君の言動に一喜一憂





もう、顔も見たくない。



ルルーシュにそう言われる夢を見て、目が覚めた。

鬱々としながら家を出ると、そこにはいつもの包みを持って立っているルルーシュがいて。

押し付けるように渡されたまだ温かい弁当を大事に抱え込んだ。


「いってらっしゃい。」


何気ないその言葉だけでも、今は救われた気分だった。








































あなたがすべて(あなたのすべてじゃなくっていい)




「お姉さまをフるだなんて・・・身の程知らずもいいところです!」

「そうだよ!こんな才色兼備な姉さんを捕まえておいてっ・・・フるなんて!」

「・・・お願いだからあまりフるフる言わないでくれ・・・」


項垂れたルルーシュに、ナナリーとロロは焦ったように『ごめんなさい!』と声を上げた。

その声が見事に重なって、気落ちしていたルルーシュも思わず微笑む。

なんとなく、双子である二人がうらやましくなった。


「ナナリー、ロロ、早く着替えていらっしゃい。」


マリアンヌの声でナナリーとロロは駆けていく。

ソファーに腰掛けていたルルーシュの傍にマリアンヌが近寄ってきて、持っていたマグカップを手渡してくる。

中にはホットミルク。

いつも朝はコーヒーなのだけれど、今日は学校を休むから眠れなくなってしまっては困るのだ。

マリアンヌの手がルルーシュの額に添えられる。


「熱は大分下がったみたいね。」

「・・・母さん」

「大丈夫、ちゃんと笑えていたわ。」


撫でてくれる手に身を任せて、身体を傾けた。

母の体温が抱きしめてくれる。


「世の中、男はスザク君だけじゃないわよ?」


一粒、滴が頬を伝う。


「・・・いや、スザクだけ・・・だよ。」


頭が痛む。

涙は枯れることを知らない。


「スザクの中で私が一番じゃなくても・・・私は・・・」









































そんなところからで、僕のことがちゃんと見えるのかい




「おかえり」


夜も遅く。

アルバイトを終えて家路に着いたスザクは、上方から降ってきた声に顔を上げた。

窓から見下ろしているルルーシュは薄い寝巻き姿で、スザクはぎょっとした。


「ルルーシュ!今夜は冷えるからちゃんと上に何か羽織らないと・・・具合はもういいのかい?」

「ああ」


ルルーシュの部屋に灯りはついていない。

光源はスザクの近くに建っている街灯のみだ。

ルルーシュから見たスザクは街灯に照らされているだろうが、スザクから見たルルーシュは闇に紛れている。

それでも。


「ずっと泣いていたんだね。」

「・・・ッ」


視力はよく動物並だといわれるし、夜目も利く。

ルルーシュは泣きはらした顔は悟られないと思っていたようだが、スザクにとっては無意味だった。


「ごめんね、ルルーシュ」

「な、にが・・・別に私は何も。」

「彼女は本当に何でもないんだ。ちょっと前に絡まれてたのを助けてあげただけで・・・それで。」


何を必死に弁明しているんだろう。

彼女を泣かせたからか。

そう自問自答していたスザクの耳に、もっとも聞きたくない言葉が届いた。


「それよりもあの人、綺麗な人だったな。スザクにお似合いだと思うよ。」

「本当に?」


ルルーシュの言葉を遮って、スザクが声を出す。

硬い声音にルルーシュは身体を震わせた。


「ねぇルルーシュ、本当にそう見えたの?」

「あっ・・・ああ、スタイルもよくて、私なんかとは全然ッ・・・」


ルルーシュが声にならない悲鳴を上げる。

今まで一度も見たことがない、冷たい目。

それを覆い隠すようにすっと瞼を下ろして、呻くように言う。


「・・・そう。ルルーシュはそう思っているんだね。」


そこまで言ったスザクはすっと目を背けた。

小さく『おやすみ』とだけ言って去るスザクを、ルルーシュは泣きそうになりながら見つめた。








































どうやら運命のみが赦してくれるらしい




「何かあった?」


翌朝、スザクを迎えたのはマリアンヌで。

微笑みながら箒で玄関を掃いているのに、スザクはぎこちない笑みで返した。


「すいません。」

「あら、やっぱりそうなのね。」


スザクが謝ったことで、また溝が深まったであろうことを知ったマリアンヌだったが、さして怒るわけでもなくニコニコと微笑んでいた。


「ルルーシュったらね、珍しく起きなかったの。いつも眠い目を擦りながら、それでもお弁当作りだけは休まなかったのに。だから今日は私のお弁当で我慢して頂戴。」

「いえ、そんなっ・・・いつもいつも申し訳ないと思ってて・・・わざわざマリアンヌさんまで・・・!」

「あら、私のお弁当では役不足?大丈夫よ、一応ルルーシュに料理を教えたのは私ですから。」


有無を言わさず押し付けられた弁当を諦めたように抱え、スザクは上方を仰いだ。

ルルーシュの部屋のカーテンは閉められている。

傷つけた自覚はある。

それでも、感情を抑え切れなかった。


「スザク君」


マリアンヌはいつもと変わらない綺麗な笑みを浮かべた。

少し傾げた首の動きに合わせてゆるやかなウェーブのかかった黒髪が揺れる。


「私はね、ルルーシュの幸せを誰よりも願っているわ。」

「は、い・・・」

「自分に正直になりなさいな。これが運命ならなるようになるし、運命じゃないならまたそれも然り・・・ってことよ。」


従えと。

身を任せろと、そういうことなのか。









































ほぼ出来上がったものをどう保つか、それが問題だ




纏っているカジュアルなドレスは、自らの瞳よりも幾分濃い紫色だ。

ぱっくりと開いた胸元に目を落とす。

ここまで開く必要が無いくらいの胸の大きさにため息が漏れて、ストールで隠した。

ナナリーは淡いピンクのシフォンワンピース。

ロロはマリアンヌにネクタイを締めてもらっている。


「シャルルはもう待っているそうだから、私たちも行きましょうか。」


今夜は父親との食事会。

多忙な父親は自宅に帰ってはこないが、時たまレストランで食事をするために家族を呼び寄せる。

一行が家を出ると、既にそこにはタクシーが一台控えていた。

乗り込もうとしたルルーシュの手を、マリアンヌは何故か握る。


「母さん?」

「あなたはコッチ。」


手を引かれる。

瞬時に嫌な予感が脳裏を過ぎったルルーシュはその手を振りほどこうとするのだがそれも敵わない。

向かったのは隣の家。

ピーンポーンとチャイムが鳴る。


「母さっ・・・私は・・・!」


ガチャっとドアが開く。

顔を覗かせたのは言わずもがなスザクで。


「はー・・・い、って・・・マリアンヌさんに・・・」


ルルーシュ、と。

ぽつりと名前が呟かれて、ルルーシュは目をそらした。


「スザク君、私たちこれから食事に行くから、ルルーシュを預かってもらえる?」

「えっ・・・でも、ルルーシュも行くんじゃ・・・」

「いいから」


少し、口調が強められた。

マリアンヌの目は真剣で、ふざけている様子はない。

後ろから見つめてくるナナリーやロロも心配そうに眉を寄せていた。

ただルルーシュだけが、唇をかみ締めて俯いている。


「それじゃあお願いね。」








































友達とは違う、家族なんて冗談じゃない。ただ、とても大切で信頼できる……




「ごめん、今コーヒーしかないんだ。」


コトッとテーブルの上にマグカップが置かれる。

ミルクも何も入っていない黒色のそれをルルーシュはじっと見つめた。

それから、使わないと分かっていても申し訳程度にスザクが置いたミルクと砂糖を見つめる。

手を伸ばした。

スザクが息を呑むのが分かる。

それでも構わずにルルーシュは砂糖を3杯入れ、さらにコーヒーミルクを3ついれた。

それを一気にあおって。

目を見開いたルルーシュがマグカップから口を離した瞬間ぐったりとソファーに身を預ける。


「どうしたの?いつもブラックで飲んでたのに。」


ルルーシュは何も答えなかった。

なるべく目が合わないようにしようとしているのか、ずっと顔を背けている。


「ごめんね。」


そんな一言で、ルルーシュは簡単に顔を上げた。

スザクは困ったように微笑んでいる。


「僕にもうちょっと自制心があれば君を怖がらせなくて済んだんだけれど。」

「そんな・・・こと、は・・・」

「君は世界知らなさ過ぎる。僕は最低の部類に入る男だ。もっと他に・・・」

「いやだ」


短く、ルルーシュは呟く。

瞳からぽろりと涙がこぼれていた。


「世界なんて、知らなくていい。私はスザクがッ・・・」

「君の近くに偶然僕はいただけだ。だからそう錯覚しただけだよ。」

「違うッ!」


ぎゅっとルルーシュが握り締めたワンピースには無数の皺が寄った。

その手の甲にぽたぽたと涙のしずくが落ちる。


「スザクは・・・残酷、だ・・・」


私の想いを知っているくせに。

呻いたルルーシュを、スザクは黙って見つめた。








































仲介料の請求はどこにすればいいんだい?




「スザクなんてッ・・・嫌いだ!」


ルルーシュは唇を噛み締める。

そのままでは傷がついてしまうから止めさせたいのに、スザクは手を差し伸べることが出来なかった。

手が勝手に動いてしまわないようにぎゅっと握り締める。


「なんで・・・思わせぶりなことをするんだ。私を期待させるんだ!その気がないならッ・・・キスなんてするな!」

「・・・っ!?」


スザクは動揺のあまりマグカップを取り落としてしまった。

ガンッという音を立ててテーブルに倒れたマグカップの周りに黒い水溜りのようなものが広がっていく。

昔、眠るルルーシュにこっそりキスをしたことがあった。

愛しくて。

抑え切れなくなって、こっそりと。


「僕は、ただ・・・ルルーシュに幸せになって欲しいんだ。僕にとって君はかけがえのない存在だから、だから・・・」

「じゃあ私が幸せになれるんだったら何でもするのか。」

「君が幸せになれるんなら、僕は僕に出来ることを精一杯・・・」

「じゃあっ・・・私を幸せにしろ!スザクと一緒じゃなきゃ幸せになんてなれない!」


思わず絶句。

ぽかんと口を開け放ったまま静止したスザクはやがて困った風に頭を掻いた。

何かがおかしい。

自分の認識と食い違っていると、


「君、さ・・・」

「・・・なんだ。」

「そんなに積極的だった?」

「・・・っ・・・いつまで経ってもスザクが手を出してくれないって友達に相談したら、自分から起こさないと駄目だって言われて。」

「あー・・・なんていうか、凄いね・・・今時の女子高生って。」


本当の意味で手を出されなくてよかった、と安堵しながら。

盛大に溜息を吐いた後、ルルーシュを抱きしめた。


「わかったよ、僕の負け。」


抱きしめられたその温度と声に、ルルーシュの表情が綻ぶのはそのすぐ後。








































僕と君の関係ほど曖昧なくせに確かなものなんてないさ




「あと半年だな。」

「何が?」

「私が16歳の誕生日を迎えて、お前と結婚するまで。」

「・・・ん?」


今は6月の初め。

ルルーシュの誕生日は12月で、親の承諾さえ得られれば結婚できる年齢になる。

誕生日は実にめでたいことだが。


「・・・結婚は君が高校を卒業してからにしようね。」

「何でだ!?」

「何でも何もないよ。ちゃんと高校は卒業しなきゃ。」

「結婚しても卒業はできるだろう。」

「まぁ・・・それはそうなんだけど。でも駄目。君が卒業してから。」


残念なことに、スザクは自覚を持っていた。

己が『野獣』であることの自覚を。

もし我慢できなくなって彼女に手を出してしまって、子供でも出来た日には。


「・・・うん、やっぱり駄目。」


ルルーシュの両親に殴られ嬲られることはこの際甘受するとしても、卒業できるならしておいたほうがいいに決まっている。

それが将来彼女のためにもなるし、ことを急ぐ必要も無い。

どこか意気消沈しているルルーシュにスザクは苦笑した。


「すぐだよ。」

「・・・・・・」

「いいじゃないか、いきなり夫婦にならなくったって。恋人って選択肢があるだろ?」

「へっ?」


今度は面食らった顔。

それからかぁーっと顔を真っ赤に染めて、ルルーシュは口をパクパクと動かした。

まるで酸欠の金魚のようだ。

事実、動揺のあまり酸欠状態なのかもしれない。


「ルルーシュ?」

「・・・っ、いや・・・そっか、そうだよな・・・」

「ん?」

「順序・・・一つすっ飛ばしていた・・・」

「・・・ぷ、ははは、君らしくないミスだね。」




(僕は君のことが大好きで、だから君も僕のことが大好きなんだと思っていました)

(例えお前が私のことが嫌いでも、私はお前のことが大好きです。)





















































なんか微妙すぎました。
積極的なルル子が書きたくて始めたんですが、あれですね。
やっぱルル子は鈍なほうがいいや。
もうスザクが報われなくてヤキモキするくらい鈍なほうがいいです。
今後の展開としては奥様は女子高生的なアレですよね〜・・・そして高校卒業すると同時に行為に及んで一回でデキちゃって「ああああああぶなかった〜Σ@@;」って焦るスザクさん。
すいません自重します^ρ^