君を想う5つのお題-一方通行編-





スザ→ルルの一方通行。
ルルからのベクトルは皆無です。








幸せな瞬間
なにひとつ疑わない君
肩書きは友人
告げるつもりはないけれど
こころ、掴んで離さない

















































幸せな瞬間




目線が自然と彼を追う。

気がつけばいつも視界には彼がいて、いないと不安が募ってやっぱり彼を探す。

彼はクールだとか言われるけど、それでもやっぱりクラスの人気者。

頭もいいし、何より綺麗だし。

僕の中心が彼であるように、クラス全体の中心が彼だ。

僕だけのものじゃない。

醜い独占欲は棄てようと努力したけれど、なかなか上手くいかないものだ。


欲しい。

欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい!


その心を野放しにしてるとどんどん視界は色を失っていく。

もうそれ以外いらないって、そう思ってしまう。

僕の目に映る唯一の『色』は彼。

色を求めて、僕の目は辺りを彷徨う。

そして彼を見つけて安堵の息を吐いた。

彼は大勢の学生の中心で微笑んでいる。

そして、彼が僕の視線に気付いた。

目ときょとんとさせて、首を傾げて。

そして微笑んで駆け寄ってくる。


「スザク、どうした?」


彼の瞳に僕が映る。


嗚呼、なんて幸せ。








































なにひとつ疑わない君




「ねぇ、抱きしめてみてもいい?」

「・・・は?」


形のいい眉を盛大に顰めて、彼は低く声を漏らした。

そんなに露骨に態度に表さなくても・・・。

でも僕が笑っていたら、きっと彼は。


「今日はなんの遊びだ?」


ほら、冗談として受け取ってくれる。

全然冗談なんかじゃないのに。


「んー、ちょっと風邪気味でさ。ほら・・・人の体温は病に効くっていうじゃないか。」

「・・・涙、の間違いじゃないか?」

「いいからいいから。」


ぎゅっと抱きしめてみる。

勿論風邪気味なんて嘘。

この僕が風邪なんて引くわけ無いじゃないか。


「あったかー。」

「・・・満足か。」

「うんー。」

「あのなぁ・・・俺達男同士なんだぞ?それにお前なら抱きしめられてくれる彼女くらいいるだろう。」

「え、彼女なんていないよ?」

「そうなのか?」

「うん。」


何をそんなに驚いているんだろう。

何で僕に彼女がいるって、当たり前のように思っているんだろう。

まぁそんなことはいいや。








































肩書きは友人




「え、スザク?」


そんな声が少し離れたところから聞こえてきたのは昼休みだった。


「何馬鹿なことを言ってるんだ。俺とスザクは友達・・・そうだな、親友ってところだ。で、それ以外に何がある?」


僕は『親友』っていう絶対的なポジションを得た代わりに、何かを失った。








































告げるつもりはないけれど




「こーら。」

「・・・っ・・・ミレイさん・・・。」

「なーにぼんやりしてるの青少年!青春ってのはあっという間に過ぎちゃうんだからそんな風に呆けてたら駄目よー?」


書類を丸めて筒状にしたもので僕の頭を叩いたミレイさんは先輩で、多分色々気付いている人だ。

僕がひた隠しにしているソレに感づいた兵。

良く言えば大らか。

悪く言えば大雑把。

そんな彼女は何もかもを分かった上で、僕を見る。


「今度は何で落ち込んでるの?あの子が鈍感だってことくらいアンタも分かってるでしょう。いちいち気にしてたら身が持たないわよ?」

「そう・・・なんですけど。」


歯切れの悪い僕の隣に座って、ミレイさんは困ったように眉を寄せながら笑った。

ぎこちなく僕も笑い返してみる。

ちゃんと笑えてるだろうか。


「アンタも辛い恋してるのね。」

「・・・まぁそもそも、色んなものに逆らった恋ですから。」


僕は男。

彼も、実際何でそうなのかは分からないけれど・・・男で。

だってあんなに綺麗な顔して、あんなに細くて軽くて・・・いや、それは置いておいたとしても。

同性愛に対する意見は人それぞれで、僕は気にしないけど彼は気にするかもしれないし。

何より彼は誰よりもまっすぐな心で、僕のことを親友だと思ってくれている。

そんな彼を。


「・・・裏切ることなんて、できないです。」








































こころ、掴んで離さない




「スーザークー。」

「・・・え、うわっ、ルルーシュ!!?」


ルルーシュは僕を上から見下ろしていた。

僕はといえば静かな校庭の木陰で眠っていたわけで。

目を開けたらいきなりルルーシュの顔が間近にあったわけで。


「びっくりしたー・・・」

「何がびっくりしたー、だ。」

「ごめん・・・どうしてここに?」

「先生がお前を見つけてこいって。教室に戻るぞ。」


寝転がったままの僕の腕をルルーシュが掴んで、その引っ張り起こそうとするものだから、僕は慌てて起き上がる。

ルルーシュは変なところで抜けてるから、もし反動とかで転んだりしたら大変だ。

何より力もないし。

・・・これを言うと怒られるけど。


「あのー・・・ルルーシュ?」

「ん?」


そのまま歩き出したルルーシュはぐいぐいと僕を引っ張る。


「手・・・」

「放したらお前逃げるかもしれないだろ。俺にはお前を連行するという使命と責任があるんだ。」


そう言ったルルーシュは不敵な笑みを浮かべて。

僕は、顔が熱くなるのを感じた。

今、僕はルルーシュの一番傍にいる。

元よりルルーシュから逃げる・・・離れることなんて、あり得ないのに。

それを知らずにずっと僕の腕を掴んでくれるルルーシュに、僕はもう一生囚われ続けるのだろうと悟った。







当サイトの枢木さんに有るまじき謙虚さをもったスザクさんです。
こんな押しの弱いスザクは初めて・・・でもないか?
今回のルルーシュさんは気付く気付かないの前に本当にスザクさんをただの友達だと思ってます。