嗚呼、また怒られるんだ。
そんなことを考えたら余計に気分が沈んで、膝を抱えた手に力を込めた。
ジノ・ヴァインベルグがその場所に座り込んでから、もうどれくらい経ったのか。
本人にすらわからない。
思えば最初は空がオレンジ色に輝いていた気もするが、今は月明かりが辛うじて視界を確保してくれる程度の闇夜だ。
冷たい外気にふるりと身を震わせて、ジノは何回目かも分からないため息を漏らした。
3人の兄たちは優秀だった。
それらと比較され、常に親の目を気にし、世間体を気にした。
丁度9歳の誕生日を迎えたこの日、親は別段それを祝ってくれるわけでもなく、顔は広いほうがいいからと常日頃から行っている皇族との対面を半ば義務のようにこなした。
でもふと、本当に衝動的に。
それが嫌になって、走り出してしまった結果が俗に言うところの迷子というやつだ。
空を見上げる。
暗い色の中に輝く月。
息を吐き出すとそれは白く視界を覆った。
泣くな。
そう何度も言い聞かせる。
どうせ親に怒られて嫌でも泣いてしまうのだから、それまで温存しておかなければ。
・・・思ったのもつかの間。
後ろの植え込みの茂みがガサガサと揺れる。
びくりと跳ね上がる身体。
途端に恐怖が心の内を占めて、涙がぼろりと零れた時。
「泣いているのか?」
聞こえたのは幼い声。
次いで現れた姿。
黒髪の少年は、ジノを見てきょとんと首を傾げた。
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