唐突な別れに贈る7つのお題





めずらしくジノルルです。
ジノの過去は思いっきり捏造で、尚且つ報われません。
ジノ→ルル?っていうか最後にはスザルル前提がプンプンしてます。








月と泪
きみを彩めたもの
想い出は低体温
振り返れば、錯覚
この手からこぼれてゆく
あいしてる、あいしてた
神さま、奇跡をください

















































月と泪




嗚呼、また怒られるんだ。

そんなことを考えたら余計に気分が沈んで、膝を抱えた手に力を込めた。

ジノ・ヴァインベルグがその場所に座り込んでから、もうどれくらい経ったのか。

本人にすらわからない。

思えば最初は空がオレンジ色に輝いていた気もするが、今は月明かりが辛うじて視界を確保してくれる程度の闇夜だ。

冷たい外気にふるりと身を震わせて、ジノは何回目かも分からないため息を漏らした。

3人の兄たちは優秀だった。

それらと比較され、常に親の目を気にし、世間体を気にした。

丁度9歳の誕生日を迎えたこの日、親は別段それを祝ってくれるわけでもなく、顔は広いほうがいいからと常日頃から行っている皇族との対面を半ば義務のようにこなした。

でもふと、本当に衝動的に。

それが嫌になって、走り出してしまった結果が俗に言うところの迷子というやつだ。

空を見上げる。

暗い色の中に輝く月。

息を吐き出すとそれは白く視界を覆った。

泣くな。

そう何度も言い聞かせる。

どうせ親に怒られて嫌でも泣いてしまうのだから、それまで温存しておかなければ。

・・・思ったのもつかの間。

後ろの植え込みの茂みがガサガサと揺れる。

びくりと跳ね上がる身体。

途端に恐怖が心の内を占めて、涙がぼろりと零れた時。



「泣いているのか?」



聞こえたのは幼い声。

次いで現れた姿。

黒髪の少年は、ジノを見てきょとんと首を傾げた。









































きみを彩めたもの





「泣いているのか?」



そう問われてジノは慌てて涙を袖で拭った。

少年はそれを見てポケットから取り出したらしいハンカチを手渡してくる。

受け取ったジノはそのハンカチを受け取ったまま、彼から目が離せなくなった。

月に照らされて際立つ色の白い肌。

そして瞳に輝くその色が、なんとも不思議で。

思わず無意識に「きれい・・・」と呟いてしまっていた。

少年は首を傾げて「何が?」と問うてくる。

それにやっと自らの呟きが漏れていたことを知ったジノは慌てて手を振った。



「いや、あの・・・目が!」

「目?ああ、ありがとう。でも君も綺麗だと思うよ。」

「・・・え?」

「髪の色。月みたいだ。」



すっと伸びてきた手がジノの髪に触れて、ジノは身を強張らせた。

自分に伸びてくる手は大抵いつも行動を咎められたときの制裁なのだから。

しかしジノが震えたことに気付かない少年はニコニコと笑って。

そして不意に遠くから響いてきた女性の声に目を輝かせた。



「ルルーシュ!見つかったの?」

「あ、はい母上!今連れて行きます!」



ルルーシュ。

じゃあ、この人が。

ジノは目を剥いて、慌てて跪く。



「ん?どうしたの?」



こういう時、何と言うんだったか。

思考をフル回転させる。



「えっと、皇子殿下とはしらず、失礼をいたしました!」

「何だ、そんなことか。」



今日最後の訪問先であったアリエス宮。

そこに暮らすヴィ家の皇子。

ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。

皇子相手にこんな態度だったと知られれば、また怒られる。

そう気落ちしたジノの手をルルーシュは掴んだ。

それから手を引かれて走り出す。



「君がジノだろう?今日が誕生日だって聞いたから、母上と一緒にケーキを焼いたんだ!」



その笑顔が、眩しかった。









































想い出は低体温




「でんっ・・・ルルーシュの手は冷たいな。」



慌てて言い直したジノに、ルルーシュは何処か満足そうな笑みを浮かべたが、それから自分の手を握ったり開いたりして、眉を寄せて唸った。

余程悔しかったのか。



「ジノが子供体温なだけだ!」



そっぽを向いたルルーシュを見て、年は一つしか違わないのに・・・とジノは笑った。

初めて会ったあの日、手を引かれて訪れたアリエス宮は温かかった。

憤慨していた父親はマリアンヌ皇妃が宥めてくれたし、ルルーシュは妹のナナリーと共にケーキを切り分けて渡してくれた。

それ以来ジノはアリエス宮に通い、二人きりのときは名前で呼ぶことを許してもらった。

幸せだった。



「でも手が冷たい人は心が温かいって聞いたことがある。」

「本当か?」

「だからルルーシュは温かいんだね。」



照れくさそうに笑ったルルーシュの表情は、ジノにとって忘れられない記憶の一つだ。









































振り返れば、錯覚





「マリアンヌさま・・・が・・・?」

「お二人の殿下は日本へ留学することとなった。」

「そんな・・・」




『・・・騎士?僕が騎士を持てるようになるのはまだずっと先の話だよ。』

『そうか・・・』

『・・・僕が騎士を持てるようになったら、ジノを騎士にしたいな。』

『本当っ!?じゃあ私はルルーシュのために強くなるよ!』



約束だと、そう誓い合った。

口約束程度のその誓いが、その時の情景が、彼の声が。

何度も何度も何度も頭の中に蘇って、こびり付いて、離れなくなった。








































この手からこぼれてゆく




留学とは名ばかりなのだろう?


これでは人身御供・・・体のいい人質だわ。


日本とは友好関係もなく、開戦は免れないと聞き及んでいるぞ。


皇帝陛下はあのお二人を見捨てられるおつもりか。


まぁマリアンヌ皇妃の身分では・・・。


皇子殿下に至ってはお生まれになった時期に比べて継承権が低すぎる・・・そういうことなのでしょう。






なんだ、これは。

そんな言葉しか出てこなかった。



それからまもなく、日本との開戦と二人の皇族の死が伝えられた。








































あいしてる、あいしてた




泣いた。


泣き叫んだ。


声が潰れるほど。


吐いてしまうほど。


でも涙は枯れなかった。


早く枯れてしまえばいいのにと思うほど、流れ出る涙は止まることを知らなかった。


でも一週間ほど経ったとき、その流れる涙はあの人への想いのカタチだと思うことにした。


それならば一生止まらなくていいと思った。


そうすればこの想いに嘘はなかったと証明することができるから。


それから更に一週間後、父親から『殿下のことを想うならもう泣くな』と言われた。


泣き続けるのを殿下が見たらどれだけ心を痛めるか。


思えばそれはただ泣き止ませるための口実に過ぎなかったのかもしれない。


疑いはしたものの、結局泣くのは止めた。


泣いている場合ではないから。


強く在ろうと決めた。



妹を守るため必死に強く在ろうとした彼のように。









































神さま、奇跡をください




帝国最強の騎士、ナイトオブラウンズ。


正直彼以外に仕えるのは気が引けたが、それでも強くなった自分の名声が天まで届けばいいと、そういう思いを込めてその3番目の椅子に座した。


それから数々の任務をこなして、6の少女と仲良くなって。


また任務をこなして。



あの人が死したエリア11・・・日本でブラックリベリオンと呼ばれる大きな戦争が起きたことを聞いて悲しくなった。


まだあの人は安らかにはなれないのだと。


そしてそれから、奇跡のような出来事が起きた。


死んだといわれていたナナリー殿下が生きていた。


でも皇族に復帰したナナリー殿下の傍に、いるはずの人はいなかった。


彼の生死を問い詰めたら、行方不明なのだと彼女は涙ながらに縋り付いてきた。


でもそれでも、今は十分だった。


少なくともナナリー殿下と離れることになる少し前まで、彼は生きていたのだから。


それからテロリストであるゼロを捕らえたという功績でラウンズに就任した7と任務をこなし、その傍らで彼を探し続けた。


一年後、ゼロの復活に伴い、任務も兼ねて編入したアッシュフォード学園で、彼と出会えた。


これ程までに神に、奇跡に感謝したことはなかった。


しかし彼の隣には妹ではなく弟がいて、私の事も覚えていなくて。


何より彼が心から求めているのは傍にいない妹と、7の男だということが傍目からでも分かって。



私は。








む く わ れ な さ す ぎ !
私のなかのスザルル心を無理やり押し込めてみたんですが、あまりにもジノが可哀想なのでやっぱスザルル一筋のほうがいい気がしてきました。
最終回あたりのジノの不可解行動が、手に入らないならいっそっていう鬼畜ルートだと無理やりこじ付けてみるw
ルルーシュがジノを覚えていないのはきっとパパのギアスのせいです。