「ルルーシュはユフィの仇だ。」

「・・・だから?」


もうどうでもよかった。

どう言い逃れしようと、ユーフェミアを殺した事実は変わらない。

スザクが構えた剣の、鋭い切っ先がルルーシュに向けられる。

それに貫かれればきっと命は終わるだろう。

それでもスザクは剣を構えこそすれ、ルルーシュを貫こうとはしなかった。



「やるなら早くやれ。俺が憎いのだろう?」

「どうして君は・・・俺を殺さない?」

「殺す?俺が、お前を?」


心底不思議だ、といった表情のままルルーシュは首を傾げる。


「確かに君はユフィを殺した。俺はそれを許せない。でも・・・俺はナナリーを殺した。」

「それで?」

「それでって・・・俺が憎くないのか?」

「憎いに決まっているだろう。俺の生きる理由を奪ったお前が。」



ナナリー

彼女のために、と世界を変える決意をした。

しかしそれはただの免罪符で、結局は自分の守りたいものを守りたいという自己満足だ。

善意の押しつけ。

否定した父親と母親、彼らとなんら変わらないではないか。

しかしナナリーが生きていれば、と思ってしまうのはやめられなかった。

ナナリーの目も、もしかしたら見えていたかもしれない。

生きていれば。

でもそれはもう過去のことだ。



「お前の考えで俺を括るな。俺の中で『憎い』と『殺す』はイコールではない。」

「俺だって・・・!」

「死にたがりのお前を殺してやるほど俺はお人よしではないし、それで俺の罪を言い逃れるつもりもない。」

「君も今、死にたがっているじゃないか。」

「俺のはお前とは違う。自己犠牲で世界平和を望んだりはしない。ただ・・・俺はやるべきことは終えた。ならば世界のノイズは消えるべきだと思わないか?」


作り上げた黒の騎士団からは弾かれた。

大切な人を失い、それでも目的は果たすことができた。



「もう、疲れてしまったよ。」



後の皇帝の座を引き継ぐのは恐らくシュナイゼルだ。

第一皇子のオデュッセウスはその器ではない。


内心何を考えているかわからないシュナイゼルに引き継がせるのは正直なところ不安で仕方がないが、もうそんなんことを言っている場合でもなくなった。

きっと、世界は変わる。

いい方向に向かわなくとも、少なくとも悪い方向には向かわないはずだ。



「邪魔者は大人しく、ステージから降りるさ。」

「君はそれでいいのか。」

「他にどうしろと?」

「君が皇帝になれ。」


笑えない冗談だ。

冗談はやめろ、と鼻で笑えば、スザクは冗談じゃないと呟いた。



「ゼロは世界を変えるために存在したんだろう。だから君が皇帝になれ。」



スザクは構えたままだった剣を地に突き刺した。



「言ったはずだ。最後までやり通せと。嘘を真実にしろと。」

「俺に、また背負えと?」


はッ、とルルーシュはまた鼻で笑った。


「お前が俺を認めたところでどうなる。他の皇族の奴らが俺を認めるわけがないだろう。」

「ギアスを使えばいい。」

「お前は・・・それはお前の信条には反しないのか?」


左目だけではなく、右目にも発現したギアス。

『神』すら左右した絶対遵守の力。

確かにギアスを使えば従わせることは容易い。

それでも。



「もういい。この力は・・・ギアスは悲しみしか生まない。俺は・・・」

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア!!!」


スザクが叫んだ。

体力に自信がある彼は当然肺活量も多く、本気を出せば声量だって計り知れない。

そんなスザクが、大声で。

ルルーシュが驚かないはずがない。

キーン・・・と耳鳴りする耳を不快に思いながらルルーシュは眉を寄せた。


「なんだスザク・・・あまり怒鳴るな。」

「そうだ、君はルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ。ルルーシュ・ランペルージでも、ゼロでもない。」

「そう・・・だな。」

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとして世界を変えるんだ。君がルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとして皇帝になるなら、僕は君の騎士になる。」


ルルーシュは瞠目した。

そしてぷっと吹き出して笑う。


「スザク、知ってたか?騎士は皇族が選ぶんであって、『なる側』に主を選ぶ権利はないんだぞ?」

「知っているさ。僕もユフィの騎士だったからね。でも・・・君が騎士を選ぶとしたら、僕しかいないだろ?」

「自意識過剰。」

「間違っているかい?」

「いいや、間違ってないよ。全く・・・お前にはかなわない。」




スザクがほほ笑みながら差し出した手を、ルルーシュは握って。











君の手を





もう離さないと誓った。





















「ルルーシュ・・・もう一か月経つよ?」

「うっ・・・うるさい!もうすぐ仕上がるんだ、少し黙ってろ!!」


ガタガタガタガタガタガタガタ・・・

軽快とは言い難い、それでもリズミカルな音。

雑音や騒音のそれに近い音を聞きながら、月日はあっという間に流れた。

皇帝と皇妃マリアンヌを葬ってから。

皇帝になる、と決意してから一か月。

ルルーシュは皇帝になる準備をするのかと思いきや、全く別なことに力を注いでいた。


「よしっ・・・出来た!!」

「うわー・・・満面の笑みだねルルーシュ・・・」

「当り前だろう!デザインに一週間。それから試行錯誤を繰り返してやっと完成したんだ!一体どれだけ生地を無駄にしたと思ってる!?」


バッと広げたものを苦笑しながらスザクが受け取った。

それをまじまじと見つめて、何とも言えない溜息を吐く。


「相変わらず・・・器用だね、君は。」

「ラクシャータが言っていたからな。パイロットスーツは生存率を上げる役目を担う大切なものだと。」



ミシンでずっとパイロットスーツを縫っていたルルーシュは凝り固まった肩を解すように回しながら得意げな笑みを浮かべた。


「そういえば、他のラウンズはどうするつもりだい?」

「解任だろう。俺に忠誠を誓うとも思えないしな。」

「僕はラウンズ?」

「それについて考えたことがある。お前にはラウンズを超えたラウンズになってもらおうとな。」

「ラウンズを越えたラウンズ?ナイトオブワンじゃなくて?」

「そうだ。」



スザクは少し考えるそぶりを見せた。

ルルーシュは少しその様子を伺って、それから堂々と声を張り上げた。



「ナイトオブワンを超えた存在。『ナイトオブゼロ』。」



「・・・君、僕にそれを背負わせるつもり?」

「駄目か?」

「仰せのままに、我が君。」



礼をすれば、ルルーシュはからかっているのか・・・と少し不満げに表情を歪めた。


「ところでルルーシュ。会見では何を着るつもりだい?」

「・・・あ。」



パイロットスーツを作るのに夢中で、何も考えていなかった。

・・・とは意地でも口に出すまいとしているルルーシュにスザクは声を出して笑った。


「ハハハ。」

「わっ、笑うな!ええい、もういい!制服で!」

「えー・・・制服?」

「拒否権はない!お前も一緒に制服だ!」


「・・・イエス、ユアマジェスティ。」









スザルルわっしょーーーーい!!!!!
もう何もかもが公式で、どっからどこまでが同人なのかわかんない。
そんな21話でしたw
リクエスト小説書かないで何やってんだ自分ww



2008/08/31 UP
2011/04/06 加筆修正