いつもの事ながら捏造甚だしいです







これでよかったのか。


ユーフェミア、シャーリー、ロロ。

そしてナナリー。

逝ってしまった者たちに思いを馳せて空を仰ぐ。

その空は本物とはいえない。

アーカーシャの剣の空間。

そこは常に夕焼け色に染まり、青空も、夜空も見せることは無い。

殺せないならば、せめて・・・と。

もう『ギアス』という力が世界を混乱に陥れないようにする為にも、自分諸共憎き父親を閉じ込めた。


世界に干渉は出来ない。


皇帝がいなくなったとなれば、恐らくはシュナイゼルが次期皇帝椅子に座るだろう。

性格は好かないが手腕だけは認めざるを得ない、腹違いの兄。

このまま父親が皇帝でいるよりはマシだろう。

世界を、変えることは出来ただろうか。

ナナリーの望んだ優しい世界を作り上げることは出来ただろうか。

ロロの命を無駄にしない結果を遺せただろうか。


「ルルゥ〜シュゥゥゥ。」

「うっさい、黙れクソ親父。」


これで情勢も落ち着き、エリア11も『ゼロ』の存在と引き換えに解放されるかもしれない。

志半ばで逝ってしまったユーフェミアの念願も叶うだろうか。

シャーリーは・・・あの世で父親に会えただろうか。

ナナリーは、幸せだろうか。



あぁ・・・ナナリーナナリーナナリーナナリーナナリーナナ・・・



「ルルゥ〜シュゥゥゥ。」

「黙れというのが聞こえないのか、このイカれロールケーキが。」



『幸せの呪文』を唱えている最中に邪魔をされ、ルルーシュは苛立ちから近場の瓦礫を蹴った。

痛い。

恨みを込めて蹴り上げたはずなのに、それは自分に全て返ってきたかのように身体のバランスを奪った。

よろめきながらも何とか転倒だけは避けた。

ここで転倒すれば羞恥心しか残らない。

憎い人間の前でそんな醜態を晒すなど真っ平御免。

ジワリと浮かんだ汗をさり気無く拭ってルルーシュは息を吐いた。


「ルルゥ〜シュゥゥゥ。」

「だあああぁああ!もううるさい!さっきから一体何なんだ貴様は!言いたいことがあるならばハッキリと言え!!!」


言おうとしたところをルルーシュに『黙れ』と一蹴されて言えなかったとは誰も教えてはくれない。

シャルルは少し黙って、やがてまた口を開いた。


「ルルゥ〜シュゥゥゥ。」

「だから何だ!!」

「腹がぁ・・・減った。」

「・・・・・・・・・」



・・・は?



ルルーシュの口がぽかーんと開く。

目の前の男はなんと言ったのか。

一度では理解できず思わず「腹が・・・減った?」と声に出して復唱すると、目の前の男はこくりと頷く。

そんな馬鹿な。

あり得ない。

何故この状況下で、敵である息子にそんなことを言うのか。

目の前の男が本来人間であることを失念しているルルーシュの思考回路は突如起こったイレギュラーによりショート寸前だった。


「腹・・・腹が減る?なんだ・・・腹・・・ああ、空腹・・・空腹だと・・・?」


頭を抱えてその場にしゃがみ込んだルルーシュは『腹が減る』の意味を考え、それがほぼ一つの意味しか持たないことを確信し、信じられないような目でシャルルを見つめた。


「空腹・・・だと?」


二回目の問いにもシャルルは律儀に頷く。

それが無性に腹が立つ。


「ふ・・・ざけるな、貴様・・・今の状況が分かっているのか。」

「反抗期のぉ〜・・・息子と二人きりぃぃぃ。」


ガクリと崩れ落ちたルルーシュは只管心の中で『ナナリー』と呟く。

無敵の、幸せになれる呪文。

ナナリーナナリーナナリーナナリーナナリーナナ・・・。




・・・・・・・・・。




「馬鹿か貴様は!」


落ち着きを取り戻して叫んだルルーシュは立ち上がって後ずさった。

今までの『反逆』が。

大事な人を喪って、大事な親友を失って。

それでも立ち止まらず成し遂げてやろうと誓った『反逆』を・・・殺してやろうと思った男に『反抗期』という言葉一つで片付けられたのだ。

なんと報われないのか。

自分も、死んでいった者たちも。


「・・・だんだん馬鹿らしくなってきたな。」


そもそもイカれロールケーキとまともに話が出来るはずないじゃないか!!

だってイカれてるんだからっ!

フフフフハハハハハハハ!!!!


「ルルゥ〜シュゥゥゥ。」

「何ですか、ロールケーキ。」

「ろぉぉるけぇぇぇきが食べたぁいぃぃぃ。」

「共食いですか、そうですか。」

「作ってくれぇぇぇい」

「拒否します。第一ここに材料やオーブンがあるとお思いですか、馬鹿ロールケーキ。」


少し驚いたように目を見張ったシャルルは黙って空を仰ぎ見る。


「なっ・・・!」


夕焼け空と、石段と石柱と。

遺跡のようだったその場はガラリと雰囲気を変えた。

まるでそれは・・・


「キッチン・・・だと・・・!?」


冷蔵庫とオーブン。

大量の材料と調理器具に溢れたその空間は間違いなくキッチンだ。

むしろ規模的に考えれば『厨房』と言ったほうが正しいのかもしれない。

これもあの男が言う『思考エレベーター』の仕業か。

そう思いながらシャルルを睨み付ける。

その瞬間、シャルルの腹の虫が盛大な音を立てた。


「・・・わかりました。」


何もかもが馬鹿らしく、自分一人相手に対して対抗心を燃やしていることすら情けない。


「ただしロールケーキはデザートです。」


手袋を外して、何故か置いてあったピンクのフリルエプロンを着用した。

冷蔵庫の中身を確認しながらレシピを脳内で組み立てていく。


「ルルゥ〜シュゥゥゥ、フォアグラ・・・」

「フォアグラなんて使いません。あんなもの、道楽貴族が食べるものだ。」


最早シャルルが貴族どころか皇族であることすら失念しているルルーシュにツッコミを入れてくれる人物はいない。

袖を巻くって手を洗ったルルーシュは包丁を握った。

考えたメニューは全て日本食。

肉じゃがにきんぴらごぼう、酢の物、その他健康を考えた使う品目の多い料理の数々。

そして白いご飯と味噌汁。

日本食にするのはせめてもの報復だ。

料理は何事もバランスよく。

振舞う相手が敵であろうとなんであろうと、ルルーシュは妥協を許さない。



手際の良さでお嫁さんにしたい人No.1(アッシュフォード調べ)を獲得したルルーシュにとって、なんとも容易い任務だった。




















何故かあるテーブルにクロスを敷いて、その上に出来た料理を盛った器を並べていく。

シャルルは既に席に着き、犬でいうところの『待て』状態だ。

流石に箸を使えというのは酷か・・・と、フォークを添えてやる。

白いご飯と味噌汁を運べば完成だ。


「我ながら完璧だな・・・!」


フンッと鼻で笑い、自らも着席する。

まさか、認めたくはないが一応遺伝子上は父親であるブリタニア皇帝と、二人で食卓を囲うことになろうとは。

しかし最早二人、死ぬだけの人生だ。

今更死に急ぐまでもないだろう。

箸を持って、両手のひらを合わせる。


「いただきます。」

「いたぁぁぁだきまぁぁす。」


フォークを持って、シャルルが肉じゃがの芋を突き刺した。

口元に運ばれたそれが、シャルルの口の中に吸い込まれようとした、その時。




ズウゥゥゥゥゥゥン!!!!!!



「なっ・・・なんだ!!?」


突然の地鳴り。

シャルルも驚きから口の中に入りかけていた芋を一旦離した。

空間にひびが刻まれていく。

そのひびが左右に動いて、その隙間に見えたのは人影。

なんてことだ、とルルーシュは絶望した。

閉じ込めたはずなのに。

もう世界に干渉できることのないように自分共々閉じ込めたはずだったのに。

これでは台無しではないか。


「はぁぁぁぁああああああ!!」


ルルーシュにとって聞きなれた、この場では聞くはずのない声が響く。

声の主はそのひびの僅かな隙間に手を差し入れ、己が力のみでこじ開けていく。


「スザク・・・!?」

「・・・ルルーシュ。」

「どうしてお前が・・・どうやってここに・・・」

「私が扉を開けてやった。」


現れた色彩はライトグリーン。

チーズ君を抱えたC.C.は以前の彼女ではなく、『それ以前』の彼女だった。

高圧的な笑みを浮かべたC.C.にルルーシュは目を見開く。


「C.C.お前っ・・・記憶がっ・・・!」

「覚悟おぉぉぉおぉ!!!!」


ルルーシュの声を遮るように叫んだスザクは剣を両手で構え、一目散に奔ってくる。



その間僅か数秒。



人間離れした運動神経を持つスザクは、100m近くあった間合いを10秒とかからずに詰めてきたのだ。

振り下ろした剣がテーブルを一刀両断する。

テーブルが割れ、食器が割れ、料理が飛び散る。




「ぬあぁぁあんたる愚かしさかぁぁぁぁあ!!!!!!」




怒りに震えたシャルルが立ち上がって声を張り上げた。

しかしそれを制したのは新たな声。

幼さの残る、少女の声だ。


「落ち着いて、シャルル。」

「アーニャ・アールストレイム・・・!?」


後輩としてアッシュフォード学園に転入してきた彼女は、仕えているはずの主を名前で呼び捨てた。

アーニャは微笑んで、ルルーシュに視線を移す。

走りよって、そのままの勢いでルルーシュの腰の辺りに抱きついた。


「あぁ、ルルーシュ。こんなに大きくなって。」

「あの・・・アールストレイム卿・・・」

「いやだわ、ルルーシュったら。ちゃんと『母さん』と呼んでくれなきゃ。」


ルルーシュは固まった。

頭の中は真っ白。

アーニャの身体は今マリアンヌが占拠しているのだが、それをルルーシュは知る由もない。

アーニャに母と呼べと言われ、ルルーシュはボロリと大粒の涙を零した。


「こんなっ・・・俺よりも小さい子に手を出すなんて・・・このロリコン!人非人!!史上最悪ロールケーキィーーーーー!!!」





ルルーシュの悲痛な叫びは虚しく木霊した。










紆余曲折ロールケーキ








とりあえずやっぱりアニメのマリアンヌ様の口調は気に食わないです。
アーカーシャの剣と思考エレベーターについては本当に捏造。
ただBIGLOBEの30秒予告で、座っている(?)ルルの背景がいきなり書庫みたいな風景に変わったので、それがアリならキッチンもアリかとw
スザクとC.C.は出損です。
もうちょっと弄ればよかったww
ただ皇帝に「何たる愚かしさか」と言わせたかっただけです。
紆余曲折:経てきた事情などが、ひとことで言えないほど曲がりくねっていて複雑で厄介なこと