ナナリーをスザクが糾弾します。
駄目だと思ったかたはUターン!
苦情はご遠慮ください。
女神の光、フレイヤ。
自身をも飲み込みかけたその光を発する為のスイッチを、今、手に握っている。
恐怖からか絶望からか、罪悪感からか。
震える手に汗が滲み、もう何度目かもわからない『握りなおす』という動作を繰り返した。
すべてが、終わる。
このスイッチを押せば、兄の罪をともに背負うことができる。
最早それしか、兄を赦す術を持ち合わせてはいなかった。
ピルルルルルッ・・・
突如鳴り響いた電子音に、ナナリーは身体を震わせた。
それは自分の懐にあるピンク色の携帯電話の着信を知らせる音だ。
『愛してる!』
苦しげに呻くように、兄の声がその携帯電話から聞こえた時のことを思い出す。
あの時も、既に兄は嘘をついていたのか。
浮かんだ涙を指の腹で拭って、通話ボタンに手をかけた。
ディスプレイには恐らく着信もとからの名前が表示されているのだろうが、目の見えない自分にそれは確かめようがない。
少しの躊躇いの後ボタンを押して耳に押し当てる。
「もし・・・もし?」
『やぁ、ナナリー。僕だよ。』
そう告げられて、血の気が一気に下がる。
どうして、彼は今戦闘中なのに。
考えても答えは出ず、震える声で名前を呼んだ。
「スザク・・・さん?」
『そうだよ、ナナリー。』
「どうして・・・今は・・・」
『戦闘中だけどね。君に言いたいことを言ってから戦闘に専念しようと思って。』
至極楽しそうに、スザクは言う。
もし、顔が見れたなら。
彼は笑っているかもしれない。
『僕は君に嘘を吐いた。ルルーシュもだ。』
「・・・そうですね。」
『でも僕は君に嘘を吐いたことを謝るつもりはない。』
はっきりと、そうスザクはのたまった。
「お二人はっ・・・世界をどうしたいのですか!」
『僕は特に何も。ルルーシュの実現したい世界・・・その手伝いをするだけだ。』
「お兄様の・・・望みは、ギアスという力による絶対統治ですか?」
『はは、面白いことを言うね。』
手が震えた。
『絶対統治?ルルーシュが?態々『憎いブリタニア』の皇帝になってまで?』
スザクは嗤う。
ナナリーの眼前にあるモニターでは、スザクの乗っているはずのランスロット・アルビオンが次々と『敵』を薙ぎ倒しているのに。
そんな状況を微塵も声には表さない。
『勿論君の為の世界だよ、ナナリー。弱者である君が虐げられない世界を作る。それが一年前から変わらない、『ゼロ』の目的であり君の兄の目的。』
「しかし・・・お兄様は」
『忘れたわけじゃないだろう?君の兄は嘘吐きだ。』
ひゅっ、と喉が音をたてた。
『僕もそうやって、何度も嘘を吐かれたよ。』
お前の為なんかじゃない。
それも嘘?
ランスロットが、一つ戦艦を沈めた。
『それにしてもまさか君がフレイヤを放つ事を容認するとは思わなかった。帝都にはたくさんの人も、たくさんの君の兄姉たちもいたというのに。』
「シュナイゼルお兄様はッ・・・全ての臣民に避難を・・・!」
『覚えておいて、ナナリー。』
ごくり、と唾をのんだ音が妙に大きく響いたような気がした。
心臓の音も煩い。
『人は、皆嘘吐きだ。人を簡単に信じちゃいけない。僕の事も、ルルーシュの事も。そして・・・』
「スザ・・・」
『シュナイゼルという男の事も。』
頭の中で、警鐘が鳴り響く。
もし。
帝都にいた人々は避難させた、という彼の言葉が。
もし、嘘だとしたら。
「あっ・・・あ・・・」
そんなこと、あるわけがない。
まさか、そんな。
『可哀想なナナリー。皆に、嘘を吐かれて。』
頭が痛い。
吐き気がする。
手から滑り落ちたスイッチが、膝の上に落ちた。
自分でも驚くくらい身体が震える。
『君にルルーシュの愛情は伝わらなかったようだ。君にはもうルルーシュは『いらない』んだよね。』
「わた・・・わたしは・・・」
『ルルーシュは僕がもらうから。ルルーシュももう君のことを気にかけなくてもいいみたいだし。』
じゃあ、そろそろ戦闘に戻るね。
そう声が聞こえたとき、また多くの自軍のKMFがロストした。
君に、絶望を詠おう
『バイバイ、ナナリー。』
自分、手のひら返しすぎですね。
最初はよくナナリーにスザクを糾弾させてたのに。
23話のナナリーが本当に残念でした。
2008/09/14 UP
2011/04/06 加筆修正