「お兄様?」





高く澄んだ、少女の声。

それが耳を掠めて目を開けば、それに伴って目尻から涙が零れた。

白く細い、自分のそれよりも小さな手が控えめに頬に触れてくる。


「悲しい夢でも見たんですか?」

「ナナ・・・リ・・・」


はい、と返事をしながらナナリーは微笑む。

眩しい笑顔。

守りたいと思ったものだ。

一気に涙が溢れ出す。

頬に触れたナナリーの手に次々と流れ出る涙が触れて、彼女は困ったように眉を顰めた。


「お兄様」

「ごめっ・・・」


物心ついた時には母と妹は自分が守るのだと心に決めていた。

しかし起こってしまったのは『アリエスの惨劇』。

母は守れなかった。

残された妹は光と自由を失った。

今度こそ守らなければならないと、守るためならなんでもすると誓った。

例え異母兄妹を殺しても。

多くの人間を殺しても。

他人に頭を下げて、地に顔をこすり付けることになっても。


「守れなっ・・・た!」


ルルーシュは苦しげに呻く。

放たれた光。

飲み込まれたものは何も残らなかった。

いなくなってしまった。


「ナナリーはここにいます。」


きゅっと、小さな身体が寄り添ってくる。

ふわりと優しい香りが鼻腔を掠めた。


「ナナリーはずっと『此処』にいます。」

「『此処』・・・?」


そして気がついた。

自分に抱きついたナナリーが身を乗り出している。

車椅子を離れ、自分の力で立ち上がって。

信じられないという風にナナリーを見れば、彼女の閉じられたままだった瞳がゆっくりと現れる。

自分と同じ、アメジスト。


「『此処』は優しい世界。誰もお兄様を傷つけたりしません。」

「ナナ・・・」

「ナナリーも、ずっと『此処』にいます。お兄様が望む限り、お兄様の傍に。」














愛と豊穣の女神は謳う

















声に、絡め取られていく。

水に広がる波紋のように、その声は耳に響いて。

まるで鎖にでも繋がれたかのように身体を動かすことができない。





新たな涙が頬を伝って。




ルルーシュは静かに目を閉じた。















精神崩壊ネタです。
ルルーシュはナナリーを失ったショックで精神崩壊、『夢』でナナリーに会います。
そして若干夢の中のナナリーは黒い。
ルルーシュをもう目覚めさせない、という・・・
すいません、自分でもよくわからないです。



2008/08/11 UP
2011/04/06 加筆修正