「ナナリー!駄目だ、ゼロと会うなんて!」

「いいえ、あの方とは共に同じ道を歩むことになるのですから。一度会っておきたいのです。」


スザクが必死に止めるのも無理はないと、分かってはいるつもりだ。

それでもナナリーは振り返るわけにはいかなかった。








反逆者と新総督









数多の視線。
当然だ。
自分の目の前にはエリア11の新総督に就任した愛しい妹がいるのだから。
ルルーシュは仮面の下で自嘲の笑みを浮かべる。

今は自分は『ゼロ』。
日本を開放しブリタニアの崩壊を成し遂げるために甦った反逆者。

ルルーシュにとって目の前の人物は妹だが、ゼロにとっては敵になるはずだった皇族。
それは相手にとっても同じことではあるが、新総督の護衛はそんなことを知るわけもなく。
鋭い視線を一身に浴びて、それでも目の前の妹から目を離したくはなかった。
ナナリーは少し困った顔をしながら、少し振り返った。


「皆さん、席を外してください。」

「総督!?」

「それはなりません!ユーフェミア様の二の舞に・・・」

「口を慎め、ナナリー皇女殿下の御前だぞ。」


口を挟んだのはゼロ。
護衛達が唇をかみ締めてゼロを睨む。


「ユフィ姉様のような愚かな行為はいたしません。」


静かに、はっきりと。
ナナリーはそう告げて、脇に控えていたスザクは目を見開いた。


「ナナリー・・・君は・・・」

「これは命令です。」

「イエス・・・ユアハイネス・・・」


皇族の命には逆らえない。
護衛とスザクはその言葉に従わざるを得なくなり、部屋を出て行った。
誰もいなくなった部屋。
黒の騎士団の、ゼロの部屋。
監視カメラも盗聴器も心配は無用だ。
ゼロはゆっくりと息を吐いた。
ナナリーも小さな手をきゅっと握り締めて、そしてゆっくりと頭を下げた。


「本当に、ごめんなさい。」

「・・・何を。」

「あの時わたくしは貴方の手を取らなかった。あの場で取る手は貴方の手でならなくてはならなかったのに。」

「ナナリー・・・皇女殿下。」


思わずいつものように呼びそうになってしまい、慌てて最後に付け加えた。
閉じられたまぶたの隙間から涙が溢れ出してくる。


「貴方の心に気づくことができずに、貴方を否定してしまった。」

「そのことでしたらもう・・・」

「わたくしの為に、その仮面をとってくださったのでしょう?『お兄様』。」

「・・・っ・・・」


立ち上がって、ナナリーと距離をとる。
汗が全身から噴出すのを感じながらゼロはナナリーを信じられないような目で見つめた。
何も言えない。
ゼロの正体をバラす訳にはいかないのに、それを否定する言葉も出ない。
何より自分はテロリストなのだと。
兄妹を殺した犯罪者なのだと。
それが分かってしまえばナナリーの心は離れてしまうかもしれない。


「わた・・・しは、ナナリー皇女殿下の兄などでは・・・」

「ずっと、会いたかった・・・お兄様っ・・・」


細い腕が己に伸ばされてくる。
新総督がゼロに対してではなく。
皇族が反逆者にでもなく。
純粋に妹が、兄に。

頭が真っ白になった。

そして意識が再びはっきりした時には既にその小さな身体を腕いっぱいに抱きしめていた。
ずっと忘れていた、欲していたぬくもり。
世界の中心。


「顔を・・・どうか顔を・・・」


その声に迷うことなくゼロは仮面に手をかけた。
現れた黒髪。
顔半分を覆った布をずり下げる。
ナナリーの手が顔に触れた。
そしてゆっくりと、ナナリーの手がルルーシュの顔を辿る。


「お兄様・・・。」

「ナナリ・・・俺は・・・」

「クロヴィス兄様やユフィ姉様のことは何も言わないでください。わたしにお兄様を責める資格はありませんから。」


ルルーシュのぬくもりを確かめるように抱きしめるナナリーは涙を流し続けた。


「全て教えてください。今起きていること全て。」


新総督ではなくナナリーにそう迫られてはルルーシュも嘘をつくことができない。
ルルーシュは全てを語った。
優しい世界を作るために『力』を得て反逆者となったこと。
力が暴走してユーフェミアに日本人を虐殺させてしまったこと。
スザクが、地位を得るためにルルーシュを皇帝に突き出したこと。
皇帝もまた『力』を持ち、それによって記憶を書き換えられて一年間生活し、偽りの弟がナナリーの代わりに存在していること。


「お兄様・・・わたしはどうしたらいいでしょうか・・・。」

「え?」

「このまま総督でいることでお兄様の足枷になるならわたしは・・・わたしは悪者になっても構いません。」


ルルーシュは驚きで目を見開いた。

何を言い出すのか、とナナリーの肩に手を添える。


「わたしがすぐゼロ側につけば、お兄様の記憶が戻ったことも知られてしまうかもしれません。それでしたらわたしが公の場でブリタニアを裏切れば・・・」

「それは駄目だ、ナナリーにそんなことはさせられない。」


日本人はまだしも、今度はブリタニア臣民に反感を買ってしまう。
裏切り者の皇族だと罵られてしまう。


「ナナリーは総督のままでいい。一応これからはゼロも行政特区日本の協力者だ。」


ナナリーの長い髪を梳くように撫でてから立ち上がると、ゼロの仮面を被りなおす。


「しかし俺の目的は変わらない。いずれはブリタニアを・・・」

「そのために、わたしを利用してください。お兄様はわたしの全て。わたしも『仮面』を被り、影からお兄様を支えてみせます。」


それは目に見えない仮面。
真実の心を隠し通すための蓑であり、内に秘めた剣を収める鞘。







「進むぞ・・・最後まで。」



「お兄様となら、どこまでへも。」




















いつものことながら意味不明(笑)
途中ナナリーがナチュラルに少しだけユフィを貶しますが、別に私はユフィが嫌いではありません。
ユフィにベタ惚れなスザクはどんだけ〜って感じですが(元はスザルル派)
ただ私のサイトのナナリーはルルーシュ至上主義設定ですので、それ以外の人はゴミだと思ってます。
悪気はないんだ、ユフィ。
ナナリーが腹黒なだけだよ★
























以下、おまけ(反転)

ゼロは黒の騎士団の主要メンバーをナナリーにひきあわせた。


「わたしはブリタニア皇族。信用していただけないかもしれませんが、わたしはゼロを決して裏切りません。」


いい顔をしない玉城たちにのたまってから、ナナリーは懐かしい面々にぺこりと会釈する。


「C.C.さん、お久しぶりです。カレンさんも。」

「ナナリー・・・久しぶりだな。」

「よかった・・・『ゼロ』とはまだ一緒にいてくれたんですね。」

「私とアレは共犯者だからな。」


不適に笑ったC.C.を見てナナリーは満足そうに微笑んだ。



しかし首を傾げたのは玉城だ。



「何でゼロの『愛人』のこと知ってんだよ。」



「一応口を慎め、玉城。」

「いいんですよ、扇さんに玉城さん。でもC.C,さんはゼロの愛人ではありません。」


首を傾げたのは黒の騎士団メンバーだけではない。
同じように、ゼロとC.C.も首をかしげた。
そしてナナリーは満面の笑みを浮かべて。



「C.C.さんはゼロの『正妻』です!」



「「「「「「えええええええええええええ!!!!?」」」」」」


「ナナリッ・・・何を!」

「だってC.C.さんは私に『将来を誓い合った仲だ』と・・・」

「その話、もっと詳しく聞かせてくれ!」

「俺にも!」


興味津々なメンバーがナナリーの周りに集まって。
ぽつんと残されたルルーシュはC.C.を睨みつける。




「お前のせいだぞ・・・どうしてくれる。魔女め。」



「光栄に思え、童貞魔王。」





2008/05/20 UP
2011/04/06 加筆修正