「私が勝った場合・・・柩木スザクをいただきます。」
ゼロの放った言葉に周囲は一瞬にしてざわめいた。
シュナイゼルは表情を崩さない。
目の前のゲーム、チェスに負けないという自信からか。
苦笑してその条件を呑んだシュナイゼルは変わりにゼロの素顔を晒すことを要求してきた。
仮面の下、ゼロ・・・ルルーシュは口の端を吊り上げながら目の前の異母兄を睨み付けた。
箱庭の守護者
「ユーフェミア様の仇ィィィィ!!!!!!」
勝負の終盤、事態は急転した。
シュナイゼルと共に会場に来ていたニーナがゼロにナイフを振りかざしたのだ。
咄嗟に避けたゼロを庇おうとカレンが走り出す。
しかし再び迫るニーナのナイフがゼロに到達する方が早い。
カレンの悲痛な叫びが木霊して、ルルーシュは息を飲んだ。
キィィンッ!!!
響く金属音。
ルルーシュは咄嗟に瞑った目を恐る恐る開けた。
目の前の光景が信じられない。
「やめなさい、ニーナ。」
「なんで・・・どうしてよ・・・」
細身の剣で、ニーナのナイフをなぎ落とした女性。
カレンではない。
それどころか黒の騎士団の団員でもない。
目の前の女性は黒い団服とは正反対の明るい空色のドレスを身に纏っていたのだ。
ニーナの瞳から涙が溢れて、逆上する。
「どうしてよっミレイちゃん!!!!!!」
ミレイ・アッシュフォードは剣を構えたまま、ニーナが取り押さえられるのを黙って見ていた。
その表情からはいつもの、アッシュフォード学園の会長としての明るさを感じることは出来ない。
冷たい、見下したような瞳。
ルージュに彩られた唇が静かに動く。
「ごめんね、ニーナ。何でも力になるからって言ったけど・・・」
「ミレイ・・・ちゃん・・・?」
「なれないこともあった事、忘れていたわ。」
そう吐き捨てて、剣を鞘に収める。
ゼロも、シュナイゼルも、その様子を思わず凝視していた。
ミレイは踵を返してゼロに向き直ると、優雅に一礼した。
用心の為にゼロを自分の背に庇ったカレンがミレイを睨みつける。
「ゼロを助けてくれたことには感謝します。でも会長・・・どういうつもりですか?」
「貴方と同じよ、カレン。ただ・・・その方を守りたいだけ。」
すっと、ミレイの姿が消える。
その姿を次に目視できたとき、ミレイはゼロの首に腕を回して抱きついていた。
「ほぁああ!!?」
素っ頓狂な声を出したゼロに、ミレイが抱きついたことよりも驚いた周囲のギャラリーが目を見張る。
ミレイはゼロの仮面の横・・・丁度、仮面の下に耳があるであろう場所に唇を寄せた。
それ故に傍から見れば口づけをしているように見えるその行為。
誰も、その場から動けない。
ただルルーシュだけが仮面の下で確かな焦りを感じていた。
『ルルーシュ様』
その声は本当に小さくて、ゼロ以外に聴き取れた者はいない。
ただ身体を離したミレイの瞳が真っ直ぐゼロを射抜き、それだけで彼女が真剣だということがわかる。
ミレイは一歩下がり、もう一度礼をして。
「ご無礼をお許しください。」
そう謝罪しながら微笑んだ。
ぎゅっと拳を握り締めたゼロが呻くように呟く。
「・・・ミレイ。」
「はい、『ゼロ』様。」
「いつからだ。」
「最初から、と言いたいところですが・・・ブラックリベリオンの折からでございます。」
布を引き裂く音が木霊する。
なんの躊躇も無くドレスを裂いたミレイの太ももが露出している。
動きやすくなったその出で立ちのまま、ミレイは片膝をついてひれ伏した。
「わたくしは人生全てを貴方様に捧げると決めておりました。貴方様が進む道が茨ならばわたくしが切り開いてみせましょう。」
「そんなことをすればお前の・・・」
「これは先達て自害した父の遺言でもあります。」
ゼロが息を飲んで。
顔を上げたミレイは少し泣きそうに微笑んだ。
意志の強い瞳。
目が逸らせない。
「・・・茨では済まされない。修羅、だぞ。」
「それならば尚のこと。」
ゼロが差し出した手の甲にそっと口付けて。
「我が主に刃を向ける者の相手になりましょう。」
立ち上がったミレイの構えた剣の切っ先が光った。
貴方のための箱庭。
もう安全でも、安らげる場所でも、帰ってこれる場所でもなくなってしまったから。
今度はお傍について守りましょう。
貴方の『世界』を。
ミレイ会長だいすきです。
勝手にミレイちゃんの肉親殺してしまいましたが。
ミレイはやっぱりルルの騎士がいい。
そして変態どもから守ってくれ、頼むから。
本編一度見ただけでうろ覚えで書いたんで色々矛盾してますが、そこらへんはスルーしてください。
スザクにルルの記憶が戻ったことバレるんじゃねー?とか(笑)