ところかわってこちらゼロ。

完全に蚊帳の外、放置プレイ状態である。


(え、ナナリー今『お兄様』って言ったよね?でもそんなはずはない。彼は僕がこの手で・・・くっ!でも、え?あれ?熱い抱擁を交わしてるよ?いや、傍から見ればただの親子愛だけど。でもナナリーが『お兄様』って・・・あ、また言った。愛しています?え、マジでアレお兄様?ってことはルルーシュ?え、ルルーシュ!!?)


仮面とは実に便利なものだと思う。

こんなに動揺していても、それが外部に知られることは無い。

さて、どうするか。

あまりの疎外感に若干泣きそうになりながら、目の前の兄妹の織り成す桃色の雰囲気に居た堪れなくなって踵を返した。


「どこに行かれるのですか、スザクさん。折角のお兄様なのに。」

「どこに・・・ってええ!?」

「なんだ、スザク。お前もうバレたのか。」


スザク的にはまだナナリーに正体を気付かれていないと思っていた。

しかしナナリーはさも当たり前のように名前を呼び、マリアンヌ改めルルーシュもバレたことを咎める事無く平然としている。

なんていうか。


えー。


・・・という感じだ。

大人しく仮面を外したスザクは、はぁっと大きなため息を吐く。


「久しぶりだな、スザク。」

「・・・その格好で言われてもなんか、うん。」

「しょ、しょうがないだろう!気付いたら入ってたんだから!」


男女逆転祭でルルーシュがドレスを着こなしていたのを見ている分、正直なところあまり違和感がない。

ただ、今のルルーシュの身体は彼自身の母親のものであって、彼ではない。

胸もあるし、表情も成熟した女性だ。

面影がなくはないが。


「スザク。」

「・・・へ?・・・ああ。うん。」

「すまない。結局俺はお前に全て背負わせて・・・」


全くだと言ってやりたい。

ゼロになりきるために血の滲むような努力をした。

要求されるのは冴え渡る頭脳。

正直なところそんなもの持ち合わせていない。

そして独特のポーズ。

よく恥ずかしげもなくあんなポーズが出来たものだと思う。


「スザク」

「僕にはやっぱりゼロなんて無理。」


結論はすぐに出た。


「おまっ・・・」

「夢ではユフィに怒られるし。何でルルーシュを殺したんだこの馬鹿スザクとか言っちゃってさー。」

「・・・お前、ちょっとやさぐれたか。」


ナナリーがルルーシュの腕からすり抜ける。

彼女はふわりと笑って、そしてゆっくり頷いた。

それに促されるようにルルーシュは立ち上がり、スザクに歩み寄る。

スザクの肩に手を置けば、その手を強く握られた。


「君が、いないんだ。僕が殺したんだから当たり前だけど・・・君が願った世界に、君がいない。」

「それで、いいんだ。」

「僕はゼロにはなれない。ゼロになるということは君になるということだ。君は、君だけの存在。だから僕はゼロにはなれない。」


スザクは手に持ったままだった仮面を突き出した。

押し付けられたその仮面を持ってルルーシュは苦笑する。

手に馴染むような感覚が懐かしい。


「ゼロは象徴だ。中身がどうであろうと、その存在が希望なんだ。俺とゼロはイコールじゃない。今のゼロはお前だ。」

「俺は君以外のゼロは認めない。」

「一人称変わったぞ。」


自分で自分を認めないでどうする。

スザクはその言葉を無視してルルーシュの身体をかき抱いた。

女性の身体であることに涙が出た。

いつものルルーシュではない。

以前のルルーシュは自分が殺した。

そんな考えばかりが頭の中でめぐる。

『世界のため』という建前と、『世界なんてどうでもいい』という本音が鬩ぎ合う。

しょうがないな、とため息を吐いて、震えるスザクの背にルルーシュは腕を回した。



(ならぁぁぁあああああん!!!!)



・・・なんか聞こえた。

よし無視しようと意気込んでスザクの背を一定のリズムで叩く。



(ルルゥーシュゥー!!!!!)



無視無視。



(それはぁあああ、マリアンヌのぉ、身体だああああ!)



無視無視無視無視無視。



(ぶるぅああああああああ!不倫など許さぁぁぁあん!)



「だぁああああああ!!!!!」



堪忍袋の緒が切れた。

いきなり叫んだルルーシュにスザクとナナリーがビクリと震えた。


「黙れクソ親父!!!さっきから煩いんだよ!ちょっとは黙れよ!」

「ちょ、一体どうしたのルルーシュ!」

「不倫は許さんだと!?皇妃100人以上娶っといてそれを言うのか貴様が!」

(わしはぁああ、マリアンヌ一筋ぃぃぃ)

「一筋!?はッ、今すぐ世界中の愛妻家に額こすりつけた土下座で謝って来い!」


一通り叫んだルルーシュは荒くなった呼吸を整える。

ふと気付くと、ナナリーとスザクが信じられないモノを見るような目でルルーシュを見つめていた。

あ、と。

気付いたルルーシュは顔を赤らめて、目をふっと背けた。


「す、すまない。取り乱して。」

「い、いえ・・・いいんですけれど。ねぇ、スザクさん・・・?」

「う、うん・・・そうだよねナナリー。」


スザクは少し考えて。


「君、3年間のうちにもっとガサツになった?」



・・・は?



「3年・・・?」

「お兄様がお亡くなりになられてから・・・もう3年です。」




WAO!







時間の流れというのは実に早いもので












前話で空気だったスザクがメイン・・・でもないか?
あ、一応このシリーズスザルルっぽいです。
スザルル前提ルル総受け?