ああ、何故こんな事になってしまったのだろう。
ルルーシュは涙目だった。
目の前にはニコニコと微笑んでいる妹の姿。
その隣には、仮面。
本来の名前を棄て、この先の人生を仮面と共に生きるという罰を受けた騎士。
ゼロはルルーシュ(正しくはマリアンヌ)から視線を外さない。
仮面で視線の先など分からないが、それでも分かる。
明らかに睨んでいる。
それもそのはずだろう。
ゼロ・・・もといスザクは、共にCの世界でシャルルとマリアンヌが消えたところを目撃したのだ。
怪しまれて当然。
さて、どうしよう。
兎にも角にも、『ルルーシュ』でいるのはマズイと判断し、『マリアンヌ』になりきることを決意する。
『ルルーシュ』は世界の敵で、嘘つき。
もうこの世には存在しないもので、ノイズだ。
今更現れたところで、文字通り『亡霊』でしかない。
すぅっと息を吸って、静かにそれを吐き出す。
深呼吸完了。
「お母様。」
来た。
「な、なぁに・・・ナナリー。」
ぞわっと鳥肌が立った。
よし、コレは男女逆転祭だ。
ミレイの提案で、目の見えないナナリーの為に中身まで逆転・・・ということもした。
それと同じだと思えばいい。
ルルーシュは精一杯微笑む。
「お母様、生きていらっしゃった・・・わけではないんですよね?」
「え、ええ・・・身体は元々保管してあったから・・・その・・・」
「幽霊・・・ですか?」
「そ、そうよ。」
ああ、泣きたい。
ゼロの視線が痛い。
ナナリーの笑顔が痛い。
そして何より自分の心が痛い。
なんだってこんなこと。
それもこれも父上の・・・。
「お兄様」
「なんだい、ナナ・・・ってほぁあ!!?」
うっかりナナリーがいつもの可愛い声で『お兄様vv』などと呼ぶものだから(←若干のフィルターあり)、条件反射で応えてしまったルルーシュは思わず声を上げた。
ナナリーが笑顔なことには変わりない。
しかし、若干口が引き攣っている。
ああ、何と怖い。
「お兄様、まだ私に嘘を吐くんですね。」
「え、えーっと・・・ナナ・・・」
「お兄様なんて、大嫌いです。」
・・・・・・はい。
分かってはいた。
散々嘘を吐き、ナナリーを傷つけ、苦しめた。
好かれているはずはない。
気持ちが沈むのは避けられないが、こっそり落ち込むくらい許されるだろう。
ふと、手に何かが触れた。
白い、自分のそれよりも少し小さな手。
ナナリーの手だ。
いつの間にか俯いていた顔を上げると、ナナリーは目に涙を溜めて微笑んでいた。
「でも、愛しています。これからもずっと。」
「ナ・・・」
「愛しています、私のお兄様。」
気付けば、その身体を抱きしめていた。
久しぶりの妹は、やはり小さかったけれど。
存在の大きさに驚きを隠せなかった。
「お願いですから、もう嘘はやめてくださいね?」
そう笑ったナナリーに、ルルーシュは困ったように笑う。
「そう、だな・・・もう嘘なんていらないんだ。」
散々吐き続けてきた嘘。
もう嘘を吐く必要はない。
包み隠さず、本心を声に出す。
「愛しているよ、ナナリー。」
拝啓、妹姫様
キリがいいからとぶった切ってみたら予想以上の短さに絶望しました。
・・・あと3話〜5話くらいで終わります←なんか延びてるww