「ほぁあ!」
素っ頓狂な声を上げながらがばりと起き上がると、ガンっと頭をぶつけた。
痛い。
なんだ、ここは。
目の前に、何かの壁がある。
吐く息は白く、身体がぶるりと震えた。
(寒・・・)
気温が低いのだろうか。
目の前の壁を押す。
それが音を立てて外れた。
踏み出した足が、何故かおかしかった。
(・・・どういうことだ?)
足を覆うのは、ズボンではなくドレス。
何故男女逆転祭りでもないのにドレスなんて。
そもそも自分はどこにいただろうか、と記憶をたどる。
(ユフィの伝言で父上のところに行って・・・あ。)
思い出した。
自室でルルーシュを迎えたシャルルはいきなり『オオオオオルハイルブリタァァニアアアア!』と叫んで。
元はコードのあった右手で、ルルーシュの身体を突き飛ばしたのだ。
そこで意識は途切れ、気付けばこの有様だ。
(父上の嫌がらせか。)
何もそこまで怒らなくても。
そう悪態を吐きながら、どうやら段差があるらしいところから飛び降りた。
視界は暗闇。
ここはどこだ、と考えて。
まさか冷蔵庫ではあるまいな、と嫌な予感が過ぎった。
するとガチャとドアが開くような音が耳に届く。
光が差し込んできて、眩しさにルルーシュは手で目を覆った。
冷気が光の方向に移動する。
そこにいたのは。
「なっ・・・」
ミルクティーのような色の髪を伸ばした、妹の姿。
ナナリー・ヴィ・ブリタニア。
何故。
ユーフェミアの『夢枕』が脳裏に蘇る。
・・・あんのクソ親父。
そう悪態を吐きかけたとき。
「お母・・・様?」
・・・は?
ルルーシュは改めて自分の身体を見る。
先ほどまでは暗闇で確認できなかったが。
「え、なんで?」
思わず口走った。
視界が、明るくなっていく。
先ほど自分が入っていたのはガラスケースらしい。
そしてそのガラスケースに写る自分の姿はまさに。
『マリアンヌ』だった。
「・・・そういえば、遺体は保管していたと言っていたか。」
その呟きを聞く者は今は誰もいない。
何故ならば。
逃げ出したからだ、全力で。
幸か不幸か、目撃者であるナナリーは車椅子だ。
走り出せば追いつかれることは無い。
どうやら母であるマリアンヌの身体が保管されていた場所は宮殿とは別の場所にあったらしい。
そのおかげでそれほど警備も厳重でなかったのも勝因だ。
何よりマリアンヌは運動神経はよかったから、ドレスであることを除けば楽に走ることが出来た。
筋力が全く衰えていないところを見ると、ブリタニアの技術は相当優秀らしい。
服屋に行って、今纏っているドレスと服を交換してくれるよう交渉する。
母の容姿では交渉は容易かった。
取り替えてもらったのは細身のパンツとカッターシャツ。
身体のラインが如実に表れてしまい、結局外套も手に入れた。
賑わいをみせる街を歩く。
どうやらここは帝都ペンドラゴンらしい。
フレイヤによって消滅したはずの都市は、見事に再生していた。
街にはブリタニア皇帝ナナリーと、奇跡の象徴ゼロのポスターが所狭しと貼られていた。
公園のベンチに腰掛け、深くため息を吐く。
まず早急に突き止めなければいけないのは、帰り方。
どうしようか、と考えたとき。
(ルルゥーシュゥー)
頭の中に声が響いた。
ドスの効いた、豪く耳障りな。
「父上、どういうつもりですか。」
(すまぁん。)
イラッとした。
落ち着け、自分。
そう自分に言い聞かせて、半眼で空を仰ぐ。
ロールケーキが空にあるわけではないが。
「戻る方法を教えてください。」
(しらぁぁん!)
ブチッ!
何かが切れる音がした。
お前ふざけんなよ。
そう叫びたいのは山々だが、ここは公園。
公共の場だ。
叫べば変な目で見られること間違いなし。
思わずため息が漏れた。
(とりあえずぅぅ、わしの私室に行けばぁ、いいことがあるかもぉ)
「その口調マジで腹立ってきたんですが。俺がそっちに戻った折には覚悟してください。」
それからシャルルの声は響かなくなった。
怖気づいたのかもしれない。
98代神聖ブリタニア皇帝の名が泣く。
はぁ、とまたため息ひとつ。
幸せが逃げてしまうではないか。
そう思った時。
「・・・え」
いつのまにか、ブリタニア軍の兵士に囲まれていた。
予期せぬイレギュラー
・帝都ペンドラゴン吹っ飛んでんだからシャルルの私室とかなくねー?
・ってかマリアンヌの身体無事なのかって。
そういうツッコミは無しでお願いします。
ちゃんと後でこじ付けしますから(笑)
っていうか今更なんですが、ブリタニア宮って帝都にあると思ってたんですけど。
むしろ離宮系もすべて帝都にあると思ってたんですけどどうなんですかね、違うんですか?
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拍手にて情報を頂きましたので、ちょっとだけ修正しましたー。2008/10/10