『はじまり』があるものは、必ずそれに相反する『おわり』がある。


はじまったものがおわった時、また新たな『はじまり』がある。


そうして世界は巡っていく。


ただ『おわり』は全てを失う事とほぼ同意であり、新たな『はじまり』があったところで、一度『おわり』として失ったものはもう戻らない。


己の記憶であったり、はたまた誰かとの関係性であったり。


生命における『おわり』とは、個の喪失。


個を喪失するのなら、その先に待つ『はじまり』など意味を成さない。


大切な人、大切な事。


それらを全て失った果てに、何が残るというのか。



























「ゼロ、寒いのか?」


訝しむようなルルーシュの声に、ソファーに腰かけたまままどろんでいた意識を戻して目を剥いたゼロは、ルルーシュの視線が釘付けになっている先を見やって苦笑した。

手には、黒い革の手袋を嵌めている。

それを数回握るような動作をして見せてゼロは薄く笑った。


「少しな、冷えてしまったから。」

「何か温かい飲み物でも淹れてくる。」


パタパタと、スリッパの音が遠ざかっていく。

それに小さく息を吐いて、ゼロはソファーの背もたれに背を預けた。

そしてもう一度手を見る。

まだ、大丈夫。

そう言い聞かせていると、車椅子の動く音がして、ゼロはそちらの方に意識を向けた。

ナナリーが眉を潜めている。

彼女は何も言わず近寄って、自然な動作でゼロの手を取った。


「ゼロお兄様」

「お前にそう呼んでもらえて、私は嬉しかったよ。」

「そのような言い方・・・許しませんから。」

「ナナリーには敵わないな。」

「・・・もう、隠し立てすらしてくれないんですね」

「ナナリーにはな」


苦笑したゼロに、ナナリーは何かを堪えるかのように唇を噛んだ。

小さな手が震えて、ぎゅっと強い力で握ってくる。


「お兄様は嘘を吐きます。けれどきっと・・・お兄様が一番、嘘を憎んでいます。」

「そうだな。あの子は優しい子だから。」

「だからこれからゼロお兄様が吐く嘘を、お兄様は絶対に許しません。」

「・・・そう、だな。」


わかっているよ、愛しい弟の事だから。

そう呟きながら今にも泣き出してしまいそうな妹の髪を撫でる。


「私は、悲しくはないよ。」


そう言い聞かせてみても、彼女は眉を寄せて俯くだけだった。







本当はこの25話から『第3部』にしたいくらいだったんですけど、所謂『第2部』の内容が少なすぎたので断念しました。
いよいよ終わりに向けて動き出します。
そして宣言しましょう。


ハッピーエンドにできる自信がありません!