光に包まれて目を開けるとそこにはまた見たことも無い空間が広がっていた。

たくさんの額縁に納められた写真。

現れたC.C.によく似た女性は、それを記憶だと言った。

そこでルルーシュは知る。

C.C.がまだ奴隷だった頃、出会った女性。

彼女から貰った力。

『愛されたい』と願った心。

偽りの感情に包まれて誰も信じられなくなった中に、唯一真実だった女性に裏切られた痛み。

ぐっと唇を噛み締める。

それを、紺色の拘束服を纏ったC.C.のような女性はただ黙って見つめていた。

しかしふと顔をあげ、空を見上げる。


『誰か、来た』


その瞬間ルルーシュの前に光の塊が出現し、そこから現れたのは片割れで、ルルーシュは驚きつつも駆け寄った。


「ゼロ!」

「よかった、無事だったか」

「それよりもC.C.が・・・!」

『貴方は、誰?』


彼女は首を傾げた。


『『ルルーシュ』という名の人間は、確かに『何かから守るため』という理由で此処に追いやられた。けれど貴方は違うわね。どうやってここに入ってきたのかしら。』


ゼロは応えなかった。

しかしルルーシュの肩を掴んで、急く様に言った。


「ルルーシュ、ここは『思考エレベーター』だ。」


聞きなれない言葉に、ルルーシュが顔を顰めた。


「干渉を許すな」

「どういうことだ」

「人の思考に干渉する・・・それ故思考エレベーターなんだ。実際はお前はここにいて、ここにはいない。」


強く願え、往きたい場所を。

その言葉にわけも分からず、しかし縋るような思いでルルーシュは目を閉じた。












光に包まれるような感覚に再び襲われた後、恐る恐る目を開ければ、そこは蜃気楼の機体の中だった。

人の思考に干渉する。

要するに最初から干渉を受けていて、先ほど皇帝と対峙していたことすら偽りだったのだ。

よくよく見れば、眼前ではC.C.が皇帝に身を預けていた。

奪われてたまるか、とルルーシュはスイッチを押す。

蜃気楼から無数の光線が放たれ、空間が破壊されていく。


それに顔を歪めた皇帝は先ほどC.C.がしたのと同じように空に手をかざした。

地面から生え出てきた端末を操作すると、現れた無数のブロックが蜃気楼の動きを阻み、ルルーシュは舌打ちした。

動けない。

ぐっと唇を噛んで、それから叫ぶ。


「C.C.!!!」


C.C.はその視線をルルーシュに向けない。


「お前ッ・・・ゼロにもギアスを与えたんだろう!!ゼロにも・・・ゼロにも同じように死を願ったのか!」


まともな生を得られなかったゼロにも。

口に出さなくとも、ただ内心死を願って契約を結んだのか。

ルルーシュの視線から逃れるように、C.C.は目を伏せた。

そしてただ一言。


「ゼロには、違うことを願ったよ。」


シャルルの腕の中に収まった彼女の額が輝いた。

C.C.の持つコードがシャルルへと移譲されるということは、C.C.は不老不死の生から解放される。

彼女は死ぬのだ。

あんな風に、悲しげな表情のまま。

そう思った瞬間、ルルーシュは叫んでいた。


「そうやって、死ぬのか・・・!」


C.C.は応えない。

表情を変えず、シャルルと向き合ったまま。


「そんな顔で死ぬな!!最後くらい笑って死ね!!必ず俺が笑わせてやる・・・だからまだ死ぬな!」


眩い光が周囲に満ちる。

もう視覚では捉えられなくなりそうだったその時、C.C.は両手で思い切りシャルルの身体を押しやった。

驚いたシャルルの腕から抜け出し、先ほどシャルルが触れていた柱状の操作パネルに縋りつく。

何かのボタンを押したらしく、蜃気楼を拘束していたブロックが離れていく。

自由を取り戻したルルーシュは辺りを砲撃していく。

崩れ始めた地面。

瓦礫の中、ルルーシュは精一杯C.C.に手を伸ばした。












ひんやりとした空気に身震いして、ルルーシュはゆっくりと目をあけた。

大きな石の扉の前、ルルーシュはしばし呆然としていたのだが、やがて目の前に倒れている女性に気づいて身を乗り出す。


「C.C.!おい、しっかりしろC.C.!」


硬く目を閉じたC.C.の肩を掴んでガクガクと揺らす。

女性にこれはないだろうと普通は思うだろうが今はそんな事を気にしている余裕はルルーシュにはなかった。

暫く声をかけ続けているとようやくC.C.の閉じられていた瞼がふるりと揺れた。

垣間見えるのは黄金の瞳。

安堵の息を吐いてルルーシュは目元を緩めた。


「よかった・・・C.C.、助かったんだ。早く戻って・・・」

「い、や・・・」

「C.C.?」

「ひっ、いやああああ!!!!」


C.C.に触れようと伸ばした手が静止する。

ルルーシュの手から逃れようとせんばかりにC.C.は自らの両腕で身を守ろうと構えた。

目を剥いたルルーシュの耳に届いたのは、普段とは全く別物の雰囲気の声。


「C.・・・C.・・・」

「あッ・・・あ、あたらしいご主人様で、すか・・・?出来るのは料理の下ごしらえと掃除、水汲みと牛と羊の世話、裁縫、文字は少しなら読めます・・・数は20まで・・・あ、あと死体の片付けも・・・!」


これは何の罰だ、とルルーシュは呟いた。


彼女は、真の願いごと、記憶を失ってしまっていた。






やばい、ホントに本編見なきゃわかんないwww
でも見る勇気がないwww