力無く椅子に座って四肢を投げ出したルルーシュと、ナナリーとロロ。

それらとゼロが、向かい合って椅子に腰掛けている。

ルルーシュの手の上には銃があって、何かあればロロのギアスで時間を止め、それで心臓を撃ちぬけとゼロが握らせたものだ。

あの惨劇の後こうして向き合っていられること自体信じられないような状況だ、ルルーシュを殺す気はないという意思の表れとして用意した。

暫くの沈黙の後ゼロは重く口を開いた。


「私は一度死した存在だ。しかし意識だけは生きて、ルルーシュの中にあった。これは嘘ではないし、V.V.に実体を与えられたのも嘘ではない。ただ・・・。」


そこで一度言葉を切る。

一度深呼吸をした後、意を決したようにゼロはルルーシュを見据えた。


「V.V.が私を創ったのは、私にルルーシュを・・・殺させるためだ。」


ルルーシュの瞳が揺れる。

震えた手をナナリーとロロが両側から片手ずつとる。

銃を持ったほうの手にはナナリーが手を添えていて、引き金を引けないように、しかし決して取り落としてしまわないようにしっかりと包み込んでいる。


「V.V.はルルーシュの本質をよく理解していた。大切だと思った者相手には弱くなる。だから最初V.V.はお前の弱点は枢木スザクだと考え、アイツにゼロの正体を教えて憎しみを増幅させることでルルーシュを殺させようとした。しかし枢木にもルルーシュは殺せなかった。お前がアイツに弱いように、アイツもお前に弱かったから。」


それはV.V.にとってもイレギュラーだった。

主を殺されたスザクは怒りと憎しみで我を忘れ、ルルーシュを殺してくれるものだとV.V.は考えていたのだ。

しかしそれは成されなかった。

スザクは神根島で対峙したルルーシュを殺すことなく、捕らえてしまったが為に、ルルーシュはブリタニア皇帝により記憶を書き換えられて何事も無く日常へと戻ってしまった。

だからこそV.V.は次なる策としてルルーシュの中に眠るモノに目をつけたのだ。

双子の兄弟ならばルルーシュの警戒は弱まる。

そこを殺せと、そう命じられた上で『ゼロ』は創られた。


「私は・・・V.V.に利用さようと思った。身体を与えられて・・・ルルーシュに会うことが出来るならそれでもいいと。勿論実体を得てもルルーシュを殺す気など無かった。私も、あれを利用しようと思っていただけだからだ。」


実体さえ手に入れてしまえばこっちのもの。

そう考えたゼロは早々にルルーシュを殺しにいくと偽って彼の元を離れ、C.C.と接触した。

彼女と共謀し、記憶を弄られてしまったルルーシュを目覚めさせ、共に『ゼロ』として行動するようになった。

それによってV.V.の駒がまた1つ機能しなくなったのだ。

それに苛立って、恐らくV.V.はシャーリーを殺してルルーシュを内からも壊そうと考えたのだろう。

憶測ではあるが、と断りを入れて一度言葉を区切ったゼロが、静かに移動してナナリーの手を取った。


「私はルルーシュを愛しているし、ロロやナナリーを愛している。裏切る気は無い。」


信じてくれ、と請えばそれに応えるようにナナリーはその手を握り返した。

それが嘘ではないとナナリーが分かってくれたことに一先ずの安堵の息を吐いて、ルルーシュの前に膝をついた。

ただじっと、ルルーシュはゼロを見ている。

戸惑いを含んだその紫と、信じてくれと願う深紅が交わる。


「もう、私は信じられないか?」


ルルーシュの瞳が揺れた。


「ぜ・・・ろ・・・」

「なんだ?」

「ど、して・・・シャーリーは・・・死ななくては、いけなかったんだ?」


何の関係も無いのに。

そう言ったルルーシュの目から涙が零れる。


「ど、して・・・V.V.は・・・俺を、そんなに・・・」

「それは・・・私にも分からない。ただアレはお前を・・・私達の事を『呪われた皇子』だ、と・・・。」


『呪われた皇子』

呪われた存在。

暗に、生まれてこなければ良かったのにと言われているようなものだ。

ルルーシュは唇をかみ締めた後静かに立ち上がった。

ナナリーとロロが心配そうに兄の背中を見つめる。


「お兄様、どちらへ?」

「ロロ」

「な、に・・・?」

「嚮団の場所を教えろ」


ロロが息を呑んだ。

ギアス嚮団。

恐らく現在V.V.が身を置いているであろう場所。


「嚮団を、潰す。」


その決意と憎悪に満ちた表情を黙って見つめていたゼロはその日、クラブハウスを出ていった。







散々先延ばしにしていたのに短くてすいません・・・!
っていうかこの連載いつまで続くんでしょーかwww


2011/10 加筆修正