クラブハウスに、ルルーシュはゼロと二人で帰ってきた。
秘密情報局の監視を気にすることはもう無い。
『アッシュフォード学園のクラブハウスにいるのはルルーシュとその双子の兄であるゼロ、弟のロロのみ』。
そういう認識をギアスによって刷り込まれているため、ゼロが大手を振って部屋に居座っても、秘密情報局の面々はそれが当たり前だと思い込んでいる。
ゼロのギアスはルルーシュのそれと本質は同じであったが、制約などを考慮すればルルーシュのよりも格段に優れていた。
一人につき一回という制約はなく、掛けたギアスはゼロの意思で解くことが出来る。
掛けられたギアスが発動中に新たなギアスは掛けることができないが、一度解除してからまた掛けなおすことは可能。
制約どころかコントロールすら利かなくなっているルルーシュのギアスでは不安が残るし、スザクの復学に加えて彼の同僚であるラウンズの数名が学園に来ていたことも気がかりだと、ゼロはルルーシュと共にクラブハウスに住むことを望んだのだ。
「よく、仮面を被れたな。」
頭を撫でてやると、ルルーシュは照れたように顔を背けた。
俺だって、ゼロだ。
そう呟きながらベッドに腰掛けたルルーシュと同じく、ゼロもそこに腰掛ける。
「恐らく枢木は私について調べるだろう。しかし独自で・・・だ。」
「そうだろうな。恐らく今俺について何かを報告すれば、その時点でナナリーは・・・。」
少しの懸念も疑念も許されない状況下で謎の『双子の兄』が現れたとなれば。
「大丈夫だ」
そんな声が聞こえた後ふわりと背後からルルーシュの身体が包み込まれた。
自分と同じ匂いに包まれて、ルルーシュは身を任せれば溶け込んでしまいそうな錯覚に陥る。
ふふっと、笑う声がして、ルルーシュは視線だけを動かした。
「ゼロ?」
「いや、すまない。随分気を許してくれたと思ってな。」
嬉しそうにゼロは言う。
少し眠たそうな、とろんとした目のルルーシュは少し気恥ずかしそうに頬を染めた。
ゼロは微笑んで、ルルーシュを抱きしめたまま背を倒す。
ベッドの、やわらかい感触。
「少し眠れ。」
「この体勢でか?」
「嫌か?」
「・・・ゼロが苦しくないなら。」
しかしやはり全身をゼロの上に乗せたままでは申し訳ない気がして、身体を横にずらす。
ゼロが残念そうに笑うから、ルルーシュはゼロの胸の辺りにしがみ付いた。
規則正しい、心臓の音。
ルルーシュの背中をゼロが、まるで母親が赤子にするように一定のリズムでぽんぽんと叩くと、ルルーシュはすぅっと眠りに落ちた
「私の・・・ルル・・・。」
また、心を痛めている。
枢木スザク。
その名前を思い浮かべるだけで、思考がどんどん黒に染まっていく。
ルルーシュは、まだどこかでスザクを想っていた。
それが友情なのか愛情なのかは定かではないけれど、きっとまだ切り捨てられない。
だから。
「私が・・・守るよ。」
お前の心を。
その呟きでルルーシュが目を覚ますことはなかった。
ルルーシュがここまでゼロにべったりなのは、ある意味伏線です。
いや、大した伏線じゃないんですけど。
2011/10 加筆修正