「僕のランスロットぉ〜〜!!無事でよかったぁああ!」
トレーラーで乗り付けてきたロイドとセシルは到着するなりエナジーフィラーの充電を始めた。
ロイドはただただ愛機の無事を喜んでいたが、セシルはまず皇女であるルルーシュが無事だということに安堵していた。
塔が燃えているのを目撃し、スザクをまだ開発途中のフロートユニットで送り出してからというもの、不安で気が気ではなかったのだ。
衣服に多少の汚れがあっても大きな怪我が無いということは分かったから、それが何よりだったとセシルは笑う。
「お初にお目にかかります、ルルーシュ殿下。セシル・クルーミーと申します。」
「あ、ああ・・・救援を感謝する。」
「勿体ないお言葉ですわ。」
スザクの話を聞いていたセシルは、初めて見るルルーシュの姿に感嘆にも似た息を吐いた。
黒のドレスは多少煤で汚れていたが、そこから除く肌は真っ白。
髪は毛先の疎らさが少々気になるものではあったが濡羽のような黒。
双眸はまるでアメジストをはめ込んだようだと。
何より雰囲気の気高さが、彼女が紛れもなく皇女であることを表現していた。
「スザクくーん、殿下は私たちがトレーラーでお連れするから、貴方はランスロットで周辺の安全確認をお願い!」
「イエス・マイロード」
そんな抑揚も何も無い声が返ってきて、セシルは少し首を傾げた。
ルルーシュは少し震え上がって、そして俯く。
まだ、彼はあのままだ。
どこまでも冷たい、身を貫くような鋭さ。
動揺を隠しきれない様子で震える目を見て、セシルは少し深めに息をついてから切り出した。
「つかぬ事をお聞きしますが・・・スザク君と何かありました?」
「・・・何故?」
「スザク君、随分と鍍金が剥がれているようだから。」
鍍金、メッキ。
セシルは悪びれた様子も無くそう言った。
ルルーシュは思わず目を剥いてセシルを凝視する。
「スザク君って、すごく自分を押さえ込んでいるんです。いつもニコニコしているでしょう?それはもう胡散臭いくらい・・・って嫌だ私ったら、殿下の前で・・・」
「いい、続けてくれ。」
怪訝そうに眉を顰めたのが分かったが、それでもルルーシュはその先を促した。
知っておかなければならない。
知らなければいけない。
彼の本質を。
そう思った。
「本当は・・・すごく激しい感情を抱いているのに、それを周囲に悟られないように、片鱗も漏らさないようにいつも笑っているんです。鍍金を保てなくなったり、我を忘れたときには一人称が『俺』になったり、声に殺気が篭ったり。」
「そう、なのか・・・」
「それが今、ちょっと殺気立っていたモノだったので・・・殺気立つって言っても勿論誰かに危害を加えるようなことはしないですけれど・・・」
トレーラーが動き出す。
森の中を突き進むものだから、事あるごとにトレーラーが上下に揺れた。
しかしそんなことを気にする余裕はルルーシュには無くて。
セシルが傍を離れた後、ルルーシュは震える手で自分の唇に触れた。
ここに、彼が触れたのだと。
そう思うと、色々な感情が混ざり合って混乱して、涙が出そうになった。
何かが燃えたような臭いと、切羽詰った人々の声。
負った怪我の痛みに苦しみ呻く声。
まるで地獄絵図のような現実に目を細めていたルルーシュを現実に引き戻したのは、重苦しい雰囲気。
「枢木スザク。貴殿の命令違反によって多くの犠牲が出た。よって貴殿を軍法会議にかけるものとし、それまでの幽閉を命ずる。」
ブリタニア宮に戻ったスザクとルルーシュに向けられたのはよくぞご無事で、なんてものではなく、そんな信じられないような言葉で。
呆気に取られて立ち尽くしたルルーシュの目の前で、スザクは軍人らに絞め上げられた。
ルルーシュの口から洩れたなんで、という呟きが、スザクを連行する軍人の足音で掻き消えた。
ここらからちょっとバタバタしますが、まぁ王道っちゃ王道の展開ですよね。
なんのことはないさ、きっとw←