「とにかく騎士はやめろ。」




起き抜け一発。


第一声はそれだった。


スザクは面食らって、えーっと・・・と悩みながらグラスに水を注いだ。



「今ならまだ元いた部隊に戻れる。任命式どころか略式の儀式すら行っていないのだから。」



三時間ほど眠ったルルーシュだったが、やはり意見は変わらないようだ。


ルルーシュはスザクをギッと睨み付け、いかにも早く出て行けといわんばかりの表情だ。


彼女が眠っている間に、彼女の寝顔を見ながら色々考えたスザクは、結論を纏める。


不敬になるかもしれない。


しかし彼女が意見を変える気が無いように、自分もそうなのだ。



「恐れながら・・・姫様は、自分の行く末を案じてくださっているのでしょうか。」

「私の為に人生を棒に振るな、と言っている。」

「その・・・誠に恐れながら・・・」

「許す。言え。」

「自分の道は自分で切り開きます。自分の未来は自分で護ります。勿論それは姫様のついで、なのですが。」



ジャラっと鎖がぶつかる音がした。


ルルーシュが起き上がって、そのベッドの揺れでベッドの上に纏めておいた鎖の束が下に落ちる。


その鎖を、彼女の足首に刺激を与えないように再び纏めて、スザクは苦笑した。


ベッドの前に跪いて、ルルーシュを下から見上げる。


ルルーシュの瞳がふるりと震えた。



「不敬によって騎士解任を申されるのであれば諦めます。しかし、ご自身に価値が無いから・・・という理由での解任には納得できません。」

「・・・貴様ッ・・・!」

「失礼。」



ずいっとスザクが身を乗り出す。


小さく声を上げたルルーシュが身を引いて、その距離すらスザクはあっという間に詰めてしまった。


小さなビー玉のようなモノをルルーシュの口に押し当てて、そのまま唇の間を割るように押し込んだ。


慌てて吐き出そうとしたルルーシュは、やがて首を傾げる。



「・・・甘い。」

「甘いものはお嫌いですか?」

「いや・・・」

「のど飴です。大分声が嗄れていらっしゃるようですので。」



柑橘系の、すっきりとした甘味。


一度口に入れてしまったものを吐き出すのは憚られるし、何よりも今口から出せばそのまま目の前の男が手で受け止めてしまいそうで。


半ば意地もあってルルーシュは大人しくその飴を口の中で転がした。


少しそうしているだけでも喉の痛みがどんどん引いていく。


横目でチラリと彼を見遣れば、彼はにこにこと笑っている。



「胡散臭い」


「・・・は?」


「お前フェミニストとか言われたことないか。」


「いえ・・・自分の把握している限りでは・・・」



それにルルーシュは何も答えなかった。


もう一度ベッドに身を沈めてブランケットを深く被る。


スザクはその様子にゆっくりと息を吐いて、紅茶でも淹れようかと思いつき立ち上がる。


踵を返したスザクの耳に、声が届いた。



「姫様は、やめろ」

「え?」



ベッドに顔を埋めたまま、細々とした声が響く。



「・・・ガラ、じゃない。」



ギルフォードが自分の主をそう呼んでいたから、そういうものなのだろうとスザクは思っていたのだが。


苦笑して、スザクはイエス・ユアハイネスと礼をする。



ブランケットの中でルルーシュはシーツを硬く握り締め、スザクが立てる食器の音を黙って聞いていた。









途中で設定を変えて書き直したので、色々辻褄が合わなくなるかもしれませんorz
ここらへんのスザクが一番うそ臭いw