注:ルル子です





授業中の居眠りは得意ではあったが、好きかといわれればそうではない。
教師にばれないようにするには常に意識を浅いところに置いておかなければならないし、船をこいではいけないから背筋もある程度の所で保たなければならない。
正直なところ億劫だ。
しかし眠い時には仕方ないのでばれない様に居眠りをした。
ただ本当に眠くて、もうどうしようもない時は保健室へと駆け込む。
生まれつきの肌の白さが、血色が良くないように見えるのだろう。
体調が優れないと訴えればベッドは簡単に解放された。
眠い。
とにかく眠い。
朦朧とする意識の中、いつものように空きベッドを確保したルルーシュは、倒れこむように消毒液の臭いが染みた白のシーツに身を投げた。
やはり先が気になるからと読みかけの本を終わりまで読んでしまおうと思ったのが間違いだったのだ。
こんな日は教室で転寝をしようものなら絶対見つかる。
ベッドに限る、ベッド大好き。
嗚呼駄目だ本当に限界だと、いよいよ思考が纏まらなくなってブランケットを引き上げる余裕すら失った状態で重石を乗せられたかのような瞼を下ろす。
そんなルルーシュの状態を見て、本当に具合が悪いのだと勘違いした保険医がカーテンの隙間から滑り込んできて、ブランケットを引き上げてくれた。
優しげな女性だ。
私はこれから出かけなくちゃならないけれど、貴方は大人しく寝ているのよ。
降ってきた柔らかい言葉に生返事をして、ルルーシュは夢の世界へと旅立たんと意識を手放した。




どれくらいの間そうしていただろう。
何かの物音で、ルルーシュは深く沈んでいた意識を少しだけ浮上させた。
駄目だ、まだ眠い。
朦朧とする意識でそう決めて、もう一度深い眠りに付こうと意識を沈めようとする。
ただそうした時、ルルーシュはやっと自分の置かれた状況を理解した。
手が、というか腕が動かない。
何故?という疑問は徐々にピントが合ってきた己の視覚で解決する。
縛られているのだ。
何で?
制服についていたはずの緑色のネクタイで。
どこに?
恐らく保健室の(記憶が正しければあまりの睡魔に保健室に飛び込んだはずだ)、無機質な色合いのベッドの、パイプの柵に。
その状況に覚醒を余儀なくされたルルーシュはやっと、そこで面白そうに顔を歪めている男の存在に気がついた。
「スザ、ク?」
「おはようルルーシュ、よく眠れた?」
いっそ胡散臭いまでの微笑だ。
瞠目して、ルルーシュは身を捩ったが、拘束は解けそうに無い。
「スザク、これ、お前の仕業か?」
「これってどれ?」
「見れば分かるだろう。」
手を少し動かすと、ギシ・・・と何かが軋む音がする。
何故かそれにスザクは嘆息した。
「嗚呼、何だ、そっちか。」
「そっちか・・・て、他に何がある。」
「いや、こっちかなって。」
「・・・ほぁああ!?」
ぴらり。
そんな効果音がよく似合う。
スザクの人差し指と親指が摘み上げていたのは、黒の、ふんだんにレースがあしらわれた、一番のお気に入りの。
「ルルーシュこれ勝負下着?それとも普段からこんなえっちなの穿いてるの?」
「なッ、んで・・・!」
「話せば長くなるけど、聞きたい?」
聞きたくなどない。
でも聞かなければならないのかもしれない。
そんな視線に促されて口を開いたスザク曰く。
1. 行方不明のルルーシュを保健室で発見。
2. 目が覚める様子が無い。
3. 暇。
4. そうだ、暇つぶしに縛ってみよう。
5. ついでにパンツ剥いてみよう。
「ちょっと待て。4番から明らかにおかしいぞ。」
「え、何処が?」
「全てだ馬鹿が。」
しかも全然長い話じゃないし。
いいから悪ふざけはもうやめてこれを解けと苛々しながら言ったルルーシュの上に、何故かスザクは覆いかぶさってきた。
覆いかぶさる意味がルルーシュには理解できない。
覆いかぶさらなくたって解けるだろ。
ニヤリと笑っているスザクに背筋が凍りそうになりながら、ルルーシュは呻いた。
「・・・スザク」
「うん?」
「何をしてるんだ」
「言葉にして欲しいの?もしかして今日言葉攻めな気分?」
「そ、そうじゃないっ・・・!私の拘束を解けと言っているのに覆い被さる必要は無いだろう!」
横から回れ横から!
語気を荒げたルルーシュに、スザクは悪びれた様子も無く首をコテンと傾けた。
浮かべたままの眩しい位の笑顔が憎たらしい。
そうしてスザクはのたまった。
「まさか態々君を縛ってパンツまで剥いたのに、そのパンツを頭に被って小躍りするだけで終わるはずないじゃないか。」
「したのか!?」
「してないけど。」
思わずほっと肩を撫で下ろしてしまった。






ミクシィ再録。
途中から何がしたいのかわからなくなったんだぜ。