もうゼロレクとか年齢とか色々おかしいですけど今更なんでつっこまないであげてください・・・!
「宅配便で〜す」
そんな声と共に舞い込んできたのは、大きなダンボール。
腰のあたりまでくる高さのその箱をじっと見つめ、ルルーシュは首を傾げた。
こんな大きな荷物になるようなものを頼んだ覚えはない。
加えて、段ボールには『ナマモノ注意!!』と書かれた赤いシールが目立つように張られている。
この大きさで、ナマモノ。
いかにも怪しい。
よし、放っておこうと、ルルーシュは決意した。
もしかしたら配達先を間違えたのかもしれない(送り状にクラブハウスの住所がしっかりと記載されているのは見ないフリをした)。
幸い12月に突入したこともあってエントランスはそれなりに肌寒いから、ナマモノを置いておいてもすぐに腐りはしないだろう。
それにもし送り先が自分ではなくナナリーや咲世子に届いたものであったなら、勝手に開けるのはよろしくない(送り状に「ルルーシュ・ランペルージ」としっかり記載されているのも見ないフリをした)。
放置が一番安全で平和的だと結論付けてルルーシュは自室に戻った。
ナナリーと咲世子は二人で買い物に出かけてしまったから、室内にいるのは自分一人。
株の値動きをチェックしたり、つけていたテレビに映った憎い皇帝向かってチャンネルを投げそうになるのを必死に堪えたり。
そうこうしている間に昼が過ぎ、日も暮れ始めた頃。
ふとエントランスで物音がした。
ナナリー達が帰ってきたのだろうと、出迎える為に立ちあがって歩き出す。
そしてエントランスにたどり着いたルルーシュが見たものは、ナナリーではなかった。
ガコッと、音を立てて動く、段ボール。
茫然とルルーシュが見つめる中、段ボールは少しずつ動き、立ちつくしたルルーシュへの距離をどんどん詰めていく。
ルルーシュの目前までそれが迫った時、ちょうど出かけていたナナリーと咲世子が帰ってきた。
じりじりと動きながらルルーシュに迫る箱を見て、咲世子はほほ笑んだ。
「ルルーシュ様、曲者ですか?」
「え、あ、いや・・・」
朝届いた荷物が急に動き出したんだ、と言うのも変な話だろうかと迷いあぐねている内に、咲世子はメイド服の中に隠したクナイを引き抜き目にも止まらぬ速さで駆けだした。
鋭い切っ先が段ボールを切り裂く。
中に入っていたモノを視認して、咲世子は首を傾げた。
「スーさん?」
身を竦めたルルーシュが見たのは、顔を青くしている親友、スザクだった。
「・・・何をやっているんだお前は。」
「何って・・・せっかくルルーシュを驚かせようと思ったのに君は箱開けてくれないし。」
「あんな見るからに怪しいものをそう簡単に開けるか。」
それで何か用なのかとルルーシュが怪訝そうに問いかければ、スザクは自分の足元・・・要するに自分が入っていた箱の中を漁り、瓶状のものをつかんで持ち上げて見せた。
「君の誕生日を祝おうと思って。」
手に持ったビールやワイン、シャンパンなどのアルコール類にルルーシュは目を丸くした。
クラブハウスにはミレイやリヴァル、シャーリー、ニーナといった生徒会メンバーも集まってきた。
各々が持ち寄った菓子やルルーシュと咲世子が即席で作った料理を肴に、穏やかなムードで時は流れていく。
一通りの賄を終えて一息ついたルルーシュの前にはスザクが陣取った。
手には酒瓶。
「折角20才になったんだから、飲まないと。」
「それは日本での決まり事だろうが。」
「郷に入っては郷に従えって言葉が日本にはあるんだよ。」
そう言って、スザクはグラスにシャンパンを注いだ。
黄金色でグラスが満たされ、炭酸の気泡が浮き上がっていく様が幻想的なようにも感じる。
じっとそれを見た後、ルルーシュは口をつけて少しだけ飲んだ。
「控え目だなぁ。」
「・・・何か問題があるのか?」
「ないけどさ。僕今日は君を潰そうと思ってここにきてるから。」
ニコリと笑ったスザクに、ルルーシュはグラスを取り落としそうになった。
何故、誕生日だから祝いに来たという男に、酒で潰されなければならないのだろう。
そう思っている間にもスザクはどんどんグラスに酒を注いでいって。
またそれにちろちろと口を付けながら、ルルーシュは目の前で酒を煽る男を見る。
勢いよく飲みほしていくスザクの周りには空になった瓶が次々と増えていく。
「スザクはかなり飲む方なのか?」
「僕結構強い方だと思うよ。」
「俺は多分そんなに強くない。だから酒はもういい。」
「・・・酔い潰れてナナリーの前で醜態を晒すのが怖いの?」
酒も入ったことで挑発的なスザクに、ルルーシュもカチンときた。
普段ならこんなくだらないことで争うなど・・・と一歩下がるルルーシュではあるが、今日はスザクと同じく酒が入っている。
ついその挑発に乗ってしまい、グラスをひっつかんで一気に煽った。
「中々やるね。」
ほほ笑みながら、スザクはまた次のシャンパンを開けた。
「先に潰れた方が負けだよ。」
「いいだろう、受けて立ってやる。」
何故そこで勝ち負けがでてくるのか。
そんなことをつっこむような者は、この無礼講状態の空間には存在しなかった。
一時間後。
部屋の中には無数の屍が転がっている。
その中でただ一人、ルルーシュだけが途方に暮れたように座り込んでいた。
意味もなく始まった勝負に、いつの間にか全員が参戦し。
結局ほぼ全員が潰れてしまったのだ。
相当の量を飲んだと自負しているルルーシュではあるが潰れるまでではない。
眠りこけた面々を一瞥し、深くため息をついた。
別の部屋から毛布やらなにやらを引っ張り出し、一人ひとりにかけて回る。
その時、誰かに足首を掴まれて盛大にバランスを崩した。
まずい、と思った時にはその誰かの上に倒れこんでしまっていた。
焦って身を起こせば、そこにいるのはスザクで。
一先ず女性陣ではないことに安堵する。
「おいスザク、起きろ。手を離せ。」
しかし寝ぼけているのかスザクはニヤッと笑ったのち身体を反転してルルーシュを押し倒すような体勢になる。
「るる〜しゅぅ〜・・・」
「スザク、いい加減に・・・」
「そんなに飲めるなんてぇ、聞いてない〜」
「俺だって知らなかったさ。・・・ただよくよく思い返してみれば、俺の母は酒豪だった。」
ワインやシャンパンを始め、各国の地酒etcを根こそぎ集め、つまみにケーキを1ホール完食しながらも平静を保っていた母は、大人になって初めて恐ろしいと思える。
流石に自らつまみにケーキを食べようという考えには至らなかったものの、彼女の血が通っている事を思えば酒には強いかもしれない。
こういう席で酔えなかった者は介抱等の面倒くさい役割を一身に背負わなければいけないから厄介だ。
「そのまま寝るなよ。目が覚めてるなら客室のベッドを貸してやるからそこまで歩け。」
「やー・・・」
「やー、じゃない。子供かお前は。」
いいから離れろと重ねて言い聞かせて、スザクの身体を押しやろうとする。
しかしそれが叶わないのは果たして、彼の力が強すぎるせいか、己が非力すぎるせいか。
後者だったら嫌だなぁと状況に似合わずぼんやりと思ってしまう。
「スーザークー、いいから早く・・・」
「やだ」
「スザク」
「ずっと、このままがいい」
「・・・スザク?」
「離れたく、ない・・・これから先も・・・君、を・・・」
そこまで言われて、ドクリと心臓が脈打った。
しかし次の瞬間鼓膜を震わせたのは静かな寝息で。
目を瞬かせたルルーシュは小さく息をついて、せめてと言わんばかりに精一杯の力を込めて上に圧し掛かっていた身体を横に転がした。
床に落とされた衝撃で解放されるかとも思ったが、期待に反してその腕はきつく己の身体に回されたままで。
諦めたようにその身体に手を回して、むずがる子供にしてやるように背をぽんぽんと叩いてやる。
暖かい温もりが心地よくて、苦笑しながらルルーシュもそのまま眠りについた。
っていうのを書いてたんですがずっと忘れてまして。
そういえばスザクさんの誕生日が近いからと思ってアップしてみました。
だ、だってせっかく急いでスザ誕書いたのにルル誕アップしないままでアップできないじゃん・・・!