身体の震えが止まらない。寒いのか、恐いのかは分からないが、とにかく止まらない。

胸の内に渦巻く感情が気持ち悪くて吐き気がする。

眩暈がして、耳鳴りがして、目の前が暗くなって、息が苦しくなる。

どうしてこんな状態になるのかは分からない。

そして、自分自身が『誰』なのかも分からなかった。

「スザク、寒いのか?」

『スザク』というのは誰なのだろう。

分からない。気持ちが悪い。

「顔色が悪いな」

心配そうに頬に触れてくる彼が誰なのかは分からない。

ただ、彼に触れられると、酷く気持ちよくて。

少し冷たく、やわらかく、白いその手が唯一己の存在を確立してくれる。

「おいで、スザク」

そう呼ばれるがままに、迎え入れようと広げられた腕の中に身体を預ける。

ふわりと包み込まれる感覚がまた心地よくて、自然と身体の震えが小さくなっていく。

でも彼の体温や、鼓動や、息遣いや、肌の感触に身を任せているうちに、今度は別の感情が沸きあがってくる。

身体が熱い。

別の意味で身体が震えて、それに気付いた彼が困ったような顔をして。

「仕方の無い奴だな」

そう笑って、強く抱きしめてくれる。

丁度彼の肩のあたりに顔を埋めることになって、目に付いた首筋の痣にいつのまにか舌を這わせていた。

鳥が羽ばたいたような形の痣だった。

舌でなぞると、彼はピクリと身体を強張らせて、甘くぐもった声を漏らす。

身体の芯の方で、何かが一層疼いた。

「きみ、は・・・だれ」

こんなに心が惹かれているのに、彼が誰だか分からない。

問いかけてみれば、彼は涙で潤んだ瞳で微笑んだ。


「・・・俺はL.L.。世界を壊した魔王の、その残りかすだよ。」










ボツ理由:何がしたいのかわからなかった←
裏が書きたかったのかなぁ…(遠い目