目が覚める。


身体が重い。


じっとりと汗ばんだ肌。


その汗を吸収し纏わりつく寝巻はまるで拘束具。


自由を奪われ、尚も体温すら奪っていく。


吐き気がして、めまいがして。


鉛のように重い身体を起こして立ち上がったスザクは、手の甲で額の汗を乱雑にぬぐった。


どこからどこまでが夢だったのか。






離ればなれになって。


再会して。


同じ学校に通って。


裏切られて。


憎んで。


心を売って。


卑劣な手を使って。


また憎んで。


裏切って。


話し合って。


手をつないで。


そして殺した。






きっと全てが夢だ。


そうに決まっている。


夢に出てきた自分も、彼も、彼女も。


皆『今』よりも大人になっていたから。





全部全部全部全部。


全部夢。




そう言い聞かせてもどこか信用できなくて、スザクは走り出した。

カーディガンを羽織った母親が顔を覗かせて、怪訝そうに見つめてくる。


「こんな時間にどこへ行くの?」


答えている余裕はなかった。


ただ走る。


廊下をひたすらに走る。


襖の障子から光が覗いているのは父親の部屋だ。


走る。


遠くで母親の呼ぶ声がする。


やはり答えている余裕はなかった。


広い家の中を走って、靴もはかずに外へ飛び出した。


ひやりとした外気が汗にふれて、急速に身体が冷える。


身震いしながらやっぱり走った。


向かうのは敷地内の片隅にある、蔵。


木製の扉にかかっている錠前を外そうとする手が震えて、錠前がガチャガチャと派手な音を立てる。





早く。


早く早く。





焦るごとに手が震えて、うまくいかない。


やっとの思いで扉を開けると、その扉の向こう側に彼が立っていた。


「なんだ、スザクか。どうしたんだい、こんな時間に。」


ルルーシュは驚いた様子で立っていた。


手には自分がかけていたらしい毛布を持っている。


部屋の奥、小さな?燭に照らされた場所では彼の妹のナナリーが。


やっぱり。


やっぱり夢だった。


彼らはここにいる。



「ルルーシュ・・・ルルーシュ・・・」


「僕がどうかしたのか?」


「ルルーシュがここにいる・・・ナナリーも、僕も・・・」


「・・・スザク、君いつから自分のことを『僕』って言うようになったの?」



困ったように眉を寄せるルルーシュが、温かくて。



冷たくないことに安心して、同時に冷たくなった自分の身体の冷たさに恐怖した。










ボツ理由:あまりにも暗くて病んでたから。
この小説から派生して、過去拍手お礼の「そして、世界が廻る」「愛してる、愛してた」が生まれました。
まぁこれは逆行でも何でもなくてただの夢オチで、未来に起こる出来事をうっかり夢に見てしまった子スザクです。