「『赦せない』んじゃないよ。『赦したくない』だけ。」


頭を鈍器で殴られたような衝撃。

そう言ってくれた彼女がまるで女神のように見える。

ああ、自分は馬鹿だった。



ごめん、ユフィ。


僕は愛に生きるよ!
















「忠節はまだ終わっていないはずだ。」

「イエス・・・イエス、ユアマジェスティ!!」


涙を流すジェレミアを立たせてからルルーシュは周囲をぐるりと見回す。

混乱は続き、人々の悲鳴が聞こえる。

シャーリーはスザクと共にいるだろうから安心だろう。


「ジェレミア卿、行くぞ。」

「殿下の進む道・・・このジェレミア、どこまでもついて行きます。」


駅のホームを出て階段を駆け下りる。

瓦礫の山はルルーシュのなけなしの体力を見事に奪っていく。

肩で息をしながら奔っていると、視界に映ったのは3人の人影だった。


「ロロ、貴方はルルの味方?」


シャーリーとロロが向かい合っている。

シャーリーの傍らにはスザク。

身構えたロロを見たとき、ルルーシュは咄嗟に叫んでいた。


「ジェレミア!」

「イエス、ユアマジェスティ!!」


ロロのギアスが発動する。

しかしそれと時を同じくしてルルーシュに名を呼ばれたジェレミアの左目が奇妙に動いた。

ギアスキャンセラー。

ロロのギアスは解除され、時は一瞬停止しただけで終わった。

信じられないという様子で周囲を見回したロロがルルーシュを捉える。


「兄さ・・・」

「あ、ルル!」


シャーリーが笑顔で手を振ってくる。

ルルーシュはそっと息を吐いた。

そのまま歩みを進めてロロに近づくと、ロロの両頬を手で挟みこむ。

パンッと乾いた音が響いた。

軽く叩いたその動作にロロが目を白黒させる。


「こんな危ないところでなにをやってるんだ。」

「ごめん・・・なさい。」

「もう『そういうこと』はするなって教えただろう?」


小さくごめんなさい・・・と呟いたロロを後ろに下がらせて、深呼吸してからシャーリーとスザクに向き直る。


「シャーリー、無事でよかった。まぁスザクがいてくれれば安心か。」

「ルルも無事でよかった。その後ろの人は?」


内心ギクリとして、それでもそれを表面に出すことなく。

代わりに笑顔を浮かべた。


「逃げる途中で会って。一緒に逃げている最中だったんだ。」


何も知らないシャーリーはすぐに納得した。

しかしその後方で驚愕に顔を歪めているのはスザクだ。


「ジェレミア・・・卿・・・」

「ほぅ、枢木スザクか。」


しまった。

・・・という顔を今度は前面に押し出してしまった。

イレギュラーに弱い頭脳を忌々しく思いながらもなんとか笑顔を取り繕って、ルルーシュはシャーリーの手を取った。


「と、とりあえずこの場から早く避難しよう。スザク、お前現場指揮とか取れないのか?」

「え、ああ・・・うん、取れる・・・けど。」


スザクは語尾を濁した。

嫌な予感をしつつもこの場を離れたくて、ルルーシュは冷や汗をかく。


「ルルーシュ」

「ほわぁあ!?」


またもしまった・・・という顔をしたルルーシュの心臓はバクバクだ。

振り返った先にはスザクがいて。

そして神妙な顔をしたかと思ったらいきなり地に足をつけ、手もついて。

さらには額を地につけ。



日本の謝罪スタイル、土下座。



「ごめん!」

「は?」

「シャーリーに言われたんだ!僕は『赦したくない』だけなんだって!」


何を、とは言わない。

ルルーシュも、スザクも。

ロロもジェレミアも口をぽかんと開いて、ただシャーリーだけが満足そうに微笑んでいた。


「僕は心を入れ替える!だから君の傍に」

「断る。」


涙目で見上げるスザク。

嘲笑うかのように見下したルルーシュ。


「お前、どの面下げて俺に赦しを請う?」

「いや・・・この面だけど。」

「俺をブリタニア皇帝に売ったその分際で。」

「ごめん!あの時僕はおかしかったんだ!・・・そう、きっと何か悪いモノにとり憑かれてたんだよ!」

「俺はユフィを殺した。」

「だから僕は赦す!だから君も・・・」

「断る。その代わり俺もお前に赦しは請わない。」


最早ゼロだとかナイトオブラウンズだとか。

元皇族だとか元皇女の騎士だとか。

そんな秘密や人間関係はどうでもよくなっている。

スザク・・・犬みたい。

そう呟いたシャーリーの言葉は当の二人の耳には入らない。


「こんなにも僕は君の事を愛しているのに!」

「それはどうも」

「それだけ!?今僕愛の告白したのにそれだけ!?」

「ほかに何が?」


シャーリーとロロの手を引いてスザクに背を向ける。

声をかけたジェレミアは一礼をしてからルルーシュの背後に寄り添った。


「ルルーシュ!どうしたらいい!?どうしたら赦してもらえる!?」

「そうだな・・・皇帝の髪を丁髷にしてこい。」

「イエス、ユアハイネス!」




ボツ理由:ルルーシュがあまりにもSでドライで女王様過ぎたから。