「うそつき。」
「裏切り者。」
慈愛と、不本意ながらも虐殺という言葉を冠してしまった皇女の遺志を継いだ腹違いの妹姫。
争いを好まず、常に綺麗な微笑の弧を描く口元。
その口から発せられたのは蔑み。
笑顔は変わらず、その言葉だけが無数の棘を伴って突き刺さってくる。
スザクは一瞬どきりとして、それでも何かの聞き間違いだと思い込むよう自分に言い聞かせた。
「ねぇ、スザクさん。貴方はきっと誤解しています。」
「何をだい?」
「私、スザクさんが思っているような、綺麗な人間じゃありません。」
急にどうしたのか。
そう言いたげな表情。
「誰よりも傲慢で、最低な人間なんです。」
「一体どうしたの?君らしくもない。」
「じゃあ私らしくって、一体何なんでしょう。」
『自分らしく』振舞うこと。
それは母を殺され、皇位と継承権を破棄してから愛する兄の前でのみ出来ることだった。
いつだって優しく微笑んでくれて。
甘えれば困ったように、でも慈しむ様に頭を撫でてくれて。
強く抱きしめてくれた兄。
「私、お兄様がいたから生きてこれたんです。自分らしく在ることができたんです。」
「そう・・・だね。早くルルーシュが見つかるといいね。きっとナナリーの頑張ってる姿に気づいて」
「ほら、またそうやって嘘を吐く。」
やはり微笑みは絶やさない。
「貴方はいつまで嘘で私を騙して、私の傍にいるつもりですか?」
「ナナリッ・・・」
「貴方に名前を呼ばれたくありません。」
ナナリーはそう吐き捨てた。
スザクが一歩あとずさる。
「私は貴方が大好きでした。だってお兄様が貴方を『世界』に入れたから。本当はお兄様の世界は私だけだったのに、お兄様が許したから。だから私も貴方を受け入れた。」
目が見えず、足が動かなくなったとき。
絶対守るから。
そう励ましてくれた兄を守ろうと誓った。
神にでもなく、亡き母にでもなく。
兄を愛し、信じる自分自身に。
不自由な身体ではできることも限られている。
だからせめて兄の心を守り、支えていこう。
心に決めた。
そんな時、世界に土足で踏み込んできたのがスザクだ。
初めて会ったとき。
絶対兄は好まないタイプの人間だと思っていた。
それが意外な事に兄が心を開いて、兄とスザクは親友になった。
「言ったでしょう?私は傲慢なんです。兄が幸せならば他はどうでもいい。誰が死のうと、どこの国が滅びようと。」
「君は・・・一つのエリアを率いる総督だ。そんなことを言っちゃいけない。」
「スザクさん、貴方だって同じでしょう?軍の人間なんですもの。エリアの・・・国の秩序を守らなくてはいけない。」
「そうだ、ルールを破って得た結果に意味は・・・」
「でも、ユフィ姉様が死んだとき。ゼロを恨みましたよね?ユフィ姉様は日本人の方々を虐殺した。エリアの秩序は乱れました。要するにスザクさんは私と同じ・・・ユフィ姉様がいれば他はどうでも良かったんでしょう?だから、ユーフェミアという名の命を犠牲に秩序を守ったゼロを恨んだ。」
スザクが違う、と呟く。
その声は本当に小さくなっていった。
「何が違うんですか?まぁ・・・ユフィ姉様もお可哀想に。ユフィ姉様はスザクさんにとってどうでもいい存在だったんですね。」
また小さく、スザクが違うと呟いた。
「それも違うんですか?スザクさんは嘘と矛盾だらけなんですね。」
あぁ、なんてくだらない。
ため息を吐いたナナリーは車椅子を動かして一歩下がったままだったスザクとの距離を詰めた。
「スザクさん、お兄様を売った時・・・どんな気持ちだったか教えていただけませんか?」
「・・・君は・・・」
「嬉しかった?それとも悲しかった?・・・悲しいわけはありませんよね。引き換えに地位を望んだくらいなんですから。」
「どうしてそれをッ・・・」
「私が『知らない』わけじゃないんです。貴方が『知らない』だけなんですよ。」
ナナリーが望むもの、願うこと。
ゼロの正体が誰よりも愛する兄で、兄を売った人間がそれを偽り、傍でのうのうとしていること。
「何か言いたいことはありますか?」
「・・・ゼロ、は・・・犯罪者だ。間違ったやり方で変えた世界に意味はない。」
「自分の正義を押し付けないでください。正義の『在り方』は人それぞれ。たとえお兄様が間違っていたとしても、それを責める権利は貴方にはありません。」
「僕・・・は、俺は・・・!」
「お兄様を、返してください。」
教えてさしあげましょうか?
そうでなければ、私は貴方を殺してしまうかもしれません。
最近こういうネタ多いな〜自分。
っていう自覚はあるんですけど、何だかんだで好きなのでやめれませんww
スザクのことも嫌いじゃありませんよ。
可愛さ余って憎さ百倍★ってことです。
あと「ナナリーにスザクは殺せないでしょう」ってツッコミも無しな方向でお願いします。