何故こんなことになったのか。






イレギュラーに滅法弱いルルーシュの頭脳は、人生最大の危機に見舞われていた。

目の前には男が一人。

涼しげな、むしろそれを通り越して冷たい視線を送ってくる。

自分の両脇にはそれぞれ一人ずつ。

両サイドから固めるように抱きしめられている。

さて、今日の夕飯は何にしよう。

そういえばロロがシチューを食べたいと言っていたな。



「ルルーシュ、現実逃避しないで。」



細めた目で遠くを見ていたルルーシュにそう声をかけた目の前の男・・・役職をナイトオブセブン、名を枢木スザク。

フワフワとした癖のある茶色の髪が、ルルーシュは昔結構気に入っていた。

しかし昨日の友は今日の敵だ。

本当に心から親友だったと思っていたのはもう一年も前のこと。

正しくは『一年前の友は今現在敵』といったところだろう。

腕を組んで見下ろしてくるスザクは、怒っているのか呆れているのか、それともルルーシュの与り知らぬ全く別の感情を抱いているのかはわからない。



「スザク、あなた、敵。」



右側の方から首に手を回した状態で抱きついているのスザクの同僚のナイトオブシックスであり、名をアーニャ・アールストレイム。

ピンクで、纏め上げられた髪。

どこかで見たことがある髪型だと思っていたら、そういえば昔見た写真に写っていたルルーシュの亡き母の若い頃の髪型に、色は違えどもそっくりだった。

ナナリーと同じ中等部の制服。

ルルーシュにとってはなんだか懐かしい気分になる。

そんな彼女は何故かスザクを敵と称して睨みつけ、絶対離すまいとするかのようにルルーシュの身体を抱き寄せていた。



「そうだ、お前は敵だよ。だから邪魔をしないでもらえるか?」



左側から、その大きい体格を利用してルルーシュをすっぽりと包み込んでいるのはこれまたスザク、そしてアーニャの同僚でナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグ。

短い金髪と、何故か襟足から伸びる3本の三つ編み。

ルルーシュがそれを最初に見たときは、ラウンズにおける階級が上がった時に三つ編みの数が減るのではないかと思っていた。

それが正しいかどうかは未だに謎である。

ただ碧眼はとても澄んでいて、名門貴族の出にしては気さくな男だ。

本来その性格からブリタニア人と日本人の格差をものともしない筈の彼は、目の前の『イレヴン』を嫌そうに見つめている。


「邪魔?それは君達の方だろ?」

「スザク、ルルさまを啼かせる。」


あれ、今なんか漢字おかしくありませんでした?

内心ルルーシュはツッコミを入れる・・・が、口には出せない。

何が起こるかわからないから。


「ルルーシュは悦んでくれているんだよ?」

「でもイヤだって言ってた。」

「イヤよイヤよもイイのうちって言葉があるんだよ。」



間違っているぞ、枢木スザク。

そう思っても、やはり口には出さない。



「お前が殿下に触れる資格はないよ。お前は殿下を裏切ったじゃないか。」



・・・今『殿下』って言ったか?

思わずルルーシュはジノを見上げたが、ジノはただ目を冷たく細めてスザクを睨んでいた。



「裏切ってなんかいないよ。どちらかといえば僕が裏切られた側さ。」

「ルルさまを皇帝に売ったのはあなた。」



あれ、ゼロだってことバレてる?

焦ってアーニャを見る。

一瞬目があった・・・が、アーニャは少し目元を緩めただけだった。



「そんなお前と同じ『ラウンズ』かと思うと嫌になる。なぁ、アーニャ?」

「・・・・・・(コクン)」



ルルーシュはわけがわからない。

何故かジノとアーニャに皇族であったことや一年前ゼロとして捕らえられてブリタニア皇帝に突き出されたことが知られているのだ。

この分だとスザクも、ルルーシュの記憶が戻っていることに気づいているだろう。

険悪なムード。

原因が自分にあるのだとしてもその責任を放棄してこの場から逃げ出したい気分だ。

しかしソファーに腰掛けたルルーシュは両脇からガッチリと固められているため身動きひとつ取れない。

ガタイのいいラウンズと女の身ではあるが腐ってもラウンズな二人にそうされれば、ルルーシュの体力の無さを差し引いたとしても釣りが出る。

ルルーシュの前に仁王立ちしていたスザクはふわりと微笑んだ。



「とりあえずルルーシュから離れなよ。」

「いや。」

「お前に喰われるのが分かっていてみすみす渡せるか。」

「元々それは僕のモノだ。8年前からね。」

「時間、関係ない。」




ああ、どうしよう。


ルルーシュは頭を悩ませた。

こんなことになるならばロロを常に傍に置いておくべきだったと今更後悔しても遅い。


「あの・・・一先ず放してくれないか?」


おずおずと言ったルルーシュにジノとアーニャは瞠目する。

ふっと笑ったのはスザクだ。


「ルルーシュ様!こんな狼・・・いや、鬼の前に子猫のように可愛らしいルルーシュ様を放すことなどできません!」

「はっ・・・え?」

「ルルさま、守る。」

「あ、ありがとう?」




バチバチと火花を飛ばしあう3人のラウンズに、やっぱりブリタニアなんか壊れてしまえとルルーシュは心のうちで毒吐いた。











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「ルールッ・・・じゃなかった、ゼロ様ー!お手伝いに参りましたー!一緒にブリタニアをぶっ壊しましょう!」


「ルルさま・・・だいすき。」




黒の騎士団本拠地に乗り込んできたトリスタンとモルドレッドに、ゼロはもう勘弁してくれと涙を浮かべて。


C.C.は可愛いとか言いながらそのゼロを抱きしめた。
























黒スザ→ルル←ジノ&アーニャ。
タイトルの数字はラウンズNo.でスザ VS ジノルルアニャの並びです。
向かってくるスザクを迎え撃つジノとアーニャの間にルル。
要するに総受けが好きです。


2008/07/17 UP
2011/04/04 加筆修正