「・・・はぁ。」

「如何なされたのですか?溜息などおつきになられて・・・。」

「・・・ん、ああ、いや・・・。何でもない。」


傍に控えていたギルフォードに指摘されてやっと我に返ったコーネリアは一度は居住いを正したのだが、それも長くは続かず。

また項垂れるように椅子の背もたれに沈み、深いため息をついた。

忠臣ギルフォードは心配で仕方がない。

大切な『姫様』の元気がないのだから。


「姫様・・・お身体の具合でも・・・」

「・・・ん、ああ、そうだな・・・」

「なんとっ!どこがどのように・・・!」

「・・・こう、ここのあたりが苦しくなってだな・・・」


コーネリアの手が摩るのはその豊満な胸元。

要するに、胸が苦しい、と。

よからぬ病気ではないだろうか。

そう一瞬過ぎった不安は、これまた一瞬で掻き消える。

コーネリアが赤らめた頬を見て。


「あの・・・姫様、どういう時にそうなるのでしょうか。」

「そうだな・・・アレのことを考えると・・・」

「あの・・・アレ・・・とは、人ですかっていうか男性ですか。」

「何故わかった?」



・・・ということは。



目の前で頬を微かにバラ色に染めた姫様は。









我らが姫様にも、恋の季節がやってまいりました。BY G














男?

足手まといにならないのならば部隊の末席にいれてやってもいいぞな主にもついに『春』の到来。

何とも言えない複雑な気持ちだが、とりあえず喜ぶべきなのだろうとギルフォードは動揺に揺れる心を鎮めようと小さく深呼吸した。

そして生まれた使命感に震えあがる。

何よりも大切に、それこそ自分の命に代えてもと守ってきた主だ。

どこぞの馬の骨とも分からない人間になど任せられない。

まるで娘を持つ父親のように奮い立ったギルフォードは


「姫様!それは恋です!」

「恋?何を馬鹿なことを。」

「その男性の事を想うと胸が苦しくなるのでしょう!それは『恋の病』の初期症状です!」

「そう、なの・・・か?しかしあちらは私の事など『姉』程度にしか思っていないだろうし・・・」

「(弟のように可愛がってきたということか・・・?)確かめてみなければわかりません。」


さぁ行きましょう!

そういきり立ったギルフォードはこの時まだ『姫様の想い人』が本国ではなくエリア11にいるということを知らず、いざ向かおうという時にこの上なく驚く結果になる。









一度行動を起こすと決意したコーネリアは誰にも止めることができなかった。

皇族としての公務があるのだから今すぐエリア11へと赴くのは厳しいとギルフォードが諭しても「行くと言ったのは貴様だろう」と不機嫌ぎみに睨まれればギルフォードは何も言えなくて口を噤む。

そしてさらに気になる事が。


「あの、何故シュナイゼル殿下にクロヴィス殿下、ユーフェミア殿下までいらっしゃるのでしょうか。」


汗をだらだらと流したギルフォードが視線を送った先でロイヤルスマイルを浮かべる3人組。


「あら、いけませんの?」

「そうだぞギルフォード、私達だって気になるものは気になるんだ!」

「私のアヴァロンを使うんだ。私が一緒に乗ってはいけない理由はないだろう?」


お前ら余程暇人なんだな、なんてことは口が裂けても言えない。

そうして皇族専用機をフル活用しエリア11の土を踏んだ一行が向かった先は。


「アッシュフォード・・・学園」


元は公爵でありながら、爵位を失ったかつての大貴族アッシュフォードが運営するその学園にお目当ての人物はいるらしい。

相手は学生か。

教師かとも考えたのだが、『姉程度にしか〜』の件から考えて年下。

学生でもおかしくはない。

ギルフォードは冷や汗をかいた。

学園に足を踏み入れたコーネリアは迷うことなくしっかりとした足取りで歩んでいく。

その後ろをぞろぞろと皇族が歩いていく様は何とも不思議だ。

どうやら現在は午後の授業中らしく、学園内は静寂につつまれている。

早足のコーネリアの後に続くように歩いていくと、とある教室の前に辿り着いた。


「姫さ・・・」


ガラッ!

ギルフォードの呼びかけを遮る様に聞こえたのはドアが開く音。

そして次の瞬間にはざわざわという生徒達の動揺する声が増え始める。

それもそのはずだ。

授業中に皇女が乱入してきたのだから。


「コ、コーネリア皇女殿下!?」


教師がさらにその後ろに控える3人の皇族に顔を青くして教科書を取り落とした。

それも気にせず、コーネリアはずかずかと教室の中に入って行った。


「ルルーシュ!」


突然乱入を決めた皇女が呼ぶのは一学生。

教師が目を見張り、そして学生の視線も名を呼ばれた学生に注がれる。

目当ての人物は、窓際の席で肘をついて目を閉じていた。

やばい、完全に寝てる。

何人かの学生が顔を青くした。

慌てて立ち上がったのはリヴァルだった。

ルルーシュに駆け寄ってその身体を強請る。


「おいルルーシュ、やばいって!」

「・・・・・・何がだ。」


薄く眼をあけたルルーシュは、やがて教室の雰囲気がおかしいことに気づいて、そしてゆっくりと教壇あたりに立っているコーネリアを一瞥した後、「ほぁあ!?」と叫んだ。

仁王立ちの皇女と、学生。

周囲の者達にはその関係性が全く分からないが、兎にも角にも寝てたのはまずいなと誰もが苦笑い。

硬い表情のままだったコーネリアが、低く唸る。


「ルルーシュ」

「え、いや、あの・・・確かに私はルルーシュですが、コーネリア皇女殿下に名を呼ばれるような・・・」


そこまで言って、やっと完全に目が覚めたらしいルルーシュはコーネリアの後ろで手を振っているユーフェミアやクロヴィス、更には怪しい笑みを浮かべているシュナイゼルに気づき、めまいを起こしたのかふらついた身体をデスクに手を吐くことで支えた。

それから小さく「とにかく人違いです」と呟いたのだが、それにコーネリアは憤慨した。


「何故いつものように振舞わないのだ!」

「いつもも何もここでは俺は死んだことに・・・じゃなかった。ととととにかく俺はッ・・・」

「我が弟よ・・・私は悲しいぞ!」


そこでギルフォードは思いついた。

ルルーシュと呼ばれた男のことを。


「・・・ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア殿下?」


教室のざわめきが一気に静まる。

もう終わりだ。

せめてナナリーだけでも逃がさなければ。

そんなことを考え震える手を握り締めたルルーシュを気にすることなく、コーネリアは胸を張ってのたまった。


「ルルーシュ、私はお前に恋をしたらしい。」

「・・・は?」


目を丸くしたルルーシュ。

そしてコーネリアの後ろに控えていた3人の皇族達も驚いた様子で目を丸くしていた。


「お前のことを考えていると胸が苦しくなると言ったら、ギルフォードそうだと言っていた。」

「・・・姉上、一応私達は片腹とはいえ姉弟なのですが。」


コーネリアはそこで気づいたかのように目を見開いた。

そしてちらりと背後に控えていたギルフォードに視線を送る。

蛇に睨まれた蛙。

恐らくはその表現が一番しっくりくるだろう。

貴様この私を騙したのかといかにも言いたげな視線にギルフォードは目を泳がせながら、ぐっと拳を握るフリをした。


「あ、愛があれば・・・血の繋がりなんて・・・?」

「・・・だそうだ。ルルーシュ、愛しているぞ!」

「ほわぁあ!?」


蚊帳の外な他の学生達を他所に、コーネリアの暴走は止まることを知らなかった。




リクエスト内容:コーネリアが皇族や学園の人々の前でルルーシュに告白
皇族の皆様が明らかにとってつけたような出方ですいませんw
そしてここまでお待たせしたのにこんなのですいませんでしたー@@!