「ル ル − シ ュ」



わざと間をあけた、地を這うような声。

それが背後から聞こえた瞬間、ルルーシュは肩をビクリと震わせて立ち止まった。

振り返るとそこには笑顔の片割れ。

笑顔と言っても純粋な笑顔ではなくて、もっと黒い何かが籠ったようなそれだ。


「さぁ、今日は何処に行くのかな。」

「・・・ユフィのところに。」

「そんな恰好で?」


ルルーシュは何故か白い衣装を纏っていた。

勿論皇族が纏うような服ではないし、騎士服でもない。


「今日はコックか。一昨日は軍服でその前はメイド服だったな。あのメイドは中々に可愛かったが。」

「・・・・・・」

「なんだ、不服そうな顔をして。また今日も賭けチェスに行こうとした所を私に邪魔されてむくれたか。そもそも私は何度も賭けチェスなんて危険なことはやめろと何度も・・・」

「煩い!もうお前の説教なんか聞き飽きた!」


踵を返し、憤慨しながら自室の方に走っていくルルーシュの背を見送って、ゼロは小さくため息を吐いた。













「・・・高が数十分早く生まれたくらいで。」


ゼロとルルーシュは双子だが、生まれた順でいえばゼロの方が上。

少しの差で早く生まれたゼロが兄として心配してくれるのに、ルルーシュは複雑な思いを抱いていた。

賭けチェスは趣味の一つ。

別に金品が欲しいわけではないが、貴族のプライドを折ることに快感を覚えてしまったルルーシュにとっては最高の楽しみだ。

勿論邪魔されたくない。

しかしどんな変装をしてもゼロはそれを見抜き、ルルーシュを捕まえる。

腹いせに、先ほど焼いたのだがうっかり焦がしてしまったクッキーを袋に包み、部屋に備え付けられた呼び鈴を鳴らす。

暫く待って現れたジェレミアにその袋を突きだすと、ジェレミアは首を傾げた。


「それをゼロに持って行け。ついでに無理やり口に突っ込んでこい。」

「はっ・・・しかしながらそれは不敬で・・・何よりゼロ様は先ほど第二皇子シュナイゼル殿下のお呼びで離宮を発たれました。」

「・・・なに?」

「く、くれぐれもルルーシュ様はお出かけになりませんよう!このジェレミア、ゼロ様にきつく言い遣っておりますればっ・・・!」

「分かっている。もう下がっていい。」

「イエス、ユアハイネス」


ジェレミアを下がらせた後、ルルーシュは思わず上げそうになる高笑いを堪えるので必死だった。

冴えわたる頭脳を持ってすればジェレミアを出し抜くことなど朝飯前。


そうと決まれば、とルルーシュはクローゼットを開け放った。
































「チェックメイト」

「ぐっ・・・!」


カツンとルルーシュの黒い駒が音を立ててボードに降り立った。

白のキングはもう何処へも逃げることができない。

苦渋を噛んだ貴族はボードをひっくり返して憤慨する。


「イカサマだ!」

「ほぅ、これをイカサマとしますか。それでも結構ですが、どちらにしろ貴方のプライドは地に落ちた。」


悔しがる顔が好きだった。

ルルーシュは満面の笑みで席を立った。

次なるカモを探そうと室内を歩き始めたルルーシュを恨めしそうに見つめて、負けた貴族は近くにいた者に小さく囁きかける。


「あれだけの上玉だ。男であってもいい値で売れるだろう。」


上機嫌なルルーシュの背後に、陥れんとする手が迫っていることを、まだルルーシュは気付かなかった。















「ルルーシュが、いない?」


泣きそうな声で通信を入れてきたジェレミアにそう聞き返しても、彼はそうだと言う。

あれだけ賭けチェスには行くなと言ったのに。

今にも責任を取って命を絶たんとしたジェレミアをなんとか宥めて通信を切ったゼロは、さてどうするかと頭を抱えた。


「もっと慌てふためいてもいいんだよ。」

「・・・シュナイゼル兄上。」

「ここには私と君しかいないのだから。変に繕うことはない。」


そう言われて、ゼロはふぅっと溜息を吐いた。

その拍子にボキッと鈍い音が立ててゼロの握っていたペンが折れる。

やれやれと苦笑しながらシュナイゼルは通信端末に触れた。


「随分ルルーシュは甘えん坊に育ったようだね。君とは大違いだ。」

「甘えん坊・・・ですか。」

「甘え、というよりは君がいるから安心しきっているんだろう。」


シュナイゼルはモニタの画面を見ながら何かを紙に書き込んでいる。

それを黙ってみていたゼロに、その紙を渡した。


「恐らくルルーシュがいるのはここだろう。」

「・・・え」

「顔は、広くなくてはね。」


ほほ笑んだシュナイゼルに苦笑で返したゼロはその紙を見て、ありがとうございますと頭を下げた。

踵を返したゼロの背中にシュナイゼルは声をかける。


「早く行った方がいい。そこではどうやら人身オークションも頻繁に行われているようだから。」

「はい。」


淡白な返事をした後、シュナイゼルの部屋をゆっくりとした動作で出て。


パタンと扉が閉まった瞬間ゼロは走り出した。






















ルルーシュがふと目を覚ますと、目の前には覗き込むような体勢のゼロがいた。

ぼんやりと周囲を見回して、それからがばりと起き上ったのだが、カシャンという金属音がして、その音の発生源を見て目を剥いた。


「どうやってここに帰ってきたか、覚えているか?」

「ゼ、ゼロ・・・この手錠は・・・」

「お前はな、売られそうになったんだよ。人身売買のオークションで、それもどこの誰かも分からない変態親父に。」


まぁそれなりの高値ではあったが。

そうひょうひょうと笑ったゼロに、ルルーシュは身を強張らせた。

そして記憶が蘇る。

賭けチェスが終わった後、後ろから誰かに薬を嗅がされて。

気がつけば目隠しをされて椅子に拘束されていた。

目隠しをしていてもまばゆい光が自身を照らしていたことはわかった。


『ご紹介しますはこの上玉!ブリタニア人には珍しい黒髪と、それに相反するような白い肌!男性ではありますが美しい容姿をしておりますので愛玩用にもご利用いただけますし、教養は十分、賭けチェスでは負け知らずの腕前です!』


薬が効いているせいか朦朧とする意識の片隅で、そんなアナウンスを聞いた気がする。

それから周囲が競り合うように声をあげて。

それが静まった頃にはどこかに移動させられて。


「・・・ッ!!!」


途端に吐き気がこみ上げた。

絡み付くような中年の男性の視線。

間近にかかる息に鳥肌が立って、身体をまさぐる手に震えた。


「シュナイゼル兄上が場所を教えてくれてな。・・・私が助けに行かなかったらどうなっていたと思う?」

「ぜ、ろ・・・」

「ルルーシュ、もうこんな危ないこと・・・賭けチェスはしないと誓えるな?」


ルルーシュは黙り込んでしまった。

確かに危険な目には遭った。

ゼロの言うとおり、助けられていなければ今頃・・・と考えるだけでも身震いが起こる。

しかし賭けチェスは何よりの娯楽。

それを奪われては…。


「ルルーシュ」

「きょ、今日はたまたまで・・・いつもはこんな・・・」

「まだ、賭けチェスに行きたいと?」


首を横に振れば嘘になる。

目を泳がせたルルーシュに、ゼロはふっと笑った。


「そうか・・・残念だ。」


そう言うとゼロはルルーシュの手錠をベッドヘッドに括り付け、動きを拘束した後ルルーシュの服を脱がせ始めた。

上着が脱がされ、インナーは残してもらえたが、下はパンツのみ。

羞恥に顔を真っ赤に染めたルルーシュは抗議するように身を乗り出そうとするのだが、頑丈な手錠を前に手も足も出ない。


「ゼロッ・・・やめろ!こんなこと・・・!」

「お前は分からずやだからな。その完璧な頭脳をもってしても学習できないというのなら直接身体に教え込むまでだ。」

「ひぅっ!?」


あらぬところに手の感触を感じてルルーシュは身を強張らせる。

恐る恐る視線を向けると、ゼロの手は黒いビキニパンツの中に侵入していて、その指がまだ反応していない性器にねっとりと触れた後、後ろの孔につぷりと音を立てて侵入した。


「んクッ・・・やめ、どこ触って・・・!」

「大人しくしていろ。今気持よくしてやるから。」


足を己の肩に乗せて抱え上げた後、孔が上に向くように身体を持ち上げて、ゼロはサイドボードに手を伸ばした。

木製の引き出しの中から出てきたのは小さな錠剤。

ルルーシュは嫌な予感がして身を固めたのだが、錠剤は問答無用で孔の入口に押し当てられ、ゆっくりと入ってくる。


「ふぅぅっあ、あぁ!」


指の腹を使って最後まで押し込んで、それからゼロはルルーシュの足をベッドに戻した。

羞恥に顔を染めたルルーシュだったが、ゼロがにやりと笑った意味をその身をもって知ることとなる。


「ん・・・、ふ、あ、やっあ・・・」


とろんとした視線。

吐息は熱くなり、頬も上気する。

ぞくぞくと腰のあたりが疼いて身を捩ったルルーシュの性器はすでに立ち上がり始めていた。


「シュナイゼル兄上がな、あまりにも言うことを聞かないようなら一度お仕置きしなさいと、恵んでくださったんだ。」

「な、に・・・を・・・」

「身体が疼くものを。」


要するに、媚薬。

先ほど押し込まれた錠剤はそれだったのだと理解し、ルルーシュはうるんだ瞳を震わせた。

ゼロは楽しそうに笑ってルルーシュの唇を奪う。

歯列をなぞって、押し入った舌で口内を舐めまわし、ルルーシュの舌を吸い上げる。

それだけでもルルーシュは気が遠くなるような快楽を得て口々に喘ぎ声を洩らした。

ちゅっと音を立てて唇が離れていく。

名残惜しそうなルルーシュの視線の先で、ゼロの唇が次にターゲットとして据えたのは既に硬さを得た性器だった。

少量の液体を零す鈴口を舐め、割れ目に舌をねじ込む。

ビクンと身体を震わせるルルーシュを気に留めることもなく、ついには性器全体を口に含んでしまった。

じゅぶじゅぶと音を立ててゼロの口内がルルーシュを犯していく。

薬の効果で性欲が底上げされてしまったせいで、ルルーシュの性器は早くも限界を訴えて震え始めていた。


「やぁ、ああ、んッ・・・あ、も、ぜろぉ!!!」

「ん?」


それまで口を使って扱いていたゼロは、ルルーシュの呼ぶ声で唐突に顔を上げた。

口を性器から放し、口の周りの汚れを舐めて首を傾げる。


「どうした、ルルーシュ。」

「んっ・・・なんで・・・」

「ここで止めるのかって?そんなの当たり前だろう。」


ルルーシュの性器は限界まで膨張し、今にも欲を開放せんといきり立っている。

びくびくと震える性器と、股。

絶頂が近いと判断したゼロは行為をやめ、にたりと笑う。


「これは『お仕置き』だからな。」


そう言って、ルルーシュの性器の根元をポケットから取り出したリボンできつく結ぶ。


「いやぁあ、あ、ぜろ、ぜろぉ!」

「どうした、私の可愛いルルーシュ。涎が出てるぞ、はしたない。」


喘ぎ声を洩らすために開けられたままだった口の端から零れた唾液を舐めとって。

わざとらしく首を傾げるゼロに、ルルーシュは縋るような目を向けた。

もう限界。

媚薬で性欲は高められ、敏感な部分をゼロの口に犯されて。

あとは解放するだけだったのに、お仕置きと称して行為が中断されてさらに解放することも禁じられた。

両手は拘束されているから自分で扱くこともできないし、性器は真っ直ぐ天を突くように立ち上がっているから、股をすり合わせても快感を得ることはできない。

そしてゼロはビクンビクンと痙攣する性器をじっと見て、ふっと息を吹きかけたのだ。


「あ・・・あっ―――――!!!!」


背を仰け反らせたルルーシュが身体を弛緩させてベッドに沈む。


「なんだ、ルルーシュ。ここから出さずにイッたのか?」


縛られている性器の先端からは本当に少量の精液しか零れてはいない。

せき止められているせいで赤黒く変色してきたモノをぼんやりと見つめながら、ルルーシュは回らない舌でゼロに訴える。


「ぜ、ろぉ・・・も、むり・・・」

「もう賭けチェスはしないと誓えるか?」

「ちかう!ちかうからぁ!!」

「じゃあ言え。『ごめんなさい』と。」


そこで謝ればいいのに。

ルルーシュの高いプライドがそれを許さなかった。

思わず口を噤んでしまったルルーシュを一瞥した後ため息をついたゼロはベッドから降り、自分のデスクに腰かけてペンを手にした。

信じられない、という風にルルーシュが凝視する。


「ゼロっ、ゼロ!!やだ、なんで・・・んん、うあ!」


ゼロは黙々と書類にペンを走らせて物言わない。

いやだいやだ、と駄々をこねる子供のように頭を振って、ルルーシュは泣き叫ぶ。


「はぁあ、ああ、も、ああん!」

「どうして欲しい?」


そこで初めてゼロは顔を上げた。

もう何も考えられないルルーシュはプライドも何もかもかなぐり捨てて叫ぶ。


「イ、かせ・・・て、くれ・・・!」


その言葉を聞き届けたゼロは席を立ち、再びルルーシュが暴れるベッドへ腰かけた。


「その前に私に言うことがあるだろう?」


言ってごらん?と微笑みかけると、ルルーシュの目から涙が零れた。


「ご、めん・・・な、さ・・・」

「いい子だ」


しゅるっとリボンがほどける音と、手錠が外された金属音。

そしてその次の瞬間には目が眩むような快楽に流され、ルルーシュは自由になった両手で必死にゼロを掻き抱いた。


「んっ・・・ぅ、ぁん・・・」

「どうした、ルルーシュ。まだ足りないのか?」


ゼロの右手には、ルルーシュが放った大量の白濁がこびりついていて。

それをぺろりと舐めとるゼロに熱っぽい視線を送ったルルーシュは、もどかしそうに身を捩った。

媚薬の効果は相当なものらしく、加えてルルーシュは皇族の身でありながら薬が効きやすい体質らしい。

露出した鎖骨をぺろりと舐め上げると、またルルーシュは眉をハの字に寄せた。


「どうして欲しい?」

「・・・っ・・・いれ、て・・・くれ」

「どこに、なにを?」

「ココに・・・んっぅ、・・・ぜろ、のを・・・」


ゼロはほほ笑んだ。


「まったく、お前は本当に可愛い弟だよ。」


ゼロは既に硬くなり始めていた自身を取り出して扱きながらルルーシュの示した孔に指を突き入れる。

媚薬入りのカプセルが内部で溶けていたこともあって難なく指を飲み込んだそこをぐるりとかき回したあと、指を抜いて代わりにゼロは自分の性器を宛がった。

めりっと音が聞こえてきそうなキツさ。

苦痛にルルーシュが目を限界まで開いたのを気にしながらもゼロはそのまま進む。

強い媚薬はある程度の苦痛ならすぐに快楽へ変換してくれるだろうと踏んで。

そしてその見解は間違ってはいなかった。

迎え入れた質量にルルーシュは身を震わせ、あられもない声をひっきりなしに上げる。

全てを入れ込んだゼロは一度息を吐いて、それからすぐに律動を開始する。


「あッ、ああん、ふっ・・・んああ!」


ぐちゅぐちゅという水音と、ぶつかり合う肌の音と、ベッドが軋む音と、ルルーシュの嬌声。

その様々な音と、二人の熱気に部屋は満たされた。

腰の動きは次第に速度を増していき、ガクガクと翻弄されるように揺さぶられたルルーシュは涙を散らしながら背を仰け反らせる。


「い、ああッあ、もっ・・・イ、ぁああ!」

「っ!」


ルルーシュの性器の先端から飛び出した白濁が、その腹を汚していく。

ビクンと身体を痙攣させたルルーシュの奥に精を放ったゼロも静かに息を吐いて、汗で顔に張り付いたルルーシュの髪を払ってやる。

トロンとした瞳のルルーシュの、耳元に唇を寄せた。


「もう、しないな?」


こくんと大人しく頷いたその様に、ゼロは満足げに微笑んだ。






Zwillinge







リクエスト内容:ゼロの目を盗んで賭けチェスに行ったルルーシュが売られて、それを助けたゼロが媚薬でお仕置き。
なんだか正直不完全燃焼なんですが、もう限界でした^ρ^
私スザクのエロとゼロのエロを書き分けられてない気がしますorz
とりあえずゼロは鬼畜だと信じてる・3・
ちなみにタイトルはドイツ語で「双子」って意味だった・・・気がします←えw
せら様、こんなものでよろしかったでしょうかー@@;