「なんていうかさぁ」


缶ビールをぐいっと呷って、朝比奈は多少据わった視線を動かした。

彼の向かいには玉城がいて、ラクシャータがいて、興味なさそうに腰掛けたディートハルトがいる。

突如話題を切り出した朝比奈に視線を向けた彼らは首を傾げた。


「やっぱりさぁ、愛人じゃないって言っててもさぁ、な〜んかアヤシイよねぇ〜」

「ゼロとC.C.がかぁい?」

「そうそう〜ぜぇーったい、愛人だってぇ!」

「だよなぁ!?あれは絶対愛人だって!」


盛り上がる朝比奈と玉城に、ラクシャータがキセルをふかしながらニヤリと笑った。


「別にどうだっていいじゃないのさぁ〜。」

「気にならないの!?」


顔を仮面で隠した謎の人物、ゼロ。

カリスマ性に富んだ彼は決して人前に顔を晒すことなく様々な奇跡を起こす男だった。

しかし愛人と噂されるC.C.はどうやらゼロの素顔を知っているらしい。

恐らくその要因からゼロはなんだかんだでC.C.に絶大な信頼を持って接しているのだ。


「なんかさ、C.C.ってあの性格だから、絶対見る目厳しいと思うんだよねぇ。」

「・・・それで?」

「ゼロは不細工って噂もあるけど、俺はゼロが凄いイケメンなんじゃないかと思うんだ!」

「い〜わねぇ〜イケメンって好きよぉ〜KMFの次にだけど。」


ってことで、と。

ラクシャータはディートハルトに腕を絡ませ、誘うように身を乗り出した。


「ディートハルト、アンタなら監視カメラくらい設置できんでしょお?」

「生憎ですが、今監視カメラは全て作戦で使用中です。」


つまらなそうに項垂れた朝比奈と玉城とラクシャータ。

その様子をどこか楽しそうにディートハルトは一瞥した。


「・・・ですが。」

「お?」

「盗聴器くらいなら用意できます。」



ニヤリと笑ったディートハルトに、一同は親指を立てて「ナイス!」と叫んだ。















<ルルーシュ、ピザが食べたい>

<煩いぞ魔女。>



盗聴器を通して聞こえてくる会話は、普段となんら変わりの無いものから始まった。

あえて違いをあげるのならば、C.C.がゼロらしき人物のことを『ルルーシュ』と呼んだくらい。

なるほど、ゼロの本名はルルーシュというのか。

興味津津な様子で、朝比奈らは盗聴器を通して聞こえてくる会話に耳をすませた。



<お前のピザが食べたい。>

<俺は忙しい。>

<なんだ、また何かやるのか?>

<スザクの復学記念だそうだ。>

<お前もよくやるな。アイツはゼロであるお前をブリタニア皇帝に差し出した張本人だろうに。>



会話を聞いていた者達はえ?と目を向く。



<仕方ないだろう。『表』の俺はアイツの親友だ。>



スザク、と聞いて思い浮かぶのは元日本人のナイトオブセブンだ。

彼はゼロにとって親友で、一年前皇帝にゼロを売った張本人?



<・・・おい、何をしている。>

<優しい私がお前を慰めてやっているのさ。>

<慰めるつもりなら何故俺の膝の上に寝転ぶ?>



膝枕ってやつですか。



<『ゼロ』を始めるきっかけになった妹すらアイツに奪われて寂しいだろう?可哀想な童貞坊やに人肌の素晴らしさを教えてやる。>

<・・・フンッ>



「あれ、もしかしてゼロ、まんざらでもない?」

「これはいよいよ愛人かもねぇ〜」

「だぁから言ったろ!?やっぱC.C.は愛人なんだって!」

「しかし妹すら奪われて・・・という件が気にかかりますね。」



<待てC.C.、まさか本当にここで寝るつもりか。>

<問題あるか?>

<あるに決まっているだろう!寝るならベッドに行け!>

<寝る場所などどこでもいいが、今私は動く気がない。ベッドに行ってほしければお前が運べ。>

<・・・仕方がない>



それから暫くして、カツカツという靴の音が移動する。

ああ、本当にゼロはC.C.を抱えてベッドに運んでいるのだと、盗聴者達は息をのんだ。

まさかあのゼロが。

これではまるで本当に。



<全く・・・服もブーツも脱ぎ散らかして。一体お前は何度言ったら・・・>

<うるさいぞ、お前は何処の母親だ。>

<ほわぁあ!?>



ボスッ


何とも形容し難い素っ頓狂な声と共に、盛大な衣擦れの音。

粗方C.C.に引っ張られゼロがバランスを崩し、ベッドに倒れこんだのだろう。

ゼロって変なところで抜けまくってるからな。

その様子を陰ながら見守る者達の総意である。



<いい加減に・・・!>

<いいから仮面を取れ、鬱陶しい。>

<ちょ、おい!!>

<たまには休息をとることも必要だぞ。お前の綺麗な肌が荒れるのを見ていられない。>

<・・・俺は男だ。肌荒れなど・・・>

<そうだ、喜べ。私が『ご奉仕』してやろう。さぁ服を脱げ!>



「ちょ!」

「え、何この思わぬ展開!」



<な、に・・・やめ、C.C.!>

<安心しろ、昔私が中華連邦で暮らしていた時に学んだテクだ。ツヤツヤになれるぞ?>

<ひッ、あァ・・・や、め、んんぅ!>



盗聴器から聞こえてくる音声と、ゼロが抵抗しているらしいことを表す衣擦れの音。

それが何とも艶めかしく、朝比奈や玉城は前屈みになり、ディートハルトは目を血走らせて鼻から血を垂れ流し、ラクシャータは楽しそうにニヤニヤしている。



<い、たぃ・・・もう、やめっ・・・!>

<痛い?気持ちイイの間違いじゃないのか?・・・ああ、溜まってるのか。>

<ッア、あ!>



「悪ィ、俺ちょっとトイレ行ってくるわ。」

「お、俺も・・・」


そそくさと朝比奈と玉城が立ちあがったとき。


「ねぇ、何してるの?」


ギクリ、と震えあがった二人を不思議そうに見たのはカレンだった。

他にも鼻息の荒いディートハルトや「若いっていいわねぇ」と呟いたままヘッドホンに夢中なラクシャータの様子に眉をひそめる。

そのままズカズカと部屋に入ってきたカレンが朝比奈の使っていたヘッドホンを耳に当てて、そして絶句。


「なに、よ・・・これ。」

「いや、その・・・なんていうか。」

「ちょっくら盗聴器しかけて『C.C.=ゼロの愛人』疑惑を検証しようと・・・」


ギリリ・・・と奥歯を噛みしめて、カレンはついに走り出した。

何だか面白そうとラクシャータがそれに続き、ディートハルトもティッシュで鼻を押さえながら後を追って。

朝比奈や玉城もとりあえずトイレに行くのを我慢して走り出した。

カレンが一目散に向かう先はゼロの私室。

肩を怒らせながら扉を開けようとしたのだが当然鍵がかかっている。

しかしカレンは動じることがなかった。


「はいはい、『Nunnally』っと!」


ピーッ

ロックはいとも簡単に開いてしまった。

ずかずかと入り込んで、影がもぞもぞと動くベッドに近づいて天蓋を捲る。


「ちょっとルルーシュ!アンタ何してんのよ!」

「カ、カレン!?っておま、何で・・・ロックは・・・!」

「アンタのかけるロックなんて簡単すぎるのよ!いい加減『ナナリー』っていうのやめなさい!」

「い、妹の名前をロックにして何が悪い!」

「すぐバレるって言ってんの!そんな抜けてるようだから盗聴器だって簡単に仕掛けられちゃうのよ!」


そしてゼロ・・・ルルーシュはその盗聴器という言葉と、カレンの後に続いて入ってきた朝比奈達を見て驚愕に表情をゆがませた。

今ルルーシュは仮面をつけていない。

素顔がバレてしまった。


「へぇ〜、綺麗な顔してるじゃな〜い。」


ラクシャータがニヤニヤしている。

ルルーシュは逃げようとするのだが、馬乗りになったC.C.をどかすことができない。


「C.C.!そこを退け!!」

「そうよC.C.よ!アンタルルーシュに何してるのよ!!!」

「何って・・・美肌と冷えに効くツボを押してやっているだけだが?かなり痛がっているから恐らく老廃物が溜まりまくりだぞ。」


馬乗りになったC.C.は、ルルーシュの腹辺りに親指を添えている。

きょとんとしたあと、ニヤリと笑って。


「カレン、何を想像したんだ?」

「なっ!何でもないわよ!!!」

「嘘をつけ。顔が赤いぞ。あれか、スケベか。」

「うううううるさいわね!!!アンタと一緒にしないでよ!」

「いいから退けぇぇぇ!!!!」





 

ゼロの愛人関係における調査報告書 By D








C.C.=ゼロの愛人疑惑検証結果報告書

結果:結局謎のまま






リクエスト内容:ケンカしつつも仲良しなCCルルin騎士団で素顔バレ
とりあえず何ていうか頼まれてもいないのにルルの喘ぎ声(?)をいれてすいませんw
そしてゼロ至上カレンvsC.C.って指定も貰ったのにvs要素皆無&カレンが気持ち変態ですいませんw
全力ギャグを目指した結果こうなりましたw
タイトルのDはディートハルト氏ですw
りささま、こんなものですいません^^;