「姫様!」
そんな声が響いて。
斑鳩内の団員たちは目を瞬かせた。
その声が、ゼロの私室から聞こえてきたのだから。
さて、どうしようか。
ルルーシュは頭を抱えていた。
ギルフォードにギアスをかけたのは正解だった。
そうするのが、考えた86通りの策の中で最も有効だったからだ。
期待に応えてくれたギルフォードは捕らえられた自分を見事助け出してくれた。
だが、今。
後悔していないといえば・・・嘘になる。
「姫様!これまでどこにっ・・・!」
「い、いや・・・その・・・」
「ああッ、こんなにやつれてしまわれて!このギルフォード、姫様のお役に立てなかった事を悔やんでも悔やみきれません!」
「ギルフォード卿・・・殿下がお困りである!控えられよ!」
『ルルーシュ』を『コーネリア』だと思い込むよう、ギアスをかけた。
彼が義理堅い男であるということは知っていたとはいえ、まさかここまでとは。
しかし彼の戦闘能力はそれなりに高い。
あのコーネリアの騎士という肩書きは名ばかりではないのだ。
味方に付けておいて損はない・・・はず。
少し自信がない。
「しかし何故姫様が黒の騎士団など・・・」
「あ、ああ・・・どうやらユーフェ・・・ユフィはとある異能によって殺されたらしくてな。その力の源を絶つ為にゼロと手を組み、その・・・多忙なゼロの代役を買って出たのだ。」
ああ、なんというこじ付け。
あまりにも無理やりすぎる。
流石にマズいか・・・とルルーシュが泳がせていた目をやれば。
ギルフォードは。
号泣していた。
「姫様ッ・・・なんとお優しい!なんと慈悲深い!このギルドード、心を打たれました!」
「あ、ああ・・・そうか・・・」
「このギルフォード、その名にかけて姫様をお守りすると誓います!」
「あ、ありがとう?」
ルルーシュはこの日、自分の浅はかさを呪った。
「今日から騎士団に入団することとなった・・・」
「ギルバート・G・P・ギルフォードだ。よろしく頼む。」
団員は盛大に叫んだ。
当然と言えば当然の反応だ。
「なんでブリキ野郎が入ってくんだよ!」
野次を飛ばす玉城を見下すようにギルフォードが睨みつけて、周囲は緊迫した空気に包まれた。
やれやれ、とルルーシュは頭を抱える。
「本来であれば姫様はこのような場所にいていいお方ではない。それを態々君達の為にその身をもって助力を買って出てくださったのだ。騎士である私が姫様の傍にいずして誰がいる!」
「いや、ギルフォード・・・姫様と呼ぶのはやめろ。今はゼロと呼べ。」
「はっ・・・私としたことが・・・!申し訳ありません!」
「っていうかゼロって女だったのか!?」
団員の誰かが叫ぶが、今のギルフォードとジェレミアにはそれに耳を傾ける余裕がない。
「ギルフォード卿、殿下には私が付いている。貴殿の出番は一切ないと思いたまえ。」
「・・・なに?」
「ジェレミアも・・・殿下はやめろと何度も・・・」
「も、申し訳ございません!」
「ふっ・・・そのようなことで私の出番がないとはよく言ったものだな、オレンジよ。」
「オレンジ?それは最早侮蔑にあらず。ゼロ様から頂いた忠義の名である。」
ジェレミアとギルフォードは互いに睨み合い、火花を散らす。
もはやその場にいるゼロや他の団員の事は全く視界に入っていない。
ゼロは頭を抱えた。
「ゼロ様は己の身を削って貴殿らに尽くしてくださっているのだ!見たまえ、その・・・以前はその美しく無駄の無かった凹凸が・・・凹凸が!!」
「何を言うか!ゼロ様はその細い腰で世界を魅了するのだ!目に見えた凹凸など必要ない!」
コーネリアの胸のことを言っているのだろうか。
ゼロは青くなった。
それから数分間あーでもないこーでもないと討論を繰り返し、ゼロは項垂れて団員達は茶を淹れて呑気に雑談していた。
「とりあえずお前達・・・落ち着いてく・・・」
「「とにかくゼロ様はお美しいのだ!!」」
ジェレミアとギルフォードの声が重なる。
はっ・・・と二人が顔を見合わせ、それから硬い握手を交わした。
初めて意見が一致したのだろう。
そもそもゼロの中身をルルーシュだと知っているジェレミアと、コーネリアだと思い込んでいるギルフォードでは意見が食い違うのも当たり前なのだが。
何故、そこで意見が一致してしまったのか。
理解できない。
むやみにギアスをかけるのは控えようと心の決めたルルーシュであった。
騎士と騎士、姫様?
ギルルルにあんまりなっていないかもしれませんw
なんていうか・・・すいません^^
リクエストありがとうございました!