「私もう・・・前に進めない。」


エレベーターのドアが開いて視界が開ける。

紅蓮聖天八極式。

ブリタニアによって改造はされてたいたものの、自らの手に戻ってきた機体だ。

これで救うのは日本と、『ゼロ』のはずだった。

彼に裏切られたのか。

それとも自分たちが裏切ってしまったのか。

もうそれすらも分からない。

未来は闇に染まった




「イレブンは野蛮ね。」




そんな声が聞こえてきたのは紅蓮のコックピットを閉めようとしたときだった。

幼さの残る少女の声。

しかし声音はどこか高圧的だ。

声の主は腰に手を当てて、不敵な笑みを浮かべる。

纏め上げられたピンクの髪が揺れた。



「自分可愛さに仲間を売るなんて。しかもこれまで導いてくれたリーダーを。」

「ラウンズね。ここは黒の騎士団の戦艦よ。いくらラウンズといってもここじゃ・・・」

「可哀想なルルーシュ。二度も、あなたに裏切られるなんて。」

「あなた・・・一体何者?」



今回のことは置いておくとしても、何故『二回目』だと思うのか。

一年前のあの日、あの場にいたのはルルーシュとスザクと自分のみ。

スザクが同僚である彼女に話したとも思えない。

そう考えて、カレンは彼女が何かを知っていると確信した。


「あなたは誰?」


先ほどの問いに応えなかった彼女に、似たような質問をもう一度投げかける。

彼女はまるで踊るようにくるりと回って微笑む。



「見て分からない?ナイトオブラウンズの6、アーニャ・アールストレイムよ。」

「違う。私あなたをアッシュフォード学園で見たことがあるわ。あなたは彼女じゃない。」


外見は同じ。

しかし纏う空気がまったく違う。

アーニャはふふっと笑った。




「あーあ、つまらないわ。本当につまらない。」

「その割には楽しそうだな、お前。」



別の声が聞こえて、その声に聞き覚えのあったカレンは瞠目した。


「C.C.・・・?」

「なんだ、カレン。」

「あなた・・・記憶が無かったんじゃなかったの?」

「コイツに引きずり出されたのさ。」


いつものようにチーズ君人形を抱えたC.C.は、ルルーシュの部屋で見たときとは全く違っていた。

以前のように高圧的な笑みを浮かべたC.C.がアーニャの肩に手を置いてカレンをあざ笑う彼女を宥める。

その仕草がとても親しげに思えて、カレンは叫んだ。


「アンタ、そいつと手を組むの!?」

「何の話だ。」

「だってそいつはブリタニアの騎士じゃない!」



そうこうしている内に団員がぞろぞろと終結し、アーニャを取り囲んだ。



「あーいやだ。」


銃口が一斉にアーニャに向けられる。

アーニャは肩を竦めて、困ったようにため息を吐いた。



「どうして自分のことしか考えられないのかしら。あなた達、ゼロに裏切られたと思っているみたいだけれど。じゃああなた達は誰かを裏切ったことが無いの?無いわけないわよね、ゼロを裏切ったんだもの。」

「そ、れは・・・」

「自分の思い通りになればいいのに。何かが上手くいかなかった時、そう考えたことはない?そんな事誰もが思うことだわ。それが実際出来てしまったとき、どうしてそれを否定するのかしら。」


自分が持ち得ない力を持っている人間を、人間は羨む。

そして妬み、憎む。

なんと愚かしいのか。



「それに、私には分かるわ。紅月カレン?」

「何を・・・」

「あなたのソレはただの醜い嫉妬よ。ルルーシュに選んでもらえなかった・・・棄てられたことがそんなに悔しかったかしら?自分ならば傍においてくれると、そんな自信でも持っていたの?」

「ちがっ・・・私は!」

「あの子はあなたと同い年だけれど、残念ながら年頃よろしく色恋沙汰に構っているような余裕はないの。背負うものの大きさが違うから。」



世界を背負う。


世界の罪を背負う。


殺してしまった人々の悲しみと、その残された遺族の憎しみを背負う。



「あなたに・・・あなたたちにあの子は・・・ゼロは勿体無い。」

「あなたは・・・一体誰・・・?」


カレンが呆然と呟く。

C.C.は何も言わない。



『アーニャ』はくるりと回って、靡いたマントの裾を指で掴んで優雅に礼をした。




「私の名はマリアンヌ。『閃光』の名を冠す者。」

ゼロの・・・ルルーシュの母親よ。







微笑んだ『マリアンヌ』は美しかった。






母は嗤う、華のように










カレンは好きなキャラだったので、当初糾弾できるかなーって不安だったんですが。
最近の本編の展開のおかげで結構書きやすくなりました。
24話見た後もちょっと手直ししました(笑)
リクエストありがとうございました!